「ストレージクラスメモリ」の可能性と市場動向【前編】
「ストレージクラスメモリ」(SCM)は何の役に立つのか? 実現可能な使い方
メインメモリとストレージの中間的な役割を果たす「ストレージクラスメモリ」(SCM)。メモリやストレージとどう違い、どう使えるのだろうか。
アプリケーションはその種類によってはメモリやストレージに対して、かつてないほど高度な要求をするようになっている。これを受けてメモリやストレージのIOPS(1秒当たりのデータ読み書き回数)を高め、レイテンシ(遅延)を減らす革新的な技術を導入する必要性が高まっている。
併せて読みたいお薦め記事
「ストレージクラスメモリ」をさらに詳しく
- 「ストレージクラスメモリ」とは? 重要技術の「ReRAM」から理解する
- 次世代メモリ「Optane」はDRAMと何が違う? 2つの動作モードを解説
- 2020年、新「Intel Optane」でメモリのストレージ化が加速
NAND型フラッシュメモリを深堀り
有望な技術が「ストレージクラスメモリ」(SCM)だ。SCMはコンピュータのメインメモリとして使用される「DRAM」(Dynamic Random Access Memory)並みにデータの読み書き速度が高い。DRAMは電源を失うとデータも失うが、SCMは「SSD」(ソリッドステートドライブ)が搭載するフラッシュメモリのように、電源を切ってもデータを保持できる不揮発性メモリだ。
SCMはメインメモリとストレージの中間的な役割を果たす。「永続メモリ」(Persistent Memory)と呼ばれることもある。最上位にCPUがある階層構造の中で各メモリを位置付ける場合、メインメモリは上位にあり、ストレージは下位にある。SCMはその間に位置する。階層構造上は上位に位置する方がCPUに近い。
DRAMと同様、SCMはバイト単位でデータにアクセスできる。NAND型フラッシュメモリのようにブロック(データを記録する最小単位である「メモリセル」をまとめた塊)単位でデータにアクセスすることもできる。DRAMとNAND型フラッシュメモリの両方の特徴を持つことから、わずかなレイテンシしか許容できないアプリケーションをはじめ、さまざまな用途での利用が期待できる。
SCMは何の役に立つのか
SCMを利用すると、メインメモリとストレージ間で転送するデータ量が減り、アプリケーションの動作が高速化する。大量のデータを処理しなければならないアプリケーションでは特にその利点が生きる。
メインメモリには容量を効率的に使うための「ページング」や「スワッピング」という仕組みがある。ページングとは、あらかじめメモリ領域とアプリケーションのプログラムを固定長の「ページ」単位で区切り、メインメモリとストレージに効率良く配置することだ。スワッピングは、プログラムを一時的に停止して使用中のメインメモリの内容をストレージに退避させたり(スワップアウト)、退避させた内容をプログラム実行時にメインメモリに戻したり(スワップイン)することを指す。これらの仕組みを機能させる際、SCMをセカンダリーメモリ(補助メモリ)として利用すると、アプリケーションの動作を高速化できる可能性がある。
一般的にSCMは、メインメモリやストレージを代替するのではなく補助するメモリだと考えられている。SCMをDRAMの代替として使える可能性もあるが、処理速度はDRAMに及ばないだろう。再起動の際にシステムをできるだけ早く立ち上げることには役立つと考えられる。
SCMは、現在はNAND型フラッシュメモリを使用することが一般的であるSSDのデータ読み書き速度を高速化する技術としても期待できる。SSDにSCMのみを使う構成、またはNAND型フラッシュメモリとのハイブリッド構成にすることで、アプリケーションの動作を高速化できるだろう。オールフラッシュストレージのキャッシュメモリとしてSCMを使う選択肢もある。
どのような使い方であれ、SCMがメインメモリとストレージの中間に位置する技術であることを軸にしている。コストで見ればSCMはDRAMよりも安上がりだ。AI(人工知能)技術を使ったデータ分析、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、リアルタイム性が必要なトランザクション処理など、大量のデータを扱い、かつ低レイテンシが求められる用途に適している。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
7
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー