NAND型フラッシュメモリの進化と現実【後編】
「QLC」と「TLC」の違いとは? NAND型フラッシュメモリの賢い選び方
「QLC」方式と「TLC」方式のNAND型フラッシュメモリのどちらが適切かは、どのような基準で判断すればよいのか。用途に注目して両者を比較する。
現在のNAND型フラッシュメモリの主要な方式は、1つのメモリセル(データを読み書きする最小構成要素)に3bitを格納する「トリプルレベルセル」(TLC)方式だ。現在はメモリセル当たり4bitを格納する「クアッドレベルセル」(QLC)方式のNAND型フラッシュメモリも登場している。それぞれをどう使い分けるべきなのか。前回「QLC、TLCが生まれた今でも『SLC』のNAND型フラッシュメモリが使われ続ける理由」に引き続き、どちらが自社のニーズにより適した方式であるかを見極めるために必要なことを解説する。
QLC方式とTLC方式のどちらが適切かを見極める基準
QLC方式のNAND型フラッシュメモリベンダーは、読み込み中心のワークロード(アプリケーション)での利用に照準を合わせて自社製品を開発しており、TLC方式のNAND型フラッシュメモリを置き換えようとはしていない。目指すのはHDDの代替だ。Micron Technologyが両方の方式の製造を続けているのは、こうした背景がある。
「TLC方式とQLC方式のNAND型フラッシュメモリは相互に補完できる」というのがMicronの見方だ。同社は、QLC方式はTLC方式とHDDの磁気ディスクの間の溝を埋められると考えている。データを読み込む際の消耗の影響は、磁気ディスクよりもNAND型フラッシュメモリの方が小さい。
QLC方式あるいはTLC方式のNAND型フラッシュメモリに適したワークロードの特性については、さまざまなワークロードのI/Oに着目すると、さらに詳しく説明できる。
Micronによると、データを集中的に書き込むワークロードについては、読み込みと書き込みの比率が、小規模またはランダムなデータ転送の場合はおおむね7対3、データを大規模かつ連続的に書き込むアプリケーションの場合は5対5に達するまでは、QLC方式のNAND型フラッシュメモリが適する。書き込み中心のワークロードについてはTLC方式のNAND型フラッシュメモリの方が適する。
例外的に少数の大規模トランザクションが発生するワークロードの場合、動作保証期間中(標準的には5年)の1日当たりのストレージ書き込み回数(DWPD)が5~10回のフラッシュストレージが必要になる可能性がある。その場合は1つのメモリセル(データを読み書きする最小構成要素)に1bitを格納する「シングルレベルセル」(SLC)方式のNNAD型フラッシュメモリを積載したフラッシュストレージが適切だ。
幸いなことに、急速に採用が進む比較的新しいワークロードは、データの書き込みに比べて読み込みの方が圧倒的に多い傾向がある。以下にその例を挙げる。
- 構造化データや非構造化データを一元的に格納する「データレイク」を使ったデータ分析アプリケーション
- 「Apache Hadoop」をはじめとする分散処理ミドルウェア
- ディープラーニング(深層学習)などの機械学習を使った人工知能(AI)アプリケーション
- リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)以外のデータベース管理システム(DBMS)である「NoSQL」
- 分散ストレージソフトウェア「Ceph」や分散ファイルシステム「GlusterFS」「Luster」などを使った大規模オブジェクトストレージ
- 映像などのデジタルコンテンツのストリーミング配信/コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)
最適なシステム設計で性能向上が期待
QLC方式のNAND型フラッシュメモリは、大容量データを連続的に転送するワークロードに適している。だが小規模でランダムなI/Oが発生する一般的なDBMSのようなワークロードには適していない。この限界を回避するために、QLC方式を積載したストレージアレイの書き込みバッファ(一時的な記憶領域)として、不揮発性メモリとDRAMを混載したメモリモジュール「NVDIMM」(非揮発性DIMM)を利用する方法がある。小規模かつランダムに書き込むデータをいったんNVDIMMに蓄積し、その後ストレージアレイが各ストレージに連続的に書き込む。
容量とビット当たりのコストに関して大きなメリットがあるQLC方式のNAND型フラッシュメモリは、TLC方式やSLC方式のNAND型フラッシュメモリと並んでデータセンターでの普及が予想できる。
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