Apple「T2」との比較も
Windows 10の新セキュリティ「Pluton」は有用か? 「Xbox One」にも搭載
Microsoftが発表した新セキュリティプロセッサ「Microsoft Pluton」は、攻撃者がPCを物理的に盗んだ場合でもデータを保護できるという。一方、この説明に対して疑問を抱く専門家もいる。
Microsoftは新セキュリティプロセッサ「Microsoft Pluton」をAMD、Intel、Qualcomm Technologiesと共同で開発し、「Windows 10」搭載PCに導入する。Plutonにより、攻撃者が物理的にPCを盗んだ場合でもデータを保護できるようになる。Pluton搭載PCの販売開始時期は、2020年11月時点で未発表だ。
Plutonとは何者か 「Xbox One」にも搭載
現行の「Windows」搭載PCが組み込んでいるセキュリティデバイス「Trusted Platform Module」(TPM)よりも、Plutonは物理的な攻撃に対する防御力が高いと、Microsoftは説明する。PCを物理的に確保した攻撃者は、CPUとTPMの間の通信経路を攻撃対象にする可能性がある。「PlutonをCPUに組み込むことにより、こうした攻撃を受けにくくする」と同社は説明する。
PlutonはMicrosoftのゲーム機「Xbox One」と、IoT(モノのインターネット)デバイスのセキュリティ管理ツール「Azure Sphere」が使用しており、TPMをエミュレートしてTPMと同等の機能を提供する。このエミュレーションにより、Windowsの暗号化機能「BitLocker」やセキュリティ機能「Windows Defender System Guard」など、TPMを使って動いていた機能がPlutonでも利用できる。
MicrosoftはPlutonの暗号化対象について、エンドユーザーのIDやパスワードといった認証情報、暗号鍵、個人情報を保護すると説明する。「攻撃者がマルウェアを送り込んだり、PCを物理的に盗んだりしても、これらの情報を取り出すことはできない」と、同社の担当責任者デービッド・ウエストン氏はブログ記事で述べる。
AMDはPlutonについて、同社製品のセキュリティ機能に取って代わるものではなく、補完するものになると説明する。具体的には、同社のセキュリティプロセッサ「AMD Secure Processor」はPlutonと共存し、Plutonと通信することによってPCの安全を確保する。
専門家が抱く疑問
「PlutonはPCの安全性を高めるが、PCへの侵入を防ぐことにはならない」と専門家はみている。調査会社Constellation Researchでアナリストを務めるリズ・ミラー氏は「完全無欠のチップはない」と話す。
ミラー氏は、研究者が最近発見した「Apple T2 Security Chip」(Apple T2セキュリティチップ、以下T2)の脆弱(ぜいじゃく)性を挙げる。T2はセキュリティプロセッサ内蔵のSoC(プロセッサなどシステムの構成要素を1つのシリコンチップに集約した製品)であり、Appleが設計した。この脆弱性を攻撃者が悪用すれば、T2を搭載する「Mac」に管理者権限である「root」権限でアクセスできるようになるという。「暗号化して安全性を強化するはずのものが、逆にOSレベルのセキュリティ機能を無効化する抜け道になってしまう恐れもある」(同氏)
Plutonはアップデートを適用できるため、T2で見つかったような、修正困難な脆弱性が発生する可能性は低いと言える。Appleは攻撃者がT2内のファームウェアを改ざんすることを防ぐため、T2製造時にファームウェアを焼き付けて変更不能にしていた。そのためAppleはこの脆弱性を修正できなかった。
セキュリティの性能をどれだけ高めても、物理的な盗難に遭ったPCを完全に防御することは難しい。調査会社Forrester Researchのアナリストであるジェフ・ポラード氏は「『PCを物理的に盗まれたら何をしても無駄だ』というのがセキュリティの世界でのルールだ」と話す。
Microsoftは、Plutonを通じて一元的にファームウェアのアップデートを提供することも計画している。「これはIT管理者にとって朗報だ。ファームウェアアップデートの機能だけでも一定の歓迎を受けるだろう」とミラー氏は述べる。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー