「Apple T2セキュリティチップ」に脆弱性
Mac搭載のApple独自チップ「T2」に見つかった脆弱性は、なぜ厄介なのか
「Mac」が搭載する「Apple T2セキュリティチップ」に脆弱性が見つかった。この脆弱性は従来のセキュリティ製品では対策が難しいという。それはなぜなのか。どのような対策が役立つのか。専門家の話を基に解説する。
「Apple T2 Security Chip」(Apple T2セキュリティチップ、以下T2)は、Appleが「Mac」用に開発したセキュリティ対策用の半導体チップだ。このほどT2に脆弱(ぜいじゃく)性が見つかり、IT担当者はMacの不正利用を防ぐ対策の強化する必要に迫られている。
T2の脆弱性は、なぜ厄介なのか
この脆弱性は、攻撃者がUSBデバイスに保存したジェイルブレーク(管理者権限である「root」を不正な方法で取得すること)用ツール「Checkm8」を実行することで、2017年以降に販売されたMacにroot権限でアクセスできるようにする。Appleデバイス管理ベンダーJamf Softwareのプリンシパルセキュリティリサーチャーであるパトリック・ウォードル氏によると、従来のセキュリティ製品は、この脆弱性の悪用を防止できない。
従来のセキュリティ製品はOS稼働時の脅威に対して動作する。そのためコンピュータを起動させるために使われるハードウェアの脆弱性の検出や排除はできない。「『標的のデバイスに攻撃者が物理的にアクセスできてしまえばそれで終わり』というのは、セキュリティ業界に浸透している認識だ」とウォードル氏は話す。
T2はMac起動時にセキュリティ診断を実施して、OSが改ざんされていないかどうかを確認する。今回の脆弱性を悪用した場合、通常であればT2が阻止するはずのマルウェアのインストールが可能になる。
Checkm8を実行するためには、攻撃者は標的のMacを乗っ取る必要がある。そのため「自分のMacを他人に使われないよう従業員に徹底した警戒を促すことが、有効な対策になる」とセキュリティ専門家は指摘する。
幸いなことに、MacのHDDを暗号化すれば、攻撃をかわせる可能性がある。セキュリティコンサルティング企業ironPeak Servicesでサイバーセキュリティコンサルタントを務めるニールズ・ホフマンズ氏によると、HDDを暗号化したMacのデータにアクセスするにはパスワードが必要になり、攻撃者はまずブルートフォース(総当たり)攻撃など何らかの手段を使ってパスワードを入手しなければならない。パスワードが入手できなければ、T2の脆弱性を悪用した攻撃も成功しないためだ。
ホフマンズは「HDD暗号化は役立つ」と前置きした上で、「IT担当者は従業員に対して、デバイスを公の場に放置してはいけないと継続的に認識させる必要がある」と指摘する。従業員に対して常に対策を徹底させることを怠れば「悔いが残る過ちにつながる」と同氏は注意を促す。
「AppleがT2の脆弱性を修正できる唯一の方法は、今後のMacで脆弱性を修正したチップに交換することだ」とセキュリティ専門家は指摘する。同社はこのT2に脆弱性を物理的に焼き付けており、ソフトウェアアップデートでは問題を修正できないためだ。
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