Alibaba Cloudは中国の代表的なクラウドベンダーで、提供するクラウドサービスの豊富さでAWSやMicrosoft、Googleに並ぶ。Alibaba Cloudの主要なコンピューティング関連サービスを紹介する。
クラウドサービスを選ぶとき、企業や開発者は「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」といった大手ベンダーのクラウドサービス群を選択することが少なくない。中国を拠点とするAlibaba Cloudの同名クラウドサービス群も注目に値する。同社は幅広いクラウドサービスを提供し、その提供範囲をグローバルに拡大している。
Amazon.comからAWSが誕生したのと同様、Alibaba Cloudも中国のEコマース(EC)大手企業のAlibaba Groupから生まれた。Alibaba Cloudは現在、21カ所のリージョン(地域データセンター群)と世界の63カ所のアベイラビリティーゾーン(リージョンを構成するデータセンター群)で運用されており、中国本土やその他のアジア太平洋地域での事業に重点を置く。米国と欧州連合(EU)にもそれぞれ2つのリージョンがある。
調査会社IDC中国法人のエンタープライズリサーチグループでシニアリサーチマネジャーを務めるレイチェル・リュー氏は「Alibaba Cloudは中国最大のクラウドサービス群で、現在も市場で急成長を遂げている」と話す。Alibaba Groupの2020年第2四半期(2020年7月~9月)におけるクラウドコンピューティング事業の収益は前年比60%増だった。
他の大手ベンダーと同様、Alibaba Cloudはさまざまなクラウドインフラサービスやアプリケーション開発サービスを提供する。Alibaba Cloudは200個を超えるクラウドサービスを提供しており「種類や量の点では大手ベンダー3社に肩を並べる」(リュー氏)。コンピューティング、ネットワーク、ストレージ、セキュリティ、ハイブリッドクラウドなど、ITインフラに関連するさまざまな分野を網羅している。
本連載は、コンピューティングとストレージ、データベース、ネットワークに関係するAlibaba Cloudの主要なクラウドサービスを紹介する。
「Elastic Compute Service」(ECS)は、Alibaba Cloudの中核となるIaaS(Infrastructure as a Service)だ。開発者はECSを使用して、仮想サーバ(インスタンス)を実行できる。ECSのインスタンスは、アプリケーションの実行と管理に必要なCPU、メモリ、回線容量などのリソースを提供する。ECSインスタンスの種類は複数あり、アプリケーションのニーズに応じてそれらを実行したり停止したりできる。
「ECS Bare Metal Instance」(Bare Metal Instance)は、仮想マシン(VM)と物理サーバの特徴を組み合わせたベアメタルクラウドサービスだ。独立した物理サーバのセキュリティやパフォーマンスとともに、VMのような拡張性を提供する。Bare Metal Instanceは、ITインフラの隔離を必要とするアプリケーションに適している。
「Container Service for Kubernetes」(ACK)は、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」で管理するコンテナを使ったアプリケーション(以下、コンテナアプリケーション)の実行を可能にする。ACKでコンテナアプリケーションを実行するには、ACKを使ってKubernetesクラスタを作成する必要がある。
ACKは仮想化技術やストレージの利用、セキュリティ対策のために、他のAlibaba Cloudサービスと合わせて利用できる。Alibaba CloudにはACKの他に「Elastic Container Instance」というサーバレスコンテナサービスもある。
イベント駆動型サービスの「Function Compute」を使用すると、IT部門はサーバ管理が不要になり、プログラム開発に専念できるようになる。Function Computeはイベントをトリガーにして関数を呼び出すことが可能だ。利用料金は関数の呼び出し回数と利用時間、インターネットを使ったデータ転送量に応じて決定する。
Function Computeには注意すべき制限がある。1つの「サービス」(Function Computeの利用単位)で作成できる関数は50個までで、1つの関数で作成できるトリガーは10個までだ。
中編は、Alibaba Cloudのストレージサービス群を説明する。
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