CPU脆弱性「MDS」の脅威と対策【後編】
「ハイパースレッディング」の無効化が必要? Intel製CPUの脆弱性対策とは
悪用されると、本来見えないはずのデータが見えてしまう可能性もあるという、Intel製プロセッサの脆弱性「Microarchitectural Data Sampling」(MDS)。その対策はどう進めればよいのか。専門家に聞いた。
前編「Intel製CPUを攻撃する『ZombieLoad』の脅威 見えないはずのデータが見える?」は、2019年5月中旬に明らかになった、Intel製プロセッサの新たな脆弱(ぜいじゃく)性について解説。その脆弱性に対する4つの概念実証(PoC)攻撃「ZombieLoad」「Fallout」「Rogue In-Flight Data Load」「Store-to-Leak Forwarding」がもたらす脅威を説明した。
ウースター工科大学(WPI:Worcester Polytechnic Institute)で電気およびコンピュータ工学部の教授を務めるバーク・スナー氏によると、Intelが「Microarchitectural Data Sampling」(MDS)と呼ぶ上記の脆弱性は、CPUの中核を成す基礎の脆弱性だ。そのため解決には時間がかかり、アーキテクチャの最下層での修正が必要になるという。
併せて読みたいお薦め記事
「Meltdown」「Spectre」で振り返る「CPU脆弱性」とは何か
- Spectre/Meltdown問題で脚光 「CPU脆弱性」の影響と対策
- 「Meltdown」と「Spectre」は本当にCPUの脆弱性か、それとも単なる欠陥か
- Meltdown/Spectreはこうして公開された――Google、Microsoft、Red Hatが明かす真実
Intel vs. AMD
信頼できないコードが実行されないようにする方法
Intelは脆弱性の対策として、CPUを管理するマイクロコードのアップデートを提供している。AppleやGoogle、Amazon.com、Microsoft、Mozillaなどの大手テクノロジー企業も全て、この脆弱性に対処するパッチをリリースした。
調査会社Gartnerでアナリストを務めるアラン・プリーストリー氏は企業に対し、システムを最新状態に保つと共に、リスク評価を実施することで、ZombieLoadのような脆弱性からの影響度を把握するようにアドバイスする。「信頼できないコードがインフラで実行される可能性を確認し、それに基づいて適切な措置を取る必要がある」(プリーストリー氏)
オンプレミスにデータセンターを所有している企業なら「信頼できないコードを自社のデータセンター内で実行させないようにすべきだ」とプリーストリー氏は語る。クラウドの場合は、インフラで実行されるコードを全てコントロールするのは現実的に不可能であり、「データセンター内で実行されるコードは、全て信頼できないものになると考えた方がよい」と同氏は指摘する。
プリーストリー氏は企業に対し、ハードウェアベンダーと協力して、マイクロコードのアップデートを含む更新済みのファームウェアの提供を受けた方がよいともアドバイスする。その上で「最新世代のテクノロジーを実装したプロセッサの採用を検討する必要がある」とも同氏は指摘。こうしたプロセッサはパフォーマンスへの影響を最小限に抑えられる上、既にハードウェア対策が組み込まれているためだ。
ZombieLoadに限らず、共有リソースには保護領域が突破されるリスクが常に付きまとう。そのため「機密情報を正しく隔離する必要がある」と、Cyberus Technologyで最高技術責任者(CTO)を務め、Meltdownの発見者の1人でもあるワーナー・ハース氏は助言する。特に、詳しく調査されていない外部入力は、決してセキュリティの高い領域で使うべきではない。
あまりにも不安が大きい場合は、対称型マルチプロセシング(複数のプロセッサコアで処理能力を高める手法)の一つである、Intel製CPUの機能「ハイパースレッディング」を無効にすることだとハース氏は主張する。そうすることでデータの漏えいは非常に難しくなる。いずれにせよ、Intelが提供するマイクロコードのアップデートと、この問題の軽減に必要な任意のソフトウェアパッチを適用すべきだとハース氏はアドバイスする。
入念にリスクを評価してセキュリティ対策を施し、信頼できないコードを実行できないことが分かっているなら、これらの対応を省略できる。
スナー教授は、ハードウェアを共有しないよう企業にアドバイスする。例えばクラウドに機密性の高いシステムがあるとしよう。クレジットカードを処理していたり、商用Webページをホストしていたりするなど、価値の高いターゲットが含まれている状況だ。その場合「それらのシステムを動かすハードウェアが隔離されていて、自社専用になっていることを確かめる必要がある」と同教授は語る。「それがこの種の攻撃を防ぐ最も強力な方法になる」(同)
ウースター工科大学(WPI:Worcester Polytechnic Institute)のコンピュータサイエンス博士論文提出資格者(論文提出で博士号を取得できる人)であるダニエル・モギーミ氏によると、企業でOSとCPUのマイクロコードを最新版にしていることを確認することが、短期的な対策になる。その上で、ベンダーがこれらの攻撃に合わせて作成した一部のパッチを適用する。
セキュリティコミュニティーは「ハイパースレッディングが非常に危険であることに、今やかなりの確信を持つようになっている」とモギーミ氏は指摘する。「他者が存在するクラウドで今後もハードウェアを何らかの形で共有することを考えているなら、最低でもハイパースレッディングは無効にし、複数のユーザーと同じCPUコアを共有しないようにする必要がある。そうすれば少なくとも被害は減らせるだろう」(同氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
CPU脆弱性「MDS」の脅威と対策
Intel製プロセッサに見つかった脆弱性「Microarchitectural Data Sampling」(MDS)。セキュリティ研究者の話を基に、この脆弱性によってもたらされるリスクと、その対策を説明する。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握 -
製品資料
[株式会社マクニカ] 「脆弱性総まとめ」解説 被害事例から考える必須の対策ポイント -
製品資料
[Splunk Services Japan合同会社] サイバー脅威「トップ50」完全解説ガイド、新たな攻撃手法に対抗するには -
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」完全ガイドブック:メリットから資格取得のポイントまで -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] はじめての「自治体/官公庁入札」 必要な知識がすぐに学べる入門ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
5
AI基盤は本当に「オンプレ回帰」する? Broadcomの言い分と企業の本音
-
6
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
7
「攻撃側にナイフ、防御側にパン」 OpenAIの10億ドル支援に潜む危うさ
-
8
「世界一給与にハングリー」な日本のエンジニアが“雇用の安定”を求める理由
-
9
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
10
「Linuxサーバの長期運用とRed Hat Enterprise Linux」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー