仕組みを解説
「Meltdown」と「Spectre」は本当にCPUの脆弱性か、それとも単なる欠陥か
「Meltdown」と「Spectre」は本当に脆弱(ぜいじゃく)性なのかという議論がある。本稿では、何を持って脆弱性と見なすか、そしてこの2つは脆弱性なのかを考える。
「脆弱性」とは何か。CNSS(Committee on National Security Systems)が作成した「National Information Assurance Glossary」によれば、脆弱性とは「情報システム、システムセキュリティ手続き、内部統制、実装の中で侵害される恐れのある弱点」と定義されている。米国空軍のソフトウェア保護戦略では、「システムの影響を受けやすい部分(欠陥)」「欠陥を見つけ出す脅威の能力」「欠陥を悪用する脅威の能力」という3つの要素が互い交わるところにシステムの脆弱性があると定義されている。
こうした定義に基づくと、CPUの欠陥であるMeltdownとSpectreは脆弱性に分類されるのだろうか。それとも一部で主張されているように単なるCPUの特徴で、悪意を持った行為者が悪用する方法を成立させただけなのだろうか。
最新のOSは、ユーザーアプリケーションがカーネルメモリ(保護されたメモリ領域)に読み取りや書き込みを行えないようにしている。また、他のアプリケーションのメモリにもアクセスさせない。デバイスが複数のアプリケーションやクラウドベースのサーバを安全に実行できるようにし、1台のPCで複数のユーザープロセスを独立させた状態に保つためには、こうしたメモリの分離が不可欠になる。
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CPUだけじゃない「脆弱性」の脅威と対策
MeltdownとSpectreの仕組み
Meltdownは、アドレス空間の分離やメモリの分離に基づくセキュリティメカニズム(カーネルアドレス空間レイアウトのランダム性など)に裏付けられたセキュリティの前提を完全に打ち砕く。そのため攻撃者はMeltdownを利用して、マップされた物理メモリを含め、カーネルアドレス空間全体のダンプを入手できる。一方Spectreでは、実行している他のプログラムのメモリに格納されているデータを取得できる。
攻撃者はソフトウェアの脆弱性も利用せず、OSとも無関係に、サイドチャネルを利用して、メモリからデータを取得する。Spectre攻撃の影響を受けるのは、Intel、AMD、ARM製のプロセッサで、Meltdownに対して脆弱なのはIntel製のプロセッサだ。
サイドチャネル攻撃は、処理ハードウェアの物理実装から得られる情報を利用する。例えば、デバイスが暗号演算を実行中に、電力消費や電磁放射線を監視する。
ただし、Meltdownの場合は、CPUのデータキャッシュタイミングが情報の漏えいに悪用される。これは、最新プロセッサがパフォーマンスを向上するために行っている投機的実行の処理方法が原因になる。Spectreは投機的実行の利用方法がやや異なり、正しいプログラムの実行中には実行されない投機的実行の命令シーケンスを、プロセッサを欺いて実行させる。これにより、別のプログラムのメモリアドレス空間内から情報が漏えいする。
脆弱性か否か
脆弱性は意図して作られるものではない。意図せずセキュリティに影響を及ぼす。だが、MeltdownとSpectreのどちらも、攻撃者がPC内で不正な行動を実行できる可能性があり、それによって情報の正確性が低下する。ベンダーがMeltdownとSpectreを脆弱性とすることを望まないとしても、これらには基本設計上の欠陥であり、広く認められる脆弱性の性質の定義を満たしている。NVD(National Vulnerability Database)では、CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)識別子として、Spectreには「CVE-2017-5753」と「CVE-2017-5715」が、Meltdownには「CVE-2017-5754」が割り当てられている
欠陥や脆弱性を分類する仕組みで重要なのは、深刻度でランク付けすることだ。それによって、システム管理者は、緩和対策に優先順位を付けられる。NVDは、低、中、高の3段階で深刻度のランクを付けている、CVE-2017-5753、CVE-2017-5715、CVE-2017-5754は全て影響度に基づくスコアが5.6で深刻度中、攻撃の可能性のスコアは1.1に分類されている。
これまで、Meltdown攻撃とSpectre攻撃はまだ出回っていない。だが、影響を受けるユーザーベースは大きく、サイバー犯罪者が完全な攻撃手段を開発する価値があるため、状況はこれまでとは変わっていくだろう。セキュリティチームは、開発の先頭に立ち、リリース予定のMeltdownとSpectreのパッチのタイミングと効果について、大手ベンダーからのアドバイスに慎重に従う必要がある。
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