チャットbotだけじゃない 米国流「本格的AI活用」とはDell Technologies World 2025で紹介

人工知能(AI)技術の利用が広がる中、どうビジネス価値を生み出すかが課題になっている。先行して取り組んでいる米国の組織はAI技術をどう利用しているのか。具体例を紹介する。

2025年06月05日 06時00分 公開
[Tim McCarthyTechTarget]

 人工知能(AI)技術は急速に進化しているが、その利用によって価値を創出することは簡単ではない。ヒントを得られるのは“先輩たち”の取り組みだ。2025年5月、Dell Technologiesが米ラスベガスで開催した年次イベント「Dell Technologies World 2025」では、同社の製品を使ったAI技術活用事例が披露された。各社はAI技術によってどのような“すごいこと”を実現しているのか。

活用できない組織は“存続の危機” 米国から学べるAI活用事例

 Dell Technologiesバイスチェアマン兼COO(最高執行責任者)のジェフ・クラーク氏は、Dell Technologies World 2025の基調講演で、「AI技術はビジネスの在り方を大きく変える破壊的な技術だ。適切に活用できない組織は、存在の危機に立たされる」と警鐘を鳴らした。同社CEOのマイケル・デル氏は、AI技術を活用するためにインフラの刷新が加速化する可能性があるとの見解を示した。

 AI技術をさまざまなビジネスシーンで利用するには、高性能なハードウェアやソフトウェアといったインフラの導入が欠かせない。しかしクラーク氏は、「それらを無計画に導入すべきではない」と強調する。組織はまず、インフラ刷新を小規模から始め、「うまくいったこと」「見直しが必要なこと」を洗い出した上で、導入範囲を拡大することが重要だと同氏は述べる。「悪いインフラでAI技術を運用しても、単に悪い答えが速く出るだけだ」(同氏)

AI技術の実装例

 Dell Technologies World 2025では、一般企業や教育機関など、AI技術の実装例が披露された。

Dauntless XR

 拡張現実(AR)/仮想現実(VR)ソフトウェア開発を手掛けるXR Solutions(Dauntless XRの名称で事業展開)は、以下のことにAI技術を取り入れている。

  • バーチャル空間におけるオブジェクト(物体)の認識
  • 「デジタルツイン」の作成
    • デジタルツインとは、現実世界の物体やプロセスをデジタル空間で再現したものだ。

 Dauntless XRのCEO、ロリ・リー・エリオット氏によると、同社におけるAI技術の利用は、企業データを活用したコンテンツ生成を中心としている。「AIと言えば、たいていの人はチャットbotとの対話や、自然言語を使ったプロンプト(指示)作成といった用途を思い浮かべる」と同氏は語る。同社はそれらの用途にとどまらず、データの本格的なビジネス活用を図っているとエリオット氏は説明する。

オレゴン州立大学

 オレゴン州立大学(Oregon State University)地球・海洋・大気科学部は、高性能コンピューティング(HPC)を必要とする以下の研究にAI技術を活用している。

  • 数世紀にわたる海洋生物の変化のマッピング
  • 顕微鏡レベルのオキアミの撮影
  • 地理情報システム(GIS)の研究

 同学部コンピューティングディレクターのクリス・サリバン氏は近年のAI技術の進化によって「活用の幅が大きく広がった」と述べる。

 サリバン氏によれば、組織がAI技術を利用する上で大きなネックになるのはデータだ。組織のデータの中には、AI分析によってビジネス価値をもたらすものと、そうではないものがある。そのため、価値をもたらすデータのみを収集するようにしないと正確な分析結果を得られない可能性があると同氏は指摘する。「組織は分析用データを選定するときの価値判断が問われる」(同氏)

Hopeworks

 スキル育成や就職支援を手掛ける米国の非営利団体Hopeworksは、Dell Technologiesからハードウェアやソフトウェアの寄付を受けた形で、就職面接トレーニングのサービスにAI技術を取り入れている。同団体は同社のサーバ「PowerEdge」などのハードウェアを使い、就職面接をシミュレーションできるサービスを構築。このシステムに応募者の学歴や就職履歴を読み込ませることで、AI面接官が応募者にさまざまな質問をし、応募者は最適な回答方法を練習できるという。

 Hopeworksのこのサービスでは、応募者はAI面接官によるフィードバックを得られるので、自分の弱点や改善すべきところを分析できることが特徴だ。「実際の面接では通常、なぜ採用されなかったかの情報は得られない。われわれのサービスを利用すれば、具体的なアドバイスを受けて自信を持って面接に臨めるようになる」と、同団体CEOのダン・ロトン氏は話す。

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