さまざまな企業がAI技術を活用するために準備を進めているが、必ずしも理想通りにいくとは限らない。企業のAI活用を妨げる要因とは何か、説明する。
アジア太平洋地域(APAC)では、人工知能(AI)技術への投資が進んでいるにもかかわらず、AI技術の導入が停滞している――。Cisco Systemsは2024年11月、調査レポート「Cisco 2024 AI Readiness Index」(2024年AI準備指数)を発表した。企業のAI活用を妨げている要因は何か。
同レポートは企業のAI技術への導入や投資の状況に関する調査結果をまとめている。この調査は2024年8月から9月にかけて、全世界の従業員500人以上の組織でAIの導入を担当するビジネスリーダー7985人が回答した。
全回答者の85%は、18カ月以内にAI戦略を策定しないと、自社の事業に悪影響が及ぶと考えている。しかし実際にAI技術を最大限に活用する準備ができていると回答したのは13%だ。
「AI技術について知れば知るほど、分からないことが増える」と、Cisco Systemsのレイモンド・ヤンス・ヴァン・レンズバーグ氏(Cisco Asia-Pacific, Japan and Greater Chinaスペシャリストおよびソリューションエンジニアリング担当副社長)は話す。
全回答者の50%は、IT予算の10%から30%がAIに費やされていると回答した。しかしAPACの回答者の40%は、AI技術の導入による業務プロセスの効率化の成果が得られていないか、期待に達していないと回答した。「それにもかかわらず、AIへの支出は今後4〜5年で倍増する」と、Ciscoのカール・ソルダー氏(オーストラリアおよびニュージーランド(ANZ)最高技術責任者)は見解を示す。
調査レポートは、企業がAI導入の際に抱える幾つかの課題を指摘している。インフラの準備が遅れていることは課題の一つだ。全回答者のうち93%は、AI技術の導入が要因となり自組織のITインフラの作業負荷が増加すると予測している。79%の回答者は、将来にわたってAIアプリケーションを実行し続けるために、データセンターのGPU(グラフィックスプロセッシングユニット)の増設が必要だと考えている。
データの質も依然として問題となっている。AIアプリケーションの活用に適したデータが準備できていると回答したのは、APACの回答者のうち3分の1未満(31%)だった。AIアプリケーションに適したデータを用意するには、データの前処理とデータクレンジングが必要だ。またデータ保護やプライバシーに関する法規制が進化している点を考慮すると、データガバナンスも懸念事項となる。
Cisco Systemsのセキュリティビジネス部門で上級副社長兼ゼネラルマネジャーを務めるトム・ギリス氏はこう話す。「AI技術の活用は企業にとって重要だが、ガードレール(制御機能)を設ける必要がある」
従業員の不正を防ぐ職務の分離(SoD)は、AI技術を利用する際も実践する必要があると、ギリス氏は述べる。「例えばもしチャットbotが従業員データにアクセスできる場合、従業員がその設定や保有するデータを変更して、自身や同僚の昇給のために不正に有利に働かせることはできないようにすべきだ」(ギリス氏)
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