AI技術に関するバイアスの問題を、女子は男子よりも深刻に受け止めていることが調査から判明した。この認識の差は、IT業界に存在するある問題に起因するという。どのような“負の連鎖”を引き起こす恐れがあるのか。
若者が関心を持ったり不安に感じたりする人工知能(AI)の分野が男女で異なることを、ある調査結果が示唆している。調査によると、男子に比べて女子はAIモデルによるバイアス(偏見)を懸念する傾向がある。その背景には、AI分野だけではなくIT業界における根深い問題が影響しているという。調査結果から見えてきた問題とは。
IT分野での女性活躍を推進する社会的企業(社会問題の解決を目的に活動する組織)Innovate Herは2024年2月から7月にかけて、12~17歳までの就学者1069人からAI技術に関する意見を収集した。その結果を、調査レポート「The AI report: Student Perspectives on AI & Workplace Futures」にまとめた。
Innovate Herの共同設立者兼CEOであるチェルシー・スレーター氏は、「AI技術に対する関心が男女双方に見られるのは心強い」と前置きした上で、「AI技術に対する関心の違いは、『女性がIT分野でのキャリアを築きづらい』といった性別による固定観念を助長するリスクがある」との懸念を示す。このような性差が生じる原因について、スレーター氏は若者がキャリアやIT業界、業種の適性について幼いころから触れてきた情報に原因があると考える。
調査対象者が関心を持つAI分野は性別によって異なった。女子は主に倫理、方針、データ分析に関心がある一方、男子の主な関心分野は機械学習、ロボット工学、AI開発だった。AI技術に関心を持つ回答者は男子が69%、女子が54%と男子の方が多かった。
IT分野における男女間の意識差は今に始まったことではない。さまざまな理由から、女性よりも男性の方がIT業界でのキャリアを選ぶ傾向がある。 IT業界への進出を阻害されていると感じたり、IT職に必要なスキルに対する誤解から「自分には向かない」と感じたりする女性がいるのが実情だ。
IT業界には、自動化によって女性の仕事が奪われることへの懸念もある。調査において、「AI技術は奪う仕事よりも多くの仕事を生み出す」と答えた人の割合は、男子が53%だったのに対し、女子は29%に過ぎなかった。
調査では、女子の67%が、AI技術によって女性がIT関連のキャリアに就くことがより困難になると考えている。その背景として一部の回答者は、IT分野における女性のロールモデルが不足しているために、採用過程でAIモデルが偏った判断をする可能性があることを挙げた。
ロールモデルの不足は、女性がIT分野を避ける理由としてしばしば指摘される事実だ。この状況は、IT分野に関わる女性が少ないほどAI技術に関する意思決定に女性の意見が反映されづらくなり、結果として偏った技術が生まれるリスクが高まることにつながる。
調査対象になった女子の79%は、特にAIモデルのバイアスが深刻化するのを防ぐために、より厳格なAI関連規制が必要だと考えていた。71%は、IT業界における意思決定に根強く残る男女間の不平等をAI技術が助長することへの懸念を表明している。一方で調査対象の男子は、サイバーセキュリティの強化やプライバシーリスクへの対処といった視点でAI関連規制を強化することに関心を示した。
女子がAI技術に寄せる懸念は他にもある。調査対象になった女子の68%が、ソーシャルメディアが使用するAIアルゴリズムをメンタルヘルスの不調と関連付けて捉えていた。特に体形に対する否定的な認識やネットいじめといった悪影響を不安視する声が上がっている。男子回答者のうち29%は、インターネットにおけるAI技術の有害性を指摘したが、これをメンタルヘルスの悪化と関連付ける見方は、女子よりも限定的だった。
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