女性エンジニアが「IT業界では働きたくない」と感じる理由STEM分野における女性活躍の現状【第2回】

IT業界で活躍する女性は増えているが、それでも女性はさまざまな「働きづらさ」を感じる傾向にある。人間関係や待遇などの観点を踏まえて、働きづらさの原因を探る。

2024年07月09日 08時00分 公開
[David NeedleTechTarget]

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 「STEM」(科学、技術、工学、数学)系の職種で活躍する女性は増加傾向にある。しかし男性中心のイメージが強いSTEM系の分野では、女性は働きづらさを感じることがある。何が原因なのか。人間関係や待遇などを踏まえた7つの観点から、STEM分野の女性が感じる働きづらさの原因を探る。

女性エンジニアが「IT業界で働きたくない」と感じるのはなぜか

4.職場定着率の差

 企業は、女性人材に入社してもらうだけでなく、職場に定着してもらうことにも苦労している。職場への定着が難しい原因の一つは、昇進機会の男女格差だ。

 コンサルティング会社McKinsey & CompanyとLeanIn.Orgが2021年に発表した調査レポート「Women in the Workplace 2021」によると、男性が管理職に100人昇進するとしたら、同じ職位の女性は86人しか昇進していない。課長や係長レベルの初級管理職を務める女性の割合は全体のわずか26%だ。

 つまり、キャリアの初期段階で女性が男性ほど昇進していないことが、女性のキャリアを妨げる要因の一つとなっていると言える。この結果からレポートは企業に対し、IT分野の女性がスキルを身に付ける機会や、キャリア開発に向けた体系的なガイダンスを提供するように奨励している。

 調査会社S&P Globalは2021年、IT業界で働く女性を対象に働き方に関する調査を実施し、レポート「Women in Technology: Key strategies to retain and attract diverse talent」にまとめている。これによると、57%の回答者が「フレックスタイム制やテレワークなど、ワークライフバランスのための仕組みが仕事の満足度を高める」と答えている。子どもの有無にかかわらず、IT業界で働く全ての女性がこういった柔軟な仕組みを最優先の希望として挙げた。

 ヘルスケア技術ベンダーBone Health TechnologiesのCEO ローラ・イェシーズ氏は、「女性は課題を解決するのが得意で、この特性はエンジニアに向いている。IT業界が女性に活躍できる機会を提供し、さらなる影響力を持てるようになれば、IT業界にはより多くの女性が集まるだろう」と話す。

5.職場文化の問題

 女性はお茶くみやコピー取りなど、重要性が低い「評価されにくい日常業務」を任されることがしばしばある。企業はこうした「目に見えない仕事」を認知し、全員が平等に戦略的なプロジェクトに加われるよう配慮しなければならない。

 2021年、IT業界で働く女性向けの情報サイト「WeAreTechWomen」が女性369人を対象に実施した調査によると、75%が「職場の男性の一部が協力的ではない」と回答した。その理由として、約3分の2の回答者が「女性の話を聞かずにさえぎったり、一方的に話したりすること」を挙げた。

 反対に、「職場の男性の大半が協力的だ」と回答した女性は19%。理由として9割近くが「男性が自分の仕事を評価してくれる」ことを挙げた。

 企業文化は、従業員のパフォーマンスだけでなく採用にも影響する。求人票の説明文を見て、応募をやめる人もいる。このような事態を防ぐために、求人情報にバイアス(偏見)が含まれていないか確認することが重要だ。面接においても同様の配慮が必要で、性別を含め、多様なバックグラウンドの面接官が参加する必要がある。

 調査会社Exploding Topicsが2023年に公開した、STEM分野で働く女性を対象とした調査によると、回答者の半数以上が「男性が中心の職場で、性別による不平等や差別、ハラスメントを経験したことがある」と報告している。

 このような問題を防ぐために企業は、「ダイバーシティー&インクルージョン」(D&I:多様性の受容と活用)を組織文化に含める必要があると著者は考える。有効な方法の一つが、創立の初期段階で女性リーダーを採用することだ。上級職に女性のロールモデルがいることで、求職者は多様性を重視している組織だと感じるだろう。

6.女性リーダーの不足

 STEM業界で働く女性は、一般従業員から管理職、経営陣に至るまで、少数派になりがちだ。求人情報サイトを運営するZippiaの調査によると、米国の32万5000人のソフトウェアエンジニアのうち、女性が占める割合は全体の22%、人種に関しては、48.5%が白人、ラテン系もしくはヒスパニック系が8.1%、黒人は4.4%だった。

 近年、IT業界における女性リーダー支援に取り組む組織が出てきている。黒人女性のITスタートアップ創業者集団Black Women Talk Tech(BWTT)や、ラテン系女性の活躍を支援する非営利団体Latinas in Techなどがある。

 女性活躍を支援する非営利団体「We Empower Diverse Startups」を共同設立したレイラ・パウエル氏は、幼少期から科学が好きで、スーパーコンピュータを用いて銀河の進化について研究したいと考えてきたと話す。両親の後押しもあり、パウエル氏は天体物理学の分野に進む。

 パウエル氏はその後、サイバーセキュリティの分野に転身し、現在はセキュリティベンダーPanaseerのリードセキュリティデータサイエンティストを務めている。「自身にとって重要なのは、難しい問題を解決すること、影響力を持つことの2つだ。IT分野における女性リーダーを増やすことにも情熱を注いでいる」と同氏は話す。

 パウエル氏は、女性の能力が適切に評価されていない結果、上級職に就く女性の割合が少ないのだと考える。このような状況を改善し、公平な競争ができるよう手助けをしたいと同氏は語る。

 他にもパウエル氏は、「ITは生活に欠かせない存在であり、そのような分野において、社会の半分を占める女性が排除されてはいけない」と語る。

7.IT業界における男女の賃金格差

 IT業界の転職支援サービス会社Vettery(Hired.comの名称で事業展開)は毎年、IT業界における男女間の賃金差を調査している。2017年と2018年で比較すると、同じ会社の同じ職位において、女性の給与額が男性よりも低いケースは63%に上った。2019年にはその割合は60%に下がったものの、2020年には再び63%に戻った。

 コーネル大学(Cornell University)が2023年に公開した調査によると、コンピュータサイエンス分野で働く女性の給与平均は、男性の給与平均を100とした場合、86.6にとどまることが分かった。これは、全労働者の男女間の平均賃金格差である「100対82」よりも良い結果だが、平等とは言い難い。

 最高情報責任者(CIO)や最高技術責任者(CTO)など上級技術職は、主に男性が占めている。Zippiaが2022年10月に公開したブログエントリ(投稿)によると、米国の大手IT企業1000社におけるCIOおよびCTOのうち、女性の割合はわずか18%だった。


 次回は、ITを支えてきた女性の歴史を解説する。

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