市民開発者とIT専門家の両方を対象とした「ローコードツール」の市場が、急速に拡大している。中でも顕著な成長を遂げる「Kissflow」が支持される理由とは。
過去4年間で売上高を2倍に拡大するなど、存在感を増しているローコード開発ツールがある。市民開発者とIT部門の専門家の双方を対象にした「Kissflow」だ。
Kissflowの東南アジア担当アソシエイトバイスプレジデントであるラケシュ・ナンダクマール氏は「ローコードツール市場は急速に盛り上がりを見せている」と述べる。市場に参入するベンダーは、AI(人工知能)機能を製品に組み込むことで注目を集めようと競い合っている状況だ。ローコードツールの市場が急成長しているのはなぜなのか。Kissflowの市場戦略とともに解説する。
「Kissflowは、ビジネス部門のユーザーが自ら業務自動化を進められる一方で、IT部門が本格的なアプリケーションを開発できる、数少ないローコードツールの一つだ」と、ナンダクマール氏は語る。例えば、複雑なシステムを構築することなく、ビジネス部門がKissflowを使って購買発注プロセスを自動化できる。「このような柔軟性を備えた製品を提供できるベンダーは限られており、これこそが当社の最大の強みだ」(同氏)
重要なのは、Kissflowのローコードツールは企業のニーズに応じて拡張可能なことだ、とナンダクマール氏は述べる。「今日構築したプロセスは、明日には完全なアプリケーションへと進化させることができる。市民開発者が作成したアプリケーションをIT部門が管理し、コンプライアンス(法令順守)を確保しながらシャドーIT(IT部門が把握していないツールの利用)のリスクを回避できる」
企業は、Kissflowが提供するシステム統合機能を活用することで、既存の業務システムとワークフローを円滑に連携させることができる。「例えば、発注承認プロセスに連動してERP(統合基幹業務システム)を自動で更新し、その後サプライヤーに確認メールを送信するといった一連の処理を自動化できる」と、ナンダクマール氏は説明する。Kissflowには、約80種類の事前構築済みコネクターが用意されており、必要に応じて独自のコネクターも作成可能だ。
「Kissflowは、銀行、エネルギー、製造、流通・小売りといった業界で高い支持を得ているが、ERPのような中核的な業務アプリケーションを置き換える意図はない」とナンダクマール氏は語る。Kissflowがフォーカスしているのは、既製のソフトウェアでは対応し切れない現場の細かな業務ニーズ。従来はそのまま放置されるか、カスタムコードの開発によってしか対応できなかった領域だという。
この戦略は東南アジアで成功しており、Kissflowは過去4年間で売上高を倍増させている。特にフィリピン、タイ、インドネシアでの需要が著しく、これらの地域は技術格差が大きく、市民開発を受け入れやすい市場であると同氏は説明する。Kissflowは、主要クラウドサービス「Google Cloud」「Microsoft Azure」「Amazon Web Services」(AWS)でホストされているため、国別のデータホスティング要件にも対応できる。
Kissflowの市場戦略は、意図的にトップダウン型を採用している。IT部門のバイスプレジデントや最高情報責任者(CIO)といった、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する経営層を主なターゲットとしているためだ。「私たちはビジネス部門に直接販売することはない。これは、シャドーIT(IT部門の関与なしに業務部門が独自に導入するIT)の発生を認めないという当社の方針に基づいている。市民開発は、組織の戦略的取り組みとして、必ずトップダウンで推進されるべきものだ」とナンダクマール氏は語る。
この哲学は、Kissflowの顧客支援の根幹にもなっている。同社は単なる技術ベンダーではなく、DX推進パートナーとして行動している。「ユーザー企業と共に、3〜5年単位のDX計画を策定し、既存テンプレートを活用した迅速な成果の特定と、カスタム開発が必要な領域とを見極めながら、持続可能なDXの道筋を描いている」(ナンダクマール氏)
AI技術は、Kissflowのローコードツールにおいて今後さらに中心的な役割を担う見込みだ。現在もすでにAIを活用しており、業務プロセスの構築時には、ベストプラクティスや必要なデータ項目、プロセスのステージ構成などを自動的に提案することで、開発経験が少ない市民開発者を支援している。
今後はユーザーの指示に基づいてプロセスやシステムを構築できるAIアシスタントの機能を搭載する計画だという。この新機能は開発時間を大幅に短縮し、数時間から数日かかっている作業を「30分以内で本番稼働に移行できる」可能性があり、「完全にゲームチェンジャーになるだろう」(ナンダクマール氏)
翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(株式会社リーフレイン)
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