データの倫理的活用を考える【第1回】
「取れるデータは根こそぎ取る」はなぜ駄目か? 「倫理的データ収集」の重要性
企業のデータ収集や活用における倫理的な正当性に関心が集まる一方で、手に入るデータ全てを当たり前のように取得しようとする企業もある。こうしたギャップを放置したままだと、企業はどのようなダメージを受けるのか。
2020年はさまざまなことがあった。それでも個人や企業のデータを漏えいや改ざんから守る「データ保護」が重要であることは変わらなかった。データへのアクセス権限を誰が所有するか、誰がそのアクセス権限を認定するかといった「データプライバシー」も同様だ。データ保護やデータプライバシーの観点では、企業がデータを集めたり、使用したりすることには倫理的な問題が伴う。
データを倫理的に扱うことには、単に規制を守ることより根深い問題がある。企業は消費者だけでなく従業員からデータを集める場合でも、取得する量と使い方について立ち止まって考えなければならないという新たな現実に直面している。
「データは取れるだけ取る」がなぜ駄目なのか
国際会計事務所・コンサルティング企業KPMGの最近の調査によると、米国の消費者の97%がデータプライバシーを重視しており、87%はこれを人権の一つにすべきだと考えている。企業がデータを倫理的に扱うことを信頼している消費者は54%にとどまった。「データ保護とデータプライバシーは、消費者にとって優先事項であることは明らかだ」と、KPMGでサイバーセキュリティサービス部門のプリンシパルを務めるビジャイ・ジャジュー氏は話す。
企業は倫理的に行動するために、データ保護とデータプライバシーに細心の注意を払わなければならない。ジャシュー氏は「たくさんのデータを取得しておくことで実現できる企業活動があるとしても、その活動に実現の必要性があるとは限らない」と話す。
一般的には企業にとって、倫理的なデータ収集と管理の優先度は高くない。「手に入れられるデータを残さず取得することが習慣になっている企業があまりにも多い」と指摘するのは、CRM(顧客関係管理)大手のSalesforce(salesforce.com)でAI(人工知能)技術の倫理的実践に関するプリンシパルアーキテクトを務めるキャシー・バクスター氏だ。
バクスター氏は、取得可能なデータを全て取得しようとする姿勢が慣例となっているのは「データを手にしておけば、いつかビジネス分析や予測、製品の販売に使える」という考えがあるからだと語る。その結果、企業は許容範囲を超えるデータを必要以上に抱えることになる。
サイバー攻撃の巧妙化に伴い、消費者はデータ保護やデータプライバシーへの注意や関心を高めている。世界各国の政府が個人情報を保護するための法案策定を検討している。その理由の一つは、大量の教師データを必要とする機械学習への対処だ。これらの背景により、データ利活用の全体像を把握しておくことが、企業にとってかつてないほど重要になっている。
企業は概してデータ保護やデータプライバシーに関して受け身の姿勢を取っている。「セキュリティの侵害が起きてからセキュリティを強化し、新たな法案が可決されてからプロセスやポリシーを改める」といった姿勢は、適切なプロセスを最初から構築しておくよりも金銭的負担が大きい。そればかりか企業の広報活動にも重大な問題を引き起こす。
第2回は、データ利活用に関するコンプライアンスの問題を整理する。
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