モバイル医療アプリの「EASE」は、患者の個人情報をやり取りする仕組みを備えている。患者の手術中の様子や容体などの機密情報を安全に扱うために、モバイル医療アプリが取り得る手段とは。EASEを例に確認する。
前編「患者満足度9割超えも 医師と患者を近づける『モバイル医療アプリ』の実力」は、アーノルドパーマー小児病院の事例を中心に、医療用のモバイルアプリケーション(モバイル医療アプリ)の主要機能について説明した。同病院で小児外科医兼最高品質責任者を務めるドナルド・プラムレー医師は、これにより患者の満足度評価が上がり、手術室の環境の透明性が高まったと話す。
アーノルドパーマー小児病院が導入したEASE Applicationsのモバイル医療アプリ「Electronic Access to Surgical Events」(EASE)は、テキストや動画、写真を使い、患者の手術中に患者の家族とコミュニケーションを取ることを可能にする。後編に当たる本稿はEASEを例に、モバイル医療アプリに実装されているセキュリティ対策と、利用する患者の個人情報を保護するために取るべき方法を中心に説明する。
病院がEASEを導入するときは、クライアントアプリの使用方法と送信するメッセージの種類について、看護師と医師にトレーニングすることが必要だ。EASEのクライアントアプリは、事前に書式が定められたメッセージを手術中に送信する機能を搭載する。医療従事者は必要に応じて独自のメッセージを入力することもできる(写真)。
EASEは9カ国語で利用できる。患者はEASEのクライアントアプリをインストールするときに希望する言語を選択すると、クライアントアプリはユーザインタフェースや送信メッセージの文面をその言語に変換する。
メッセージの送信機能の利用は医療従事者側のみに限定している。患者の家族は、看護師や医師にテキストを送ることや更新を求めることができない。医療従事者は、手術室、集中治療室、新生児集中治療処置室などからメッセージを送信できる。医師が巡回中に送ることも可能だ。
患者とその家族の同意を得た後、プラムレー医師はEASEのクライアントアプリを使って写真を送るよう看護師に依頼する。患者家族には医療チームが働く様子や腹腔(ふくくう)鏡手術のモニター画像、患者が眠りに落ちる様子などの写真が送られる。患者の家族が写真や動画の受け取りを選ばず、テキストの更新のみを希望する場合は、カメラアイコンが無効になる。
EASEを使い終えると、患者の家族はその使用体験についてのアンケートに答えることを要請される。EASE ApplicationsのCEO、パトリック・デ・ラ・ロザ氏によると、これはEASEの開発チームが、製品内容を検証するために役立てているという。EASE Applicationsのポータルがこのアンケートデータを収集し、管理チームだけでなく、個々の看護師にもフィードバックする。
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