診療所のIT化の歴史を振り返る(2) 政策が後押しするIT化【連載コラム】医療ITの現場から

レセコンやPACS、クラウドコンピューティングなど医療分野のIT化には、その普及促進を目的としたさまざまな政策が密接に結び付いている。

2012年08月16日 08時00分 公開
[大西大輔,メディキャスト]

 前回の「診療所のIT化の歴史を振り返る(1) IT化の中核を担う電子カルテ」に続き、診療所のIT化の歴史を振り返ります。医療分野のIT化は、普及を促進させるためのさまざまな政策と密接に結び付いていることが分かります。

最も歴史が長いITツール

 「レセプトコンピュータ(レセコン)」は、約40年前に販売開始された診療所のIT化で最も歴史が古いツールです。診療内容を元に診療報酬明細(レセプト)を自動作成し、支払機関に提出するデータを出力します。レセプトの作成には、2年に1度改定される「診療報酬」や地域ごとの「地方公費」の差異に対応する複雑な計算が必要です。レセコンの導入によって、診療所の医療事務作業の負荷が軽減されました(関連記事:レセプト審査の強化とIT化の恩恵)。

 診療所のレセコンは1990年代以降に普及が進み、ベンダーが開発したレセコンが多く導入されてきました。その後、2005年に日本医師会が日医標準レセプトソフトウェア「ORCA」を発表し、オープンソースで無償のレセコンが登場しました。ORCAに連動すると、レセコン機能の開発が不要になることからORCA連動型の電子カルテが増え続けており、現在約20社から販売されています。2011年には診療所のORCA導入施設数が1万件を超え、その市場シェアは拡大しています。

レセプト電算化の普及

 その後、2006年に厚生労働省からレセプト請求のオンライン化を事実上義務化する通知が出されました。2008年に一部通知の内容が緩和され、ネットワーク経由のオンライン請求以外でも電子媒体による提出も可能になりました。現在、診療所におけるレセプトデータの電子化の普及率は8割を超え、オンライン請求も4割に達しています。現在、政府は「レセプトの電算化はほぼ完了した」と認識しているようです。

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