不動産市場で進むアナリティクスの活用【後編】
「不動産テック」がもたらす“脱・百貨店ビジネス”とコロナ時代のオフィス
コロナ禍やEコマースへのシフトで小売店舗の在り方が問われている。ピンチをチャンスに変えるための鍵となるのが、アナリティクスの活用だ。
商用不動産の大部分を占める小売店舗は、Eコマースが成長し続ける中で近年、ビジネスの在り方を大きく変化させている。最近は特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で、消費者の実店舗離れが顕著だ。ここでも「不動産テック」(PropTech:不動産に特化したアナリティクス技術群の総称)が助けになる可能性がある。
コンサルティング企業PricewaterhouseCoopers(PwC)でナショナルパートナー兼リアルエステートプラクティスリーダーを務めるバイロン・カーロック氏は「Eコマースが大きく成長していても、販売の85%はまだ店舗に依存している」と述べる。カーロック氏は、アナリティクスによって顧客体験を改善することで、小売店舗での売り上げを促進できると主張する。
アナリティクスが促す“脱・百貨店”とコロナ終息後のオフィスづくり
店舗で選んでオンラインで注文する「ショールーミング」が流行している。目当ての商品をオンラインで注文する一方で、店舗では他の商品を購入して帰る人もいる。アナリティクスに基づくパーソナライゼーションを実現できれば、店舗の店員が商品を薦めることもできる。
アナリティクスが不動産開発会社に対して、小売りスペースの販売戦略の変革を促す事例も出始めている。その結果、大型百貨店ではなく小規模専門店が立ち並ぶ多目的施設が多く生まれているとトンプソン氏は説明する。「買うべきものを見つけるために、百貨店の1階から10階までくまなく見て回りたいと考える人はいない」と同氏は指摘する。
小売業者はアナリティクスを利用することで、顧客理解を深めたり、顧客の行動予測が可能になったりする。不透明な状況が続くこの分野でビジネスモデルを転換しやすくなる。
カーロック氏によると、不動産業界では他の業界と比べ、情報フローの自動化や最適化が遅れていた。最近になってデジタル化が進み、システムにデータが記録され始めている。賃貸契約のプロセスも効率化され、不動産売買手続きが完了するまでの時間も短縮している。
商用不動産におけるアナリティクス活用は、新型コロナウイルス感染症終息後のオフィス環境でさらに大きな役割を果たす。オフィス機能を改善するだけでなく、平時の状態に戻る後押しもできる。
感染防止の観点では、安全性の確保にセンサーデータが重要な役割を果たす可能性がある。センサーは商用不動産の安全な収容人数やトイレ清掃頻度の判断、入退出時の体温チェックなどで役立つ。「大家、ホスピタリティ企業、フィットネスクラブや、オフィスに社員を戻そうとする企業は、安全かつ健全な方法で出入りを管理できるようになる」とカーロック氏は語る。
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