新型コロナで加速する製造業のIT投資
クラウド移行や3Dプリンタ活用が加速 製造業向けITの4大トレンド
製造業の間でIT投資が進む中、ITベンダー各社も製造業向けの製品・技術開発を活発化させている。ITベンダー各社のイベント内容を基に、「IIoT」をはじめとする製造業向けITのトレンドを整理しよう。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け、2020年から2021年にかけて複数のITベンダーが年次イベントをオンライン形式に切り替えて開催した。こうしたイベント内容を基に、主に製造業向けのITに関する4つのトレンドを説明する。
トレンド1.パンデミックで加速したデジタル化
「製造業の間でIT製品/サービスの採用が加速している」と、さまざまなITベンダーが口をそろえる。背景にあるのはCOVID-19の拡大だ。産業用IoT(モノのインターネット)である「IIoT」(Industrial Internet of Things)ベンダーのOden Technologiesは、2020年7月開催のオンラインイベント「IIoT World Days」で、「71%もの組織がデジタルトランスフォーメーションを重要視している」という調査結果を明らかにした。
製造業向け設計支援ソフトウェアや製造プロセス管理ソフトウェアを手掛けるPTCは、2020年6月にオンラインイベント「LiveWorx 20 Virtual」を開催した。同社はイベントで、「工場と他部門間のデータ連携ツール」と「データセキュリティ」の2つが製造業のIT投資において注目のテーマになると説明。加えて製造業の間でクラウドサービスへのシステム移行が加速していることを強調した。
重電メーカーのSchneider Electricおよび産業用ソフトウェアメーカーのAVEVA Groupは、2020年6月にオンラインイベント「AVEVA World Digital」を開催。COVID-19によって企業が重視するようになったテーマとして「あらゆるシステムのリモート化」と「サステナビリティ(持続可能性)のためのデジタル活用」を挙げた。
トレンド2.変化するユーザー企業のニーズ
「COVID-19は、ITシステムの利用料金を固定費として計上することの意味を改めて問い直した」。Amazon Web Services(AWS)のドイツ法人でマネージングディレクターを務めるクラウス・ブルク氏はこう言う。
電機メーカーのSiemensは2020年6月に開催したユーザーカンファレンス「Siemens Realize LIVE 2020」で、3D(3次元)プリンタは新製品の試作品の作成といった用途だけでなく、ユーザー企業が自社製品の新たな使い道を研究する用途で需要が増えていると報告した。
Schneider ElectricのCEOであるジャン・パスカル・トリコワ氏はAVEVA World Digitalで「運送業界はコスト削減を目指し、食品・飲料業界はさらなる消費者需要の取り込みを目指しているそれぞれの企業が取り組むテーマは『レジリエンシー(回復性)』で共通している」と述べた。
トレンド3.ハードウェアとソフトウェアの市場で起こり続けるイノベーション
産業分野で新たなハードウェアの開発と提供が進んでいる。Microsoftは2020年に、大規模な機械学習技術の利用に特化した新型のスーパーコンピュータを発表した。AVEVAはPCベンダーのLenovoや無停止型(FT:フォールトトレラント)サーバベンダーのStratus Technologiesとの提携を発表し、産業用機械や工場などのエッジ(データの発生源)で稼働するエッジコンピュータの開発に力を入れる。産業機器メーカーのRockwell Automationは、2020年にエッジコンピュータ用ゲートウェイ「FactoryTalk Edge Gateway」やPLC(プログラマブルロジックコントローラー)といったエッジコンピュータの新製品を発表した。
ソフトウェアの分野では、Siemensが2018年にアプリケーション開発ツールベンダーMendixを買収して、ノーコード/ローコード開発の領域に注力し始めたことに注目だ。SiemensはMendixの製品やサービスを、SiemensのSaaS(Software as a Service)ラインアップに組み込む意向を見せている。
歴史的にソフトウェア事業を強みとしてきたPTCは、最終的には同社製ソフトウェアが持つ機能の全てを、同社が「Atlas」と呼ぶクラウドサービス群を介してSaaSとして利用できるようにする計画を発表した。Atlasはワークフローやデータ分析、セキュリティ対策、データ管理などに関連するサービスや機能を備える。
トレンド4.サステナビリティへの注目
一部のITベンダーは新たなテーマの一つとして、サステナビリティに注目している。SAPは新しい構想「Climate 21」を発表した。これは同社の製品やサービスに複数のサステナビリティ指標を組み込むことを目的としており、その一環として同社は「SAP Product Carbon Footprint Analytics」(PCFA)の提供を開始した。PCFAはユーザー企業の部門や拠点ごとに二酸化炭素排出量を集計し、企業全体の二酸化炭素の排出抑制実績を分析するためのアプリケーションだ。SiemensやSchneider Electric、AVEVAも、ユーザー企業が環境負荷を減らした製品を製造するために、どのように自社製品を使えばよいのかについて自社やグループ企業のイベントで説明していた。
プロフィール
編集協力:グローバルインフォメーション
世界の主要調査会社300社以上とパートナー契約を結び、日本をはじめとする世界各所で市場調査レポートを提供。レポートの販売の他、提携先への委託調査の仲介も実施している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
3
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
肥大化した「SFA」の沼 4カ月でBigQuery×AppSheetの新システムを構築した方法
-
6
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
7
次世代RPA「ハイパーオートメーション」が急成長か Gartnerが予測
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
昭和大学病院がeICUを導入、ICUの患者情報を遠隔地で一括管理
-
10
「何から始めればいい?」 情報漏えい対策で悲鳴を上げる中小企業のリアル
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
4
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー