Python開発ツールが抱えるセキュリティ問題【後編】
「Python」で“スキャン擦り抜けマルウェア”の開発が容易に? その仕組みとは
サイバー犯罪者は「Python」向け開発ツール「PyInstaller」を悪用することで、難読化などの隠蔽工作をせずに、マルウェア対策ツールを擦り抜ける攻撃プログラムを開発できる可能性があるという。その仕組みとは。
前編「『Python』で“スキャン擦り抜けマルウェア”の開発が容易に? 判明した問題は」は、セキュリティに関する研究論文の内容を基に、プログラミング言語「Python」向け開発ツール「PyInstaller」が攻撃者に悪用される可能性を紹介した。PyInstallerは、開発者がPythonで記述したソースコードを、各種OS向けの実行可能ファイルに変換するパッケージツールだ。研究論文によると、PyInstallerで開発可能なペイロードは、主要なマルウェア対策ツールのスキャンを擦り抜け、悪意ある動作を実行することが可能だという。
問題は、PyInstallerがPythonソースコードを実行可能ファイルに変換する方法にある。
“隠蔽工作”不要? Pythonが攻撃者に悪用され得る理由
Pythonはスクリプト言語だ。そのためPyInstallerは、厳密にはPythonソースコードをコンパイルするわけではない。Pythonソースコードと、それが必要とする全てのライブラリ(特定機能を実現するプログラム部品群)などのコンポーネントをパッケージ化する。Pythonプログラムを実行するための専用ブートローダーが、起動時にこうしたコンポーネントを必要に応じて呼び出す。
現在の主要なマルウェア対策ツールにとって、PYCファイルを効果的にスキャンするのは極めて難しいことが分かっている。PYCファイルは、PythonがPythonソースコードを実行する際、Pythonソースコードを基に生成するバイトコード(中間コード)を格納するファイルだ。研究論文の著者であるバシリオス・クソコスタス氏とコンスタンティノス・パサキス氏は、複数のマルウェア対策ツールによるマルウェア検出結果を示すWebサイト「VirusTotal」でさまざまなPYCファイルをスキャンしたところ、適切に分析できないことを発見した。VirusTotalが通常なら「悪意あり」と判定するプログラムでも、チェックを通過してしまったという。
クソコスタス氏とパサキス氏は、PyInstallerによってPYCファイルにリモートシェルスクリプト(標的の端末から攻撃者の端末に接続し、接続後に攻撃者の端末から標的の端末を操作できるようにするためのスクリプト)を紛れ込ませた。さらに同じリモートシェルスクリプトをJavaScriptファイルとPythonソースコードにも挿入した。するとVirusTotalは、JavaScriptファイルをPythonソースコードの4倍の頻度で、悪意ありだと判定した。
重要なことは、VirusTotalが含む全てのマルウェア対策ツールが、PYCファイル内のリモートシェルスクリプトを検出しなかったことだ。この実験では、全てのソースコードを難読化しなかった。「静的分析を擦り抜ける方法はたくさんある。その意味ではマルウェア対策ルールを擦り抜けるこの新しい方法の発見は、驚きではなかった」とパサキス氏は説明する。
パサキス氏が「驚いた」と語るのは、ペイロード(マルウェアの実行を可能にするプログラム)を隠す必要がなかったことだ。Pythonをはじめとするスクリプト言語では、これは「予想外のことだった」と同氏は説明する。
クソコスタス氏とパサキス氏によると、さらに厄介なことは、今回PyInstallerに見つかった問題はPyInstallerに特有の事象ではなく、セキュリティツール全般の大きな欠陥を反映していることだ。商用マルウェア対策ツールは、Pythonのバイトコードを処理し、スキャンする方法に弱点があるという。
幸いなことに、この問題の修正は特に難しいわけではない。クソコスタス氏とパサキス氏によると、大部分の商用マルウェア対策ベンダーは、Pythonのバイトコードのスキャンをマルウェア対策ツールに追加できる体制が整っている。この機能の実装が進めば、Pythonベースのマルウェアを常に阻止することが可能になる見通しだ。
「マルウェア対策ベンダーにとって、修正は大変なことではない」とパサキス氏は言い切る。同氏によると、バイトコードを含むPYCファイルの処理は難しくなく、新しいルールをマルウェア対策ツールに追加すればよいからだ。「近いうちに全てのマルウェア対策ベンダーが修正すると期待している」(同)
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