コンピュテーショナルストレージ最新動向【前編】
コンピュテーショナルストレージの最新技術動向
データをCPUに転送することなくストレージで処理するコンピュテーショナルストレージ。その定義と技術動向を紹介する。
データ増とその迅速な処理の必要性が高まるにつれて、ネットワークエッジにおけるデータ処理はますます重要になっている。その延長線にあるのがコンピュテーショナルストレージだ。
コンピューティング、ネットワーク、ストレージが分離している従来のITシステムには、各コンポーネント固有のボトルネックが伴う。これに対する一つの選択肢がHCI(ハイパーコンバージドインフラ)だ。
コンピュテーショナルストレージはこれをさらに一歩進め、ストレージサブシステムに演算能力を組み込んだ。このアイデアの支持者は、これによりさまざまな状況で高い効率性を発揮するという。例えばセンサーやIoT(モノのインターネット)の急増によってデータ量が増加する状況やAIで迅速な処理が必要な状況だ。
ただしコンピュテーショナルストレージは比較的未熟で、サプライヤーもわずかだ。
コンピュテーショナルストレージを必要とする要因
ストレージの業界団体SNIA(Storage Networking Industry Association)は「コンピュテーショナルストレージのターゲットは増え続けるストレージワークロードを処理する需要が従来のサーバアーキテクチャを上回る場合」としている。その例として、SNIAはAI、ビッグデータ、コンテンツ配信、暗号化と復号、データ圧縮、重複排除、ストレージ管理などのワークロードを挙げている。
データの増加がきっかけになっているのは確かだ。ただしデータ増だけではなく、処理速度の向上や反復タスクのオーバーヘッド削減へのニーズも後押ししている。
PA Consultingのアンドリュー・ラーセン氏は次のように話す。「当社は機能が段階的に増えていくと見ている。つまり画期的な変化ではなく漸進的な変化だ。この技術が主流になるにつれ、前処理、圧縮、暗号化、重複排除やデータ検索など、もっと幅広く使われるようになるだろう」
資料によると、コンピュテーショナルストレージは従来アーキテクチャよりもCPUやエネルギーの負荷が低いという。コンピュテーショナルストレージは、サーバにデータを送信する前にデータをフィルタリングできる。CPUワークロードの一部がコンピュテーショナルストレージに引き継がれるので、データセンターでも有効だ。
従来のサーバストレージアーキテクチャは、CPUがデータを要求してタスクを実行し、そのデータをストレージに送り返す。コンピュテーショナルストレージならば、CPUは暗号の復号のようなタスクを「インテリジェントな」ストレージに送り込む。データをドライブから移動する必要がないためセキュリティ的にもメリットがある。
技術とデプロイのオプション
コンピュテーショナルストレージは高速なSSD、低価格のプログラマブルアレイや処理コア、効率の高いインタフェースで構成される。
フォームファクターは通常、U.2ドライブかM.2 NVMeドライブ、PCIeカードだ。EDSFF(Enterprise and Data Center SSD Form Factor)の製品を提供するサプライヤーもある。例外はSamsung Semiconductorの「SmartSSD」で、標準の2.5インチSSDベースだ。
コンピューティング機能は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはArmベースのSoC(System-on-Chip)で提供される。
現在はFPGAを採用する製品が多く、特定の機能(通常はストレージ管理の共通機能)がプログラミングされた「固定」のシステムを購入できる。カスタムシステムまたはプログラム可能なシステムであれば、低レベルのFPGA言語またはXilinxの「Vitis」などのツールを使って独自機能を追加できる。
ArmコアSoCを使うサプライヤーも登場した。ArmコアSoCベースの製品は「Linux」を実行でき、コンピュテーショナルストレージをさらに拡張できる可能性がある。
SNIAがサプライヤーに期待するのは、イーサネットなどのネットワークを追加してコンピュテーショナルストレージ同士がピア・ツー・ピアで通信可能になることだ。だが、今のところArmベースのコンピュテーショナルストレージを製造しているのはNGD Systemsだけだ。
コンピュテーショナルストレージには多数の用途があるため、この技術の市場は均一ではない。今のところ、サプライヤーは用途別、インタフェース別、プログラミング方法別、管理方法別の機器を開発している。専用サブシステムに重点を置くサプライヤーもあれば、コンピュテーショナルストレージを既存のストレージのアップグレードと位置付けているサプライヤーもある。
業界は、コンピュテーショナルストレージを次のように定義している。
- CSD(コンピュテーショナルストレージドライブ)
ストレージにコンピューティング機能を追加したもの
- CSP(コンピュテーショナルストレージプロセッサ)
ストレージアレイにコンピューティング機能を組み込んでいるが、独自のストレージを備えていないハードウェア
- CSA(コンピュテーショナルストレージアレイ)
複数のCSDを提供するもの、または通常のドライブにコンピューティング機能としてCSPを追加したもの
SNIAはサービスレイヤーとしてCSS(コンピュテーショナルストレージサービス)も定義している。このレイヤーではコンピュテーショナルストレージ機器の検出、操作、場合によってはプログラミングを処理する。
後編では、コンピュテーショナルストレージのユースケースと主要サプライヤー&製品を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly日本語版
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー