形だけの自動化に騙されないためには
経営層にどう説明する? 「AI搭載セキュリティ製品」導入で失敗しない4つの絶対条件
攻撃者もAIを使っているというベンダーの煽り文句に、経営層も焦りを感じている。だが、実態のないAI機能を導入すれば、企業は痛い目に合う可能性がある。対策は何か。
近年、AI(人工知能)を組み込んだセキュリティツールが広がっている。ただし、中には「AIウォッシング」と呼ばれる、一部だけAIを使っているのにAIの効果を大げさに訴求する製品もある。企業はAIウォッシングのわなにはまらないようにするために、どうすればいいのか。
ガバナンス崩壊のリスクも
AIはもはやセキュリティツールの未来的な機能ではない。大半の企業が使用するセキュリティツールにすでに組み込まれている。具体的には、メールセキュリティ、脅威の検出、アイデンティティー保護、データ損失防止、脆弱(ぜいじゃく)性管理、セキュリティ運用のマネージドサービスが挙げられる。
2026年に変わるのは、AIセキュリティツールとしての「売るストーリー」だ。企業のCISO(最高情報セキュリティ責任者)はAIの利用に関して、経営陣や調達現場から「成功」を見せるためのプレッシャーを受けている。それが、セキュリティベンダーにとって、マーケティングのチャンスを生み出す。セキュリティベンダーは最近、ウェビナーやホワイトペーパーを活用し、「貴社のセキュリティを自動化できる」という新たな提案に注力している。
マーケティング戦略の中には、「攻撃者がAIを使用しているので、当社のAIセキュリティツールを購入しないと後れをとる」という主張もある。確かに、それは否定できない。防御側もAIを採用することは重要だが、マーケティングのキャッチフレーズとして使いすぎると、ユーザー企業に対して迫力を失う可能性がある。
提案の切り口として、むしろこういうストーリーはどうか。「2026年には、AIを取り入れることを前提に、そのAIはどのくらいの防御力を持つかを見極めることが重要だ」――。
多数あるAIセキュリティツールの中には、脅威の検出や攻撃パターンの分析に関して高性能なものと、主に情報の可視化にAIを用いる「ダッシュボードにすぎない」ものがある。企業は前者のニーズが高く、セキュリティベンダーにとってそれらを特定しやすくすることがビジネスチャンスになると考えられる。具体的には、自社製品を使うことでアイデンティティーの悪用やデータの流出、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃のリスクを減らせるということを訴求すれば、企業の悩みに寄り添った提案が可能になる。
大半の企業は、誤ったアラートの発生、脆弱性の管理不足、インターネットに接続したIT資産の可視性の欠如、アイデンティティーの過剰といった課題を抱えている。セキュリティベンダーはそれらの解決のために「AIが必要だ」とストレートに語るのはあまり賢くない。むしろ、課題を踏まえてどのようなことに取り組む必要があるかを説明し、そのためのAIの具体的な利用方法を提案することが有効だろう。
企業が「いい製品」を見分けるためのポイント
ユーザー企業はAIセキュリティツールを選定する際、誇大になりがちなベンダー戦略を念頭に置く必要がある。以下で失敗を避けるためのポイントを見てみよう。
- 購入決定は慎重に
- ベンダーが見せるテストに頼らず、自社インフラでテストを実施してAIセキュリティツールの「できること」を検証する。そのツールが「防御力の強化」と「従業員の負荷の低減」の両面において自社にメリットをもたらすとの判断を踏まえ、購入を決定する。
- データの取り扱いに細心の注意を払う
- AIセキュリティツールの利用はコンプライアンス(法令順守)の観点からリスクも伴う。企業はAIセキュリティツールがどのデータを取り込むか、データに誰がアクセスできるか、データはAIモデルのトレーニングに使用されるかといったことを明確にし、データの取り扱いに関して細心の注意を払う必要がある。
- 監査も重視する
- AIセキュリティツールの行動を把握し、規制当局や顧客に対してAIセキュリティツール利用の詳細情報を提供できるようにする。これによって、セキュリティとガバナンスの両立を図る。
- 段階的な取り組み
- 失敗を避けるために特に重要なのは、AIセキュリティツールの利用に段階的に取り組むことだ。システムの一部でAIセキュリティツールをテストし、効果があって信頼できると判断したら、利用の範囲を徐々に広げる。仮にAIセキュリティツールが「使い物にならない」と判断した場合に備え、元の運用体制に戻れるようにすることも大切だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
4
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
BMWも導入 78兆円市場に化ける「フィジカルAI」の衝撃
-
9
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
10
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー