リフト&シフトで挑むデータ基盤の一元化
RedshiftやOracleから「Databricks」に移行 アクサが“全面刷新”を避けた理由
企業のデータ活用が進む一方で、部門ごとの個別最適化によるシステム分断が深刻化している。既存システムの全面刷新はリスクが高く頓挫しやすい。アクサ・ジャパンが実践した「現実的な移行アプローチ」に迫る。
データドリブンな意思決定が求められる中、事業部門ごとにシステムが乱立し、データ基盤が分断されることは企業にとってよくある課題だ。個別開発されたレガシーシステムが複雑化したまま放置すれば、データへのアクセス性が損なわれるだけではなく、将来的なAI活用のボトルネックにもなりかねない。
生命保険や損害保険を扱うアクサ・ジャパンも、この課題に直面していた。同社は従業員の半数以上が日常的にデータを分析するほどデータ活用の成熟度が高かったが、グループ統合の進展に伴い、個別のデータレイクや運用プロセスが分散・複雑化していたのだ。
そこでアクサ・ジャパンは、データ分析からAIモデルの開発・運用までを一元的に扱えるデータ基盤システム「Databricks」を採用し、データウェアハウスの運用費用を最大60%削減することに成功した。データウェアハウス「Amazon Redshift」やOracle製品で構築された既存システムに対する無理なリファクタリング(全面刷新)を避けた移行プロセスとは、どのようなものか。
複雑なレガシーシステム移行で選んだ「現実的なアプローチ」
アクサ・ジャパンはDatabricksを採用し、社内に分散していたデータ基盤を統合した。Databricks社が2026年8月26日に発表した。データウェアハウスの運用費用を最大60%、ETL(データの抽出、変換、ロード)処理の費用を70%削減した他、開発速度も約40%向上したという。分断されていたレガシーシステムを段階的に集約し、全社的なデータ活用とAI活用に向けたデータ基盤を整備した。
生命保険や損害保険事業を手掛けるアクサ・ジャパンは、保険引受、業務運営、顧客対応など、多様な業務でデータを活用している。従業員の半数以上が日常的にデータ分析を実施するなど、データ活用は進んでいた。一方、グループ統合の進展に伴い、事業部門ごとに個別のデータレイク、レガシーアプリケーション、運用プロセスが存在し、データ基盤が分散・複雑化していた。
アクサ・ジャパンは、データへのアクセス性向上やデータ品質の確保に加え、将来的なAI活用の拡大を見据え、データの集約先としてDatabricksを選定した。選定では、データアクセスやガバナンス機能、費用面に加え、機械学習モデルを継続的に開発、運用、管理するMLOpsへの適合力を評価した。
移行プロジェクトでは、システムを一度に全面刷新するのではなく、段階的な移行を採用した。長年にわたる個別開発で複雑化していたAmazon RedshiftやOracle製品を利用した既存システムについて、無理なリファクタリングを避け、既存の構成をできる限り維持して移行するリフト&シフト方式で進めた。
具体的には、ソースコードの自動変換を活用して、Oracle製品やデータ連携ツール「Informatica」で実行していた処理を移行した。その上で、「Databricks SQL」と、データ変換処理をSQLで記述・管理するオープンソースツール「dbt」(data build tool)を用いたワークフローへと刷新した。
新基盤への集約によって、データウェアハウスの運用費用を最大60%、ETL処理の費用を70%削減した。レガシーサーバの廃止によって保守・運用の負担も軽減し、開発速度は約40%向上している。
ガバナンス面では、Databricksのデータガバナンス機能「Unity Catalog」を活用し、データへのアクセス権限を一元管理する。部門間のセキュリティを確保しながら、全社で利用できるセルフサービス型の分析環境を整備した。今後は、不正検出や顧客サポートの自動化など、機械学習モデルを活用した機能の運用拡大を進める。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「アクサ・ジャパン、データ基盤刷新でウェアハウス費用を最大6割削減 開発速度も向上」(2026年8月27日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント -
製品資料
揺らぐ境界防御 いま企業が特に警戒すべき「3つのセキュリティ課題」とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
5
画面をティッシュで拭くのはNG Dellが推奨するPCの正しいお手入れ方法
-
6
メインフレームは死なず AI活用で20年来の高収益をたたき出す基幹システムの底力
-
7
「法人PCの導入」に関するアンケート
-
8
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
9
「GitHub Copilot」3000人に配布も基本機能しか使われない 保険大手が得た教訓
-
10
業務引き継ぎで困ったこと 大企業200人調査で判明した課題の第1位は
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
8
AIエージェントで成果は出る? 調査結果に見る費用対効果の実態
-
9
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
10
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー