OEM・1000種超の多品種生産をシステム化
多品種小ロットの「手書き・配合ミス」を克服 キャニオンスパイスの食品工場DX
内田洋行ITソリューションズは、紙や手書き中心だった製造業務をシステム化したキャニオンスパイスの導入事例を公開した。
固形ルウやレトルト食品を製造するキャニオンスパイスは、内田洋行ITソリューションズ(ITS)の食品製造業向け統合パッケージ「スーパーカクテルCore FOODs」を2013年に導入した。さらに2021年には食品トレーサビリティシステム「Trace eye FOOD-Pro」の運用を開始し、両システムを連携。紙や手書きに依存していた製造業務のシステム化を進め、ミスの削減や業務の標準化、属人化の解消につなげた。ITSが2026年9月8日、導入事例を公開した。
キャニオンスパイスは1979年創業の食品メーカーで、「こどものためのカレールウ。」などの固形ルウやレトルト食品を製造する。1000種類を超える多品種・小ロット生産を強みとし、OEM商品の生産も手掛ける。
紙・手書き依存を減らし属人化を解消するまでの過程は
スーパーカクテルCore FOODs導入の背景にあるのが、多品種・小ロット生産やOEM特有の複雑な製造条件だ。顧客から支給された原材料を使用したり、商品ごとにスパイスやスプーンなどの同梱物を変えたりするため、製造から梱包まで細かな指示が必要になる。その都度、工程別の指示書を手書きで作成していたため、チェック漏れによる配合ミスや添付ミスが発生していたという。
キャニオンスパイス常務取締役の辻田大樹氏は、ヒューマンエラーの削減に加え、業務効率化やデータ活用を進めるため、ERPの導入を検討したと説明する。
複数の製品を比較した結果、同社は標準機能の充実度や操作性などを評価し、スーパーカクテルCore FOODsを採用。2013年に稼働を開始した。
工程別の製造指示で「入れ忘れ」「作業漏れ」を削減
導入に当たり、キャニオンスパイスは製造工程と梱包工程でそれぞれ必要な情報を記載した作業指示書を作成できるよう、スーパーカクテルCore FOODsをカスタマイズした。原材料の使用量だけでなく、各工程で注意すべき事項なども入力できるようにした。
導入当初は、現場からシステム入力によって作業が増えることへの不満も出たという。一方、必要な情報を網羅した指示書を工程ごとに作成できるようになったことで、原材料の入れ忘れや作業漏れは減少した。
さらに同社は、第二工場の稼働を開始した2021年にTrace eye FOOD-Proを導入した。原材料の入荷から製造、製品出荷までを現物とひも付けて管理し、スーパーカクテルCore FOODsと連携させた。
これにより、製造指示書の確認から作業結果の入力までをシステム上で完結できるようになった。
辻田氏によると、従来は熟練者の知識に依存する作業があり、工場長などの管理職が現場を細かくフォローする必要があった。しかしスーパーカクテルCore FOODsとFOOD-Proの導入によって、熟練者でなくても作業できる仕組みを構築し、「基本的に誰にでも作業を任せられる」状態になったという。生産管理以外でも手書き業務のシステム化が進み、データ活用が可能になったほか、経理部門でのミス削減にもつながった。
問題発生時に「どのロット、どの原料か」を追跡
システム連携の効果は、作業の標準化だけではない。キャニオンスパイスはトレーサビリティーも強化した。
製品に問題が発生した際、システム上のデータを追跡し、対象となるロットや使用した原材料を以前より容易に確認できるようになった。辻田氏は、有事の際に速やかに追跡し、「どのロットのどの原料に原因があったのか」を特定できる体制が重要だとしている。
同社は、製造予定の可視化にも取り組んだ。工場にはシステムと連携する大型モニターを設置し、実施中の作業や工程の進捗(しんちょく)を確認できるようにした。
従来は、製造スケジュールの全体像を把握している担当者は限られていたという。しかし、完了した工程をモニター上でグレーアウトしたり、スケジュール変更を視覚的に表示したりすることで、現場全体が進捗を共有できるようになった。
キャニオンスパイスは、モニターの前で定期的にミーティングする運用も取り入れた。「予定より早く進んでいるので次の作業を進める」といった判断を、関係者が状況を見ながら協議できるようになったという。
残る紙業務を電子化、次は原価管理を高度化
ただし、キャニオンスパイスでは全てのアナログ業務をなくしたわけではない。現在も受注書のやりとりや金属探知機の記録など、一部に手書きや紙ベースの処理が残っている。今後はクラウドサービスなども活用し、順次電子化する方針だ。
原価管理にも課題が残る。OEM生産では、得意先によって原材料の有償支給やロイヤリティーなどの条件が異なる。そのため、製品ごとの正確な原価を把握することは難しかったという。
そこでキャニオンスパイスは、原価情報を営業活動や経営判断に利用できる体制を整える。最新の仕入価格や販売価格、ロイヤリティーなどを反映し、スーパーカクテルCore FOODsで原価を自動算出する仕組みを構築している。
本稿は、内田洋行ITソリューションズが2026年9月8日に公開したルウ・レトルト食品製造のキャニオンスパイス、スーパーカクテルによる業務の標準化で属人化を解消「スーパーカクテルCore FOODs」導入事例を公開と手書きベースの業務で発生していたミスを低減 スパカクとFOOD-Proの連携で、属人化解消・生産効率化が進んだを基に作成しました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
次世代RPA「ハイパーオートメーション」が急成長か Gartnerが予測
-
4
昭和大学病院がeICUを導入、ICUの患者情報を遠隔地で一括管理
-
5
Windows XPにもパッチを提供 脆弱性「BlueKeep」はなぜ危険か
-
6
「何から始めればいい?」 情報漏えい対策で悲鳴を上げる中小企業のリアル
-
7
積水化学工業が「SAP S/4HANA Cloud」の“全グループ導入”に踏み切った訳
-
8
IBM iのブラックボックス化を打破 資産継承と進化を実現する「IBM Bob」の実力
-
9
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
10
付属ツール「Windows ファイアウォール」の利点と限界
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
4
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー