GPU一極集中から分散型CPU基盤への転換
GPU偏重に迫る転換点 AnthropicがAkamaiにCPUインフラ託す理由
GPU不足や液冷対応に悩むインフラ担当者に朗報だ。AnthropicとAkamaiの最大200億ドル提携は、AI基盤の主戦場がCPUへ広がる転換点を示す。巨大DC不要で勝機をつかむ新潮流の全容に迫る。
AkamaiとAnthropicの新たな提携は、AIインフラの需要がGPUクラスタ向けの大規模データセンター以外にも広がっている実態を示している。
Akamaiは2026年9月24日、Anthropicと7年間で116億ドルの契約を結んだと発表した。増加する同社のCPUワークロード向けに分散型クラウドインフラを提供する。この契約には90億ドルの追加オプションがあり、契約総額は約200億ドルに達する可能性がある。
データセンター事業者にとって、この新たな商機は従来の電力や冷却インフラを備えた施設にも当てはまる。AI企業がモデルトレーニングの周辺ワークロード向けに設備容量を増強しており、こうした処理には一般的なCPUハードウェアが適しているためだ。
調査会社IDCでクラウドおよびデータセンター、エンタープライズインフラ部門のグループバイスプレジデントを務めるデイブ・マッカーシー氏は「GPUベースのサーバクラスタとの決定的な違いはラック密度にある」と指摘する。同氏によると、GPUクラスタは1ラック当たり40k~100kW以上の電力を消費し、特殊な液冷システムを必要とする。一方でCPU環境の消費電力は、通常1ラック当たり10k~20kWにとどまる。
マッカーシー氏は、この密度の低さにより、大規模なGPU導入に必要な電力や冷却要件を満たすことなく、既存のコロケーション施設にCPUワークロードを収容できると述べる。
AkamaiはAnthropicとの契約に必要な電力需要を開示していない。だが同社によると、Anthropicとの合意を含め、2026年に締結した総額144億ドル規模に上る大規模な複数年契約のポートフォリオには、95~105MWの電力が必要になるという。
この提携は、AI基盤の主戦場がCPUへ広がる転換点となるのだろうか。以下では、巨大DC不要で勝機をつかむ新潮流の全容に迫る。
複数拠点にまたがる容量の確保
Akamaiは今回の契約履行に向けて自社データセンターを建設せず、既存の分散型クラウドインフラを活用し、複数のコロケーション事業者と連携する方針を示した。
AkamaiのCFO(最高財務責任者)を務めるエド・マクゴワン氏は、9月24日の投資家向け説明会で、各拠点で約10~30MWを確保できると説明した。その一部はすでに確保済みだという。
「当社には提携先事業者が数多く存在する。特定拠点で10~30MWといった複数年契約を結ぶことが可能だ」(マクゴワン氏)
この手法は、ハイパースケーラーが求める最大規模のGPU導入には対応できないものの、余剰容量を抱えるデータセンター事業者に好機をもたらす可能性がある。
マッカーシー氏は「AI関連ビジネスを獲得するために、事業者の全てが特注の冷却液循環機構を備えた500MW級の大規模キャンパスを持つ必要はない」と語る。
地方主要都市に10~30MW規模の区画を持つ事業者は、AIアプリケーションのパイプラインに向けた「分散サービング層」を提供できると同氏は説明する。超高密度のGPU導入で求められる専用の冷却システムではなく、空冷式で標準的な電力規格の企業向けインフラを活用できるという。
GPUクラスタ以外へと広がるAIワークロード
マッカーシー氏によると、CPUの需要はAIアプリケーションを支えるインフラの多様化を反映している。ワークロードがモデルトレーニングの枠を超えて広がっているためだ。
最先端モデルのトレーニングには、高速ネットワークで相互接続した高密度のGPUクラスタが必要になる。一方でアプリケーションの配信(サービング)、前処理、コンテキストキャッシング、API終端などは要件が異なる。エンドユーザーやデータソース、クライアントシステムに近い拠点で実行する方が有利に働く。
マッカーシー氏によれば、CPUワークロードにはエージェントのオーケストレーションやツール呼び出し、コンテキストおよびメモリの管理、前処理や後処理、ガードレールの適用などが含まれる。
Akamaiのマクゴワン氏も投資家向け説明会で同様の点を指摘した。
「これら全てを実行するには膨大な量のCPUが必要だ。GPUだけで完結するわけではない」(マクゴワン氏)
さらにマクゴワン氏は、電力効率の高さから、CPU導入は1MW当たりの収益性が高くなる可能性があると語った。
「CPUはGPUとは力学が異なる。より多くのCPU容量を確保できるため、消費電力1MW当たりの収益は一般的に高くなる」(同氏)
収益化に先行する設備投資
Anthropicとの契約は、関連収益が発生する前に設備容量を構築するための資金が必要となる実態も示している。
Akamaiは、116億ドルの契約を支えるために、今後2年間で約55億ドルの設備投資を見込んでいる。そのうち約17億ドルは2026年第4四半期に計上される見通しだ。主にメモリをはじめとするサプライチェーン上の部材の確保や先行購入に充てる。同社は2027年にさらに31億ドル、2028年に約7億ドルの設備投資を予定している。
Anthropicとの契約による収益について、同社は2027年に1億5000万~3億ドルを見込む。同年下半期から収益化が始まる計画で、2028年末までには年換算のランレートで約17億ドルの売上高に達すると予測している。
Akamaiが抱える144億ドル規模の大規模クラウド契約全体では、完全稼働時に年間約22億ドルの経常収益を生み出し、95~105MWの電力が必要になると見込まれる。
Anthropicが追加オプションを行使した場合、さらに90億ドルの契約が上乗せされるが、その際は追加の設備投資も必要となる。
データセンター事業者にとって、この投資計画は大規模なGPUキャンパスに必要な巨額資金を投じることなく、AIインフラ需要を取り込む好機となる。10~30MW規模の区画を持つ事業者は、従来の電力や冷却インフラを活用して、AIアプリケーションが必要とする分散型の処理能力を提供できるとマッカーシー氏は述べている。
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