製品選定前に読んでおきたい基礎技術 ストレージ編【第2回】
フラッシュデバイスはどういう仕組みで動くのか? 特徴的な2つの動作を解説
フラッシュデバイスの動作を理解する上で必須となる「ガベージコレクション」と「ウェアレベリング」について解説する。
第1回「初めてのフラッシュデバイス、HDDとの違いは?」では、ストレージ市場予測からフラッシュデバイスの拡大が見込まれること、従来のプライマリーストレージアレイ(頻繁にアクセスするデータを格納したストレージアレイ)の記憶装置として採用されていたHDDとフラッシュデバイスの違いについて紹介した。第2回の今回は、フラッシュデバイスの特徴的な動作を紹介し、よく耳にする疑問点について技術的な観点で解説する。
- 連載インデックス:製品選定前に読んでおきたい基礎技術
まずはフラッシュデバイスを解説する上で必須となる、特徴的な2つの動作について紹介する。1つ目は「ガベージコレクション」だ。皆さんも「フラッシュデバイスは直接的な上書きができない」と耳にしたことがないだろうか。HDDはデータを書き込んだ領域に別のデータを直接上書き可能だが、フラッシュデバイスはデータを格納している部分に直接上書きしてデータを格納することができない。そのため定常的にデータを書き込むためには、データの格納されていない新しい領域にデータを書き込むか、データを削除して書き込みできる領域を確保する必要がある。だが書き込みの単位と削除の単位が異なるため、少々複雑な動作が発生する。以下の図1は、フラッシュデバイスのデータ更新時の処理イメージだ。
用語説明、書き込みフローの順で説明する。
まず、データを書き込む単位を「ページ」と呼ぶ。このページが複数集まったものを「ブロック」と呼び、このブロックの単位でデータの削除が可能だ。図1のように、赤、オレンジ、黄、緑のデータが格納されている状態で、赤の部分を青に更新する場合、以下のフローで書き込みが行われる。
- だいだい、黄、緑のデータを別のブロック内のページにコピー
- 赤が格納されているブロックのデータを削除
- 青を書き込み
これで、だいだい、黄、緑、青のデータがフラッシュデバイスに残る。なお、だいだい、黄、緑のポジションに格納されていたデータが右側に移っているが、格納位置が異なる部分は、参照するストレージシステム内のポインタ(メモリアドレスを格納する変数)側を修正するのが一般的だ。
ここで理解しておきたいのは、データが全く格納されていない状態のフラッシュデバイスと、既にデータが書き込まれているフラッシュデバイスでは、書き込み性能に大きな差が生まれる点だ。これはシステム導入前に、実機で性能を検証する場合でも非常に重要になる。使い始めの性能のみを基準にサイジングをすると、使い続けるうちに性能が劣化するため十分な注意が必要だ。実機検証をする場合は、十分にデータを書き込んでから検証する必要がある。
次に、2つ目の特徴である「ウェアレベリング」について紹介する。こちらもフラッシュデバイスの情報を調べていると見聞きする言葉だろう。フラッシュデバイスにはHDDとは異なり、書き込み回数に上限が存在する。その課題に対処するための手段がウェアレベリングだ。以下の図2はフラッシュデバイスの模式図である。
電極部分の電圧を変えることで、電荷を蓄積する領域である「浮遊ゲート」に電荷を帯びさせ、データを格納する。その際、絶縁層である図のピンク色部分を通って電子が移動する。この移動回数が増加すると、絶縁層が劣化し、浮遊ゲートに蓄えられた電荷が漏れ、適切なデータが保持できなくなる。これがフラッシュデバイスの書き込み回数に上限が生じる理由だ。これを抑制してフラッシュデバイスの寿命を適正化するための機能がウェアレベリングだ。
分かりやすく説明するなら、一部分への書き込みが集中すると、その箇所が周囲と比べて早く劣化し、最終的にはその場所への書き込みができなくなる。しかし書き込み回数を全体で平準化できれば、フラッシュデバイスをより長期間利用できることになる。
ここまで、フラッシュデバイスの特徴的な動作であるガベージコレクションとウェアレベリングについて紹介した。さらに効率良く利用するために近年、積極的に利用されている機能を2つ簡単に紹介する。
1つ目は重複排除機能である。バックアップ分野ではおなじみの機能だが、フラッシュデバイスでもその利用が進んでいる。簡単に言えば、書き込むデータを固定長もしくは可変長に分割し、そのビット列が重複している場合、1つのデータのみを書き込み、残りは全てポインタのみで参照するという機能だ。
この機能を採用することで、フラッシュデバイスへの書き込み量そのものを抑制し、デバイスの信頼性向上と性能向上を同時に実現できる。一例を挙げれば、10回のデータ書き込みのうち5回のデータが重複していれば、フラッシュデバイスへの書き込み回数は半分に抑制できる。書き込みの回数が減少すれば、デバイスへの書き込み分の処理時間も短縮できるので、処理全体を高速化できる。
2つ目は圧縮機能だ。ご存じの通り、保存するデータを圧縮してデータ量を抑制する技術である。単純にデータ量が減少するため、フラッシュデバイスへの書き込み量も減少する。
製品によっては、重複排除や圧縮処理のタイミングが異なり、書き込み前に処理するものをインライン処理、書き込み後に処理するものをポスト処理と呼ぶ。書き込み量の削減が重要なフラッシュデバイスは、インライン処理との相性が良いといえる。
今回はフラッシュデバイスの特徴的な動作と、それを有効活用する機能について解説した。次回はフラッシュデバイスの実装方式とそれぞれの特徴、選定ポイントについて紹介する。
CTCから:ストレージ勉強会のお知らせ
CTCでは、読者の皆さんをはじめ、情報システム担当者およびインフラエンジニアを対象に、ストレージ技術に関する勉強会を開催します。記事での不明点やストレージに関する疑問点、製品選定のポイントなどをCTCのエバンジェリストに質問することができます。また参加者同士の交流の場としてもご利用いただけます。
詳細:詳細、お申し込みはこちら
※本企画は、CTCの商品の販売促進を目的にしたものではございません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品選定前に読んでおきたい基礎技術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
市場調査・トレンド
[コパード株式会社] 約9割が負担を実感 Salesforceのテスト業務に関する実態調査で見えた課題とは -
市場調査・トレンド
[コパード株式会社] 「Salesforce」開発・運用におけるAI活用実態調査レポート -
事例
[テクバン株式会社] 1画面でITサービスデスク業務が完結 太陽ホールディングスに学ぶデバイス管理 -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] ライセンス無料 Drupalベースの「多言語ECサイト開発用パッケージ」の実力は? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] 日本発グローバル企業用Drupal「Risley(リズリー)」の実力とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
4
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
5
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
「レガシーシステム・老朽化システムの運用課題と刷新」に関するアンケート
-
8
「業務改善とツール活用」に関するアンケート
-
9
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
10
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の運用管理と統制機能を徹底比較
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
3
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
10
生成AIの活用を阻む「5つの壁」とは? AIネイティブ組織へ変革を遂げる方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー