きれいごとだけでは選ばれない
「成功事例資料」は逆効果? 購買担当者の8割が資料検索で失望するとき
AIサービスの普及によって、一般的な知識や製品情報の価値が急落している。従来の成功事例ばかりを並べた企業資料は、むしろ購買担当者の検討を妨げる恐れがある。選定の土台に乗るコンテンツとは何か。
AI技術の発展と普及によって、ビジネスでの情報収集のプロセスは大きく変化している。マーケティング企業Bizibl Technologiesと、リサーチマーケティングサービス「リサピー」を提供するIDEATECHは、法人購入での情報活用に関する調査を共同で実施した。その結果によると、AIを利用して法人購買のための情報収集を行った担当者のうち、8割以上が「過去に読んだことのある説明が中心の資料は読む価値が下がった」と感じている。
AIサービスを活用すれば、一般的な知識や既知の情報を短時間で整理できるようになった。それに伴い、企業が発信するコンテンツには、単なる製品情報の網羅ではなく、そこでしか得られない具体的な「経緯」や「制約」といった独自の情報が強く求められている。
では、AIによる初期調査を終えた購買担当者は、その後に何を追加で確認して、最終的なシステム選定の段階で企業コンテンツの何を見極めようとしているのか。
AI検索後も9割超が追加の裏付け調査を実施
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AI検索との付き合い方
本調査は2026年9月9日から9月14日にかけて実施された。直近6カ月以内に勤務先で利用する製品やサービスの導入、乗り換え、契約更新の検討に関与し、その過程で自らAIサービスを利用して情報を収集した会社員および経営者211人が対象だ。
AIサービスによる要約や回答の提示は、法人購買での情報収集の入り口に過ぎない。対象案件に関して、AIサービスの回答や要約を読んだ後に取った行動を尋ねた設問では、「追加の確認はしていない」という回答はわずか1.9%にとどまり、98.1%が何らかの追加行動を起こした。
具体的な行動としては、「AIに追加の質問をした」が45.0%で最多となった。次いで「AIが出典として示したページや元資料を開いた」が36.0%、「提供企業の公式サイトや公開資料を確認した」が32.7%と続く。AIの出力をうのみにせず、情報源や公式発表を確認するプロセスが購買活動に組み込まれている。
AIサービスで一通り情報を調べた時点で、購買を判断するために追加で確かめる必要性を最も感じた内容としては、「初期費用や運用費用を含む総額はいくらか」と「現在の提供条件や仕様に合う情報か」が共に18.0%で並んだ。「説明や数値の根拠が確かか」も17.1%を集めた。
上司や関係部署への説明のために情報を集めた際、十分に集められず検討の妨げになった情報の第1位は「初期費用から運用まで含めた総費用の材料」(21.3%)であった。続いて「導入した場合に自社で見込める効果の根拠」(16.1%)や「導入に必要な人員・作業量を見積もる材料」(15.2%)が挙がった。自社の個別の状況に合わせた詳細なコスト算出や運用体制の見積もりは、汎用的なAIの検索結果だけでは満たしきれない領域であることが分かる。
求められるのは独自の解釈
企業が発信する記事や資料の評価基準も、AIサービスの普及に伴って明確に変わりつつある。2024~2025年ごろと比べて「他の記事・資料で読んだことのある説明が中心の記事・資料」を時間をかけて読む価値が下がったと思うかという問いには、「非常にそう思う」(27.0%)と「ややそう思う」(55.0%)を合わせ、82.0%が価値の低下を実感している。
その理由として最も多く挙げられたのが「AIの回答や要約で必要な内容が得られるから」(32.4%)だ。一方で、「根拠が示されず、確かめようがないことが多いから」(29.5%)、「自社の個別の条件に合った情報を優先しているから」(28.9%)といった理由も続く。一般的な情報整理の価値が下がる半面、検証可能で自社に適応できる情報の価値が高まっている。
対象案件で読んだ企業の記事・資料のうち、購買判断に最も役立ったものについて尋ねた結果では、「製品の機能・仕様・料金・契約条件」(33.6%)という基本情報に続き、「導入前後の成果を数値で示した顧客事例」(33.2%)、「複数の事例やデータから導いた見方・解釈」(32.7%)が高い割合を占めた。
その記事や資料が役立った理由としては、「情報が整理され、調べる時間を短くできたから」(16.4%)に次いで、「知っていた事実でも、別の見方や解釈を得られたから」(14.9%)、「候補を比べる判断基準を持てたから」(12.9%)が選ばれた。AIサービスが提示する一般的な知識を超えた、提供企業独自の視点や深い洞察が担当者の判断を後押ししている。
成功体験だけでなく「制約や例外」が信頼を担保する
購買の最終的な意思決定で、担当者は情報のリアリティーと透明性を強く求めている。成果の数値が示されていなくても、担当者の作業や判断の経緯が具体的に書かれた記事と資料について、85.3%が「購買を判断する材料になる」と回答した。結果としての数値以上に、プロセスにおける具体的な事象がリアリティーをもたらし、選定の参考になっている。
企業が公開するデータや事例を購買判断の根拠として使うかどうかを決める際、特に重視する条件の第1位は「良い結果だけでなく、例外や制約も示されていること」(36.0%)であった。「元の資料や記録の出どころをたどれること」(28.4%)、「自社と似た条件の対象を扱っていること」(27.0%)、「誰を、いつ、どのように調べたかが分かること」(25.6%)といった項目も上位に並んだ。
自由回答でも、「記事を書いた方の専門性だけでなく、業界での地位や人間性を考える」「特定のバイアスに左右されていないか不安がある」「エビデンスが分かりにくい」といった、情報の発信元や客観性を厳しく問う声が寄せられた。
AIサービスで一般的な情報を瞬時にまとめられる現代、購買担当者は単なる自社製品の成功事例のアピールを求めていない。自社が直面した課題、その解決過程での判断、うまくいかなかった条件や運用上の制約を含めて、客観的で検証可能な一次情報の提供が、購買担当者の信頼を獲得する要件だ。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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