現場と経営の“データ乖離”を防ぐ
毎日2時間の“無駄”を生む「紙とExcel」管理 田中精密工業はどう脱却したのか
現場でまん延する「紙とExcel」によるデータ管理は、転記ミスや多大な手作業を招く。田中精密工業はこの問題に直面し、日々の業務に忙殺されていた。多重入力の連鎖を断ち切るために講じた方策とは。
自動車やオートバイの精密部品を開発・製造する田中精密工業は、製造実績や工数データが紙や「Microsoft Excel」の帳票に分散し、日々の実績入力に約2時間を要する状態に陥っていた。複数人が同じデータを手入力するため転記ミスも多く、データの精度と収集の遅延が大きな課題だった。正確な実際原価や採算状況をタイムリーに把握できず、改善活動や投資判断に必要なデータ基盤が欠如していた。
この課題に対して、田中精密工業はコベルコシステムが提供するMES(製造実行システム)「実績班長」を導入した。2026年3月から一部工場で本格稼働を開始し、ラベル発行と同時に実績が自動登録される仕組みを構築する。結果として、毎日約2時間の手入力工数を削減するとともに、転記ミスを解消した。
紙ベースの管理体制から脱却して、製造現場から経営層までをつなぐデータ基盤をどのように確立したのか。
転記ミスと連携不足を生む「紙と手入力」からの脱却
田中精密工業の製造現場には、現品移動票やロット管理カード、作業指示書といった多様な帳票が存在しており、作業者がそれぞれに手で入力していた。こうした多重入力の常態化は、数字の入力間違いといったヒューマンエラーを誘発するだけではなく、入力作業そのものに多大な工数を要する要因になっていた。
製造現場で管理している生産計画の実績と、基幹システムが保有する実績情報との間にデータの差異が生じて、システム全体の信頼性を損なう事態を招いていた。製品ごとの実際原価や採算状況を迅速に把握できず、経営層から求められる正確な原価管理や工数把握に対処できない状況が続いていた。将来的には生産を統括するERP(統合基幹業務ソフトウェア)の刷新も視野に入っており、まずは現場での実績データを正確かつ標準化された形式で蓄積する仕組みが必要だった。
自動車産業で内燃機関の電動化が進む中、田中精密工業は電装部品などの新規事業領域への参入を進めている。不確実性の高い新規事業で、現場の状況をリアルタイムに把握し迅速な改善につなげるためにも、情報収集の自動化と一元化が不可欠だった。
実態に即した部品管理と直感的な操作性の両立
システムの選定では、現場の作業者が迷わず操作できるユーザーインタフェースが要件になった。複数のシステムを比較検討した結果、平仮名での表示が可能で、外国人技能実習生でも稼働後1カ月程度で習熟できる操作性を備えた実績班長を採用した。
導入プロセスでは、特有の部品管理手法への適合も課題だった。田中精密工業では取引先の要請などによって、同一素材に複数の品番を割り当てるケースがある。従来の設計部品表では1つの品番しかひも付けできず、実体に基づく在庫の消費管理が困難だった。この課題に対し、複数品番をグループ化して扱う「グルーピングマスター」の仕組みを適用して、実態に即した在庫管理体制を構築した。
当初は予算制約から部分的な機能導入を検討したものの、業務プロセスの標準化やロットトレースの自動化、データ基盤整理といった全体最適を見据え、広範な機能の導入を決断した。
データ収集の自動化による工数削減と品質管理の高度化
2026年3月に呉羽工場でシステムが本格稼働して以降、製造現場のデータ収集プロセスは一変した。製品ラベルの発行と同時に生産数の実績がシステムへ即時登録されるようになり、それまで毎日2時間ほどかかっていた手作業による実績入力が不要になった。手作業に起因する入力ミスの解消、データ訂正や確認作業の負担軽減といった効果もある。
品質管理の面でも、トレーサビリティーが飛躍的に向上した。ロット情報がシステム内で検索できるようになったことで、不具合発生時の迅速な原因特定や影響範囲の把握が可能になった。経営視点でも、作業実績や工数データをタイムリーかつ正確に収集できる環境が整い、原価把握やデータに基づく意思決定の土台を確立した。
共通基準の横展開と全体最適への展望
呉羽工場での稼働を通じて確立した共通基準のフォーマットやシステム改修の知見をマニュアル化して、婦中工場への展開が進んでいる。2026年8月末時点で同工場の約3分の1で導入が完了しており、同年12月末には全域への展開が完了する見込みだ。これによって、各工場や部門を横断した共通基準によるデータ収集体制が整う。
田中精密工業は今後、実績班長に蓄積されたデータをBIツールで可視化する方針だ。IoT(モノのインターネット)技術を用いてデータ収集も拡充する。MESを用いた現場の実績収集、BIツールでの分析と可視化、ERPによる経営管理をシームレスに連携させることで、製造現場から経営層までが一貫したデータに基づいて判断を下す、データドリブンな製造体制の構築を進める。
本稿は、コベルコシステムが2026年10月13日に公開したプレスリリース]https://www.kobelcosys.co.jp/news/detail/20261013/)および2026年10月13日に公開した[導入事例を基に作成しました。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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