AIエージェント同士が協力する時代に
AIエージェント普及の鍵となるGoogleの「A2A」とは? 「MCP」との違いは
複数のAIエージェントが連携してタスクを遂行する時代に向けて、Googleはオープンプロトコル「Agent2Agent」(A2A)を発表した。その技術的な要点と、活用例を解説する。
Googleは2025年4月、AIエージェント(AI:人工知能)同士の安全な連携を目的としたオープンプロトコル「Agent2Agent」(A2A)を発表した。2024年11月にはAnthropicがAIエージェントの実用性を高めるためのオープンプロトコル「Model Context Protocol」(MCP)を発表しているが、これとは何が違うのか。A2Aの活用例を基に、その技術的な位置付けと活用の可能性を探る。
Googleの「A2A」がAIエージェント普及の鍵に?
A2Aは、Googleが社内で培ってきた大規模なエージェントシステムの運用経験を基に設計されている。このプロトコルの目的は、複数のAIエージェントを組み合わせる際に生じるスケーラビリティ(拡張性)や相互運用性の課題に対処することにある。
A2Aに準拠して開発されたAIエージェントは、同じプロトコルを採用する他のAIエージェントと容易に接続および連携できるようになる。Googleは同社の公式ブログで、「標準化された仕組みにより、異なるシステムやクラウド環境を横断してAIエージェントを統合的に管理できる」と説明している。
各AIエージェントが自身の機能や特性を「Agent Card」と呼ばれるメタ情報で公開する仕組みがA2Aでは採用されている。Agent Cardは機械可読性(コンピュータがそのまま理解し、処理できる形式)のあるJSON形式で記述され、他のAIエージェントがそれを参照することで、タスクに応じて最適な連携先を特定できる。AIエージェント同士がこのプロトコルを通じて、コンテキスト情報、返信、生成物、ユーザーからの指示を相互に送信してやりとりできる。
採用業務や顧客対応にも活用
GoogleはA2Aの活用例として、ソフトウェアエンジニア採用プロセスの効率化を挙げている。採用担当者は、求人情報や勤務地、必要なスキルなどの条件を基に、候補者の検索をAIエージェントに指示する。指示を受けたAIエージェントは、他の専門的なAIエージェントと連携して適切な候補者をリストアップし、担当者に提示。担当者が面接の調整を指示すれば、それもAIエージェントが対処する。
A2Aへの対応を発表したERP(統合業務システム)ベンダーSAPは、A2Aを活用した顧客応対の例を紹介している。顧客からの問い合わせメールがGoogleのメールサービス「Gmail」に届いた際、コンタクトセンターの担当者はツールを切り替えることなく、Gmailの画面から直接SAPのAIエージェント「Joule」を呼び出すことができるという。
SAPの活用例では、Jouleが「AIエージェントオーケストレーター」として動作し、問い合わせに基づくトラブル解決プロセスを開始する。JouleはGoogleの別のAIエージェントと連携し、該当する取引データが格納されたGoogleのデータウェアハウス(DWH)「BigQuery」に接続する。SAPによると、これらのAIエージェントは問題の検証、インサイト(洞察)の取得、解決策の提示までを自動で実行し、ユーザー側でのシステム切り替え、データ照合、コンテキスト(背景情報)の引き継ぎといった手作業は不要になるという。
A2Aへの対応を表明している企業には、コンサルティング企業のAccenture、Boston Consulting Group(BCG)、PricewaterhouseCoopers(PwC)、KPMG、Deloitte、McKinsey&Company、Tata Consultancy Services(TCS)、Cognizant Technology Solutions、ITベンダーのHCL Technologies、Infosys、Wipro、調査会社Capgemini Research Instituteなどが名を連ねている。これらの企業がA2Aを採用することで、業務自動化やAI連携のエコシステムがより広範囲に広がることが期待される。
A2Aの技術的意義と将来性
Googleのクラウド部門「Google Cloud」でAI、機械学習、生成AI担当ディレクターを務めるミク・ジャー氏は次のように説明する。「AIエージェントの進化に伴い、テキスト、音声、動画、画像といった異なる形式のデータをシームレスに扱えることが非常に重要になる」。一方で、こうした多様なデータ形式を横断的に処理することは、AIエージェントの相互運用性にとって大きな課題でもある。
この課題に対処するため、A2Aのようなオープンプロトコルが不可欠になる。A2Aは、異なるAIエージェントが多様な形式のデータをやりとりし、連携するための基盤を提供する。「マルチモーダル性(異なる形式のデータを扱う性質)は、もはや単なる機能ではなく、AIエージェント連携を支える根幹となる要件だ」。そうジャー氏は話す。
A2Aへの対応を表明しているソフトウェアベンダーとして、Atlassian、Box、MongoDB、Neo4j、New Relic、Salesforce、ServiceNowなどが挙げられる。MicrosoftのAIアシスタントツール「Copilot」は、2025年5月時点でA2Aに対応していないようだ。
MicrosoftとGoogleの両社は、MCPを採用している。MCPは、AIエージェントを外部のデータソースに接続し、必要なツールと文脈情報を提供する仕組みだ。A2AとMCPは補完的な関係にあると言える。
Microsoftは2025年3月、AIエージェント設計ツール「Microsoft Copilot Studio」(以下、Copilot Studio)とMCPの統合を発表した。Copilot Studioのユーザーは既存のナレッジサーバ(知識やノウハウを蓄積したデータベース)やAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)と接続できるようになり、より高度なAIエージェント構築が可能になるという。
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
米国Informa TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
5
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
6
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
7
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
8
被害額は過去最高額 それでも「サイバー犯罪者が捕まらない」3つの理由
-
9
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
10
「IT運用・情報システム業務」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー