無限労働日の功罪【後編】
「テレワークのせい」だけじゃない? 深夜残業が“正当化”される根深い問題
「午前9時~午後5時」の平均的な勤務時間にとらわれず、早朝から深夜まで働く「無限労働日」という考え方が広がっている。状況を悪化させた要因の一つはテレワークの普及だが、それ以外にも根深い問題がある。
従来の「午前9時~午後5時」という平均的な勤務時間にとらわれず、早朝から深夜まで働く「無限労働日」とも呼ぶべき状況が広がりつつある。従業員が世界中のどこにいてもメールやチャットを通じて連絡を取ることが可能になり、労働時間は拡大してきた。
このことは柔軟な働き方をもたらした一方、従来の労働時間とプライベート時間の境界線を崩してしまった。もはや従業員にとって、オフィスを離れることは勤務時間外であることを意味していない。いつでも仕事ができる状態であれば、労働時間は際限がなくなり、従業員が燃え尽きてしまう可能性がある。こうした状況を悪化させた要因の一つはテレワークの普及だ。しかし要因はそれだけではない。
状況を悪化させた“テレワークだけじゃない”要因
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連載:無限労働日の功罪
「仕事中毒」の実態
オフィスに出勤、退社しなければ、午前9時~午後5時の勤務時間を守る必要性はなくなる。毎日同じ業務量をこなせれば、いつ働くかはそれほど重要ではないためだ。
特に新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックが発生し、従業員が仕事と育児の両立に追われていた時期、この傾向は顕著だった。必要に迫られた従業員は、他の従業員が起床する前であっても、自身の子どもが就寝した後でも、時間を見つけて仕事をこなさなければならなかった。
パンデミックが終息して以来、多くの企業がオフィスへの回帰を促しているが、依然としてテレワークの名残が見られる。
無限労働日を生み出した要因は、こうした技術的な変化だけではない。文化的な考え方、仕事への不安も影響している。
長時間労働と生産性を同一視する職場文化の犠牲になる従業員は多い。「長時間労働と一生懸命働くことは混同されてきた」と、コーチングを手掛ける企業Cadence Leadership+Communicationのラーニング&デベロップメント担当バイスプレジデント、ミシェル・ラクシーズ氏は述べる。ラクシーズ氏は、たとえ企業の方針がそうでなくても、長時間労働をしている同僚や上司に囲まれている従業員は、同調圧力が高まる可能性があると説明する。
加えて景気後退や大量解雇などは、従業員に自らの価値を示すようにプレッシャーをかける。一部の専門家は、従業員が実際の生産性への影響は軽微であっても、長時間労働をすることで忠誠心や自身の価値を証明する必要性を感じていると指摘する。
また、企業は「少ないリソースでより多くの成果を上げる」という文化を育む。不況時には、多くの企業が採用を控え、従業員により多くの業務を任せる。その結果、対応するために残業が必要になることもある。
社会全体が過重労働を美化しすぎているという向きもある。「テレワークの急増により、多くの人々が“無限”に仕事をできるようになったが、根本的な原因は別のところにある。常時接続の文化やハッスルカルチャーの美化、仕事とプライベートの境界線の欠如がそれだ」と、会計・簿記関連のサービスを提供するBooksTimeのCEO、ジェシー・ギルデスゲーム氏は述べる。「こうした要因はテレワークが普及する以前から存在し、テクノロジーの進化によって抵抗なく拡大した」と同氏は指摘する。
企業が講じるべき対策
無限労働日という考え方は、従業員によってはより柔軟な働き方を可能にし、仕事とプライベートを両立させる機会を与える。全体的な労働時間は増えないかもしれないが、人事制度や労働環境が整っていれば、生産性は同等に保たれ、より良いワークライフバランスを実現できる。
しかし、たとえ一日中働いていたとしても、夕食後に再びオンラインになることが期待されている場合、従業員がストレスを抱え、最終的には燃え尽き症候群につながる可能性がある。企業が講じるべき対策には、以下の例がある。
- 上司が適切な労働時間の模範を示す。
- 緊急ではないメールは、通常の勤務時間帯に閲覧し、返信する。
- 従業員が希望する勤務時間を選択し、チームに共有できるようにする。
- 従業員と上司の間で作業負荷について透明性のある会話をする。
- 社内で「つながらない権利」に関する方針の策定を検討する。
従来の勤務時間に適合するかどうかにかかわらず、全ての従業員にとって持続可能な勤務時間の体制を設けることが重要だ。
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