ソフトバンク、NTTデータに続く「OpenAI日本勢」の拡大
日立がOpenAIと挑む「レガシー刷新」 両社の狙いは?
日立製作所がOpenAIとの提携を拡大し、国内1万5000もの基幹システムの刷新とサイバー防御の自動化に乗り出す。ソフトバンクやNTTデータに続くこの巨大提携が日本企業のDXとガバナンスに与える影響は?
日立製作所は2026年6月17日、米OpenAIとの連携を本格化させると発表した。大手企業が直面する2つの切実な技術課題、すなわち「レガシーインフラの老朽化」と「差し迫ったサイバー脅威」の解決を目指す。
両社の「フォワードデプロイ型エンジニア(FDE)」チームは、OpenAIのAIエージェント「Codex」を活用。ITモダナイゼーションの一環として、ミッションクリティカルなレガシーシステムのソースコードを解析する。ハイレベルな仕様の逆コンパイルから新システムの移行テストまでを担う。当初は金融機関を対象とし、その後幅広い業界へと展開する計画だ。
日立「持続的な成長に向けた経営上の最優先事項」
「レガシー刷新」に関連する編集部お薦め記事
同社の徳永俊昭代表執行役 執行役社長兼CEO(最高経営責任者)は、レガシーシステムの刷新とセキュリティ強化を「持続的な成長に向けた経営上の最優先事項」と位置付けている。同社は日本国内だけで、社会インフラを支える1万5000ものミッションクリティカルなシステムを運用中だ。
また、日立はOpenAIの「日本サイバー・アクションプラン」の一部である「Trusted Access for Cyber(TAC)」プログラムを通じて、防御目的のAIモデルも利用する。OpenAIの「Daybreak」イニシアチブの下、日立のサイバー・センター・オブ・エクセレンス(Cyber CoE)はこれらのモデルを活用し脆弱性を特定する。適切なガードレールやガバナンス、人間の監督の下で、修復テストやシステムの検証を行う考えだ。
今回の提携拡大は、2025年10月に締結された戦略的パートナーシップに関する基本合意書(MOU)に基づいている。この基本合意書はグローバルAIデータセンター拡大を軸とするもので、両社はこれ以降、HMAXをはじめとする日立のデータ分析・IoTプラットフォーム「Lumada」強化に向けてOpenAIのAI技術活用を検討してきた。
モダナイゼーションとサイバーセキュリティの両取り組みから得られた知見は、次世代社会インフラ向けAIソリューション「HMAX」の改善に生かされる。製品強化を主導するのは、2026年5月にAI協業エコシステムの中核となるグローバル組織として始動した「Frontier AI Deployment Center」だ。
OpenAI Japanの長崎忠雄社長は、日立との提携について「日本の重要産業や社会インフラで、AIのより安全で実用的な活用を可能にする重要な一歩だ」と説明。さらに次のように付け加えた。
「この取り組みを通じて、企業が安心してAIを活用し、新たな価値を創造できる環境作りを支援する。AIが個人や組織の可能性を広げ、未来の社会を支える実用的な力となるよう尽力したい」(長崎氏)
OpenAIの日本の浸透
今回の提携は、OpenAIが日本の企業・政府部門への浸透を加速させる最新の動きだ。
2025年11月、OpenAIはソフトバンクと合弁会社「SB OAI Japan」を設立。2026年6月16日には、この合弁会社の技術を用いたAIパッチ適用サービス「Patching as a Service」を発表。交通、電力、空港といった重要インフラを運営する国内大手3000社をターゲットにしている。
エンタープライズIT分野では、NTTデータがOpenAIサービスの国内初のディストリビューターとなった。2025年4月に提携し、日本企業向けに「ChatGPT Enterprise」を提供している。NTTデータは、2027年度末までにOpenAI関連事業で累計1000億円の売上目標を掲げている。
OpenAIは日本の行政インフラへの食い込みも図っている。2025年10月にOpenAIとデジタル庁は提携を発表。デジタル庁が内製する職員向け生成AI環境『源内(ゲンナイ)』に、OpenAIのLLMを新たに追加する方針を発表した。複数モデルから選べる同環境にOpenAIが加わった。
サイバーセキュリティ分野では、OpenAIは金融規制当局や銀行に直接モデルを提案している。片山さつき財務相は2026年5月、一部の金融機関がTACプログラムを通じて「GPT-5.5-Cyber」モデルへのアクセスが可能になったことを認めた。金融セクターを狙ったサイバー攻撃の増加を抑制することが狙いだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略 -
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「サプライチェーン最適化」実践ガイド:効果的な意思決定を実現する秘訣とは? -
製品資料
[株式会社リンプレス] 非デジタル/IT人材を「自走するDX推進者」に変えるための育成ロードマップ -
市場調査・トレンド
[ワンアイルコンサルティング株式会社] AI時代の組織設計:「判断と責任」を人に残すための2つの原則とは? -
技術文書・技術解説
[ワンアイルコンサルティング株式会社] システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「完璧な設計」なのに3000万円溶けた AWSの失敗事例から学ぶ3つの教訓
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
4
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
5
「AIバブル」は崩壊するのか? 熱狂の後に来る“尻拭い”と4つの防衛策
-
6
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
7
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
8
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
9
守るべきは「開発者のフロー状態」 AIによる生産性改善の6施策
-
10
パナソニックが国内製造26拠点のERPを「SAP S/4HANA」に統一 アドオン7割削減
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
2
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
3
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
6
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
7
「人員を増やす」という選択肢はない 情シスが負の連鎖から抜け出すには?
-
8
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
9
「問題が深刻化しやすいプロジェクト管理」から脱却する方法とは?
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー