セールスフォース・ジャパンは、物流機器を手掛けるジャロックが「Agentforce」を営業活動に導入し、受注率15ポイント向上、報告書作成時間を80%削減したと発表した。
AIエージェントを導入しても、参照するデータが不足していたり、従業員が商談情報を入力しなかったりすれば、十分な効果は得にくい。物流機器の製造、販売、施工を手掛けるジャロックは、長年蓄積したCRM(顧客関係管理)データをAIエージェントに活用し、営業活動の効率化と標準化を進めた。
セールスフォース・ジャパンは2026年7月28日、従業員数約50人のジャロックがAIエージェントプラットフォーム「Agentforce」を営業活動に導入し、受注率の15ポイント向上、報告書作成時間の80%削減、商談化率の5%向上といった成果を上げたと発表した。
AIエージェントを営業活動に定着させるまでに、ジャロックはどのような取り組みを進めたのか。
ジャロックが長年抱えていた経営課題は、営業情報の属人化だ。ベテランの営業担当者が退職するたびに、長年培ったノウハウや顧客情報が失われていた。担当者によって受注率にも大きな差があり、成果を上げている担当者の営業手法を他の担当者が再現することも難しかった。
同社は2018年、SalesforceのSFA(営業支援)/CRM(顧客管理)サービス「Sales Cloud」を導入した。2025年10月に「Agentforce Sales」へリブランドされた製品である。ジャロックはSales Cloudの導入を通じて、顧客情報や商談情報をSalesforceに集約し、「情報を個人から会社の資産へ」と転換するための基盤を整備した。
その結果、情報共有の問題はある程度改善した。さらに、蓄積したデータを営業成果に生かすことが次の課題になった。担当者が必要な情報を得るために社内で何度も確認を繰り返す非効率や、営業担当者ごとの成果格差は残っていたためだ。
2024年から2025年にかけて生成AIの性能が向上したことを受け、ジャロックはSalesforceに蓄積してきたCRMデータをAIで活用できると判断した。「情報の共有」から「AIとの共生」へと経営方針を発展させ、2025年10月にAgentforceの導入を決めた。
Agentforceが参照するのは、インターネット上の一般的な情報だけではない。ジャロックが長年蓄積してきた顧客データや業務プロセス、営業上の判断基準を、AIエージェントが回答や提案を生成するための情報源として利用する。
同社は2026年1月からAgentforceの関連機能を順次実装した。2026年7月時点では、主に4つの用途でAIエージェントを活用している。
1つ目は、営業活動の自動記録と要約である。AIが営業担当者の通話や商談での会話を記録して要約し、商談記録や日報に反映する。Googleカレンダーとも連携し、担当者が営業活動を手作業で記録する負担を減らした。
2つ目は、商談のスコアリングである。AIが各商談の活動内容を評価し、商談を進める上で不足している点を検出する。他の営業担当者の成功事例を参考にしながら、次に取るべき行動も支援する。
3つ目は、社内向けAIエージェントである。Salesforce上の社内ナレッジを基に担当者からの質問に回答し、社内への確認や情報検索にかかる時間を短縮する。
4つ目は、顧客向けAIエージェントである。ジャロックの公式Webサイトで顧客からの問い合わせにリアルタイムで対応する。
Agentforceの導入後、ジャロックでは報告書の作成時間を80%減少させることができた。商談化率は5%向上した。受注率は2年間で15ポイント向上した。
ただし、これらの成果はAgentforceを導入したことだけで実現したわけではない。ジャロックの代表取締役社長 斉藤力丸氏は受注率の向上について、Agentforceの支援と、全社員が日々情報を蓄積してきた取り組みの両方による成果だと説明している。
AIエージェントが営業担当者に適切な提案をするには、商談内容や顧客とのやりとりがCRMに継続して記録されていなければならない。ジャロックでは、社長自らが毎朝、全社員の日報にコメントすることで、日報や商談情報を入力する習慣の定着を後押しした。
こうした経営トップの関与によって、AIを使った日報管理や商談管理が全社に浸透した。営業担当者は報告書の作成や社内確認に費やす時間を減らし、顧客との対話や関係構築に集中できるようになった。
ジャロックは今後、Agentforceの利用範囲を営業部門以外にも広げる方針だ。全社員の活動をビジネスチャットツール「Slack」に集約し、社内の情報や業務状況を俯瞰する「AI管理職」の構築を目指す。
AI管理職は、社内情報を基に従業員からの質問に答えるだけでなく、業務の進捗や課題を把握し、必要な行動を促す役割を想定している。同社は、こうしたAIを「AI従業員」と位置付け、Agentforceへの追加投資を検討している。
ジャロックの事例から分かるのは、AIエージェントの成果を左右するのはAIモデルの性能だけではないということだ。顧客情報や商談履歴を継続して蓄積する仕組みと、従業員に入力を促す経営層の関与があって初めて、AIは営業ノウハウを再利用できる「活きた知識」として機能する。
本稿は、セールスフォース・ジャパンが2026年7月28日に公開したプレスリリースおよびジャロック、物流機器の営業活動を「Agentforce」により変革を基に作成しました。
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