ANAが専用回線から移行した「NaaS」の全貌 ネットワーク準備が数カ月から数週間にAWS、Azure、Google Cloud接続を一元化

全日本空輸(ANA)は、次世代の旅客サービスを支えるネットワーク基盤にエクイニクスの「Equinix Fabric」を採用したと発表した。基盤移行の経緯を紹介する。

2026年08月13日 05時00分 公開
[CaseHub.NewsTechTargetジャパン]

 全日本空輸(ANA)は、次世代の旅客サービスを支えるネットワーク基盤として、エクイニクスの「Equinix Fabric」を採用した。2026年8月6日、エクイニクスが発表した。集中管理型のクラウドネットワークハブを構築したことで、アプリケーションの開発やテストに必要なリソースを利用可能にするためのネットワーク構築期間を約80%短縮した。5年間の総保有コスト(TCO)についても30%削減を目指す。同社が抱えていた課題や選択までの過程は。

「数カ月」を「数週間」に 移行の全体像

 ANAは約280機の航空機を保有し、200以上の路線を運航している。予約や搭乗手続き、顧客とのコミュニケーション、運航管理など、旅客サービスを支えるシステムには高い可用性と耐障害性が求められる。

 一方、事業の拡大に加えてハイブリッドクラウドやマルチクラウドの利用が広がり、ネットワークの構成は複雑になっていた。

 事業の拡大やマルチクラウド化に伴ってネットワークが複雑になり、新しいシステムを追加するたびに回線の構築や管理に時間とコストがかかる――。こうした課題に直面したANAは、従来の専用回線を中心としたネットワークを見直し、「Network-as-a-Service」(NaaS)を活用した基盤へ移行した。

システムごとの専用回線が拡張の足かせに

 ANAが従来採用していたのは、個々のシステムに専用回線を用意するネットワークアーキテクチャだった。システムの数が少ない段階では管理できても、接続先や利用するクラウドが増えるにつれて、個別の回線や設備を追加する必要が生じる。

 その結果、ネットワークを拡張するほど構成が複雑になり、コストも増加する。新たなアプリケーションを開発、検証する際にも、必要なネットワーク環境を用意するまで時間がかかっていた。

 世界で流通するデータ量が今後10倍に増えると見込まれる中、ANAにとって従来型のネットワークをそのまま拡張し続けることは、将来的な成長やデジタルサービスの迅速な展開を妨げる要因になりかねなかった。

 そこでANAが選んだのが、ネットワーク機能をサービスとして利用するNaaSへの移行だった。

 ANAデジタル変革室デジタルガバナンス部ITインフラチームのマネージャー、中里潤氏は、急速な事業拡大に伴って従来以上の柔軟性がネットワークに必要になったとして、既存環境を拡張し続けるのではなく、NaaSを導入することが「唯一の現実的な選択肢」だったと説明している。

AWS、Azure、Google Cloudへの接続を集約

 ANAはEquinix Fabricを基盤として、集中管理型のクラウドネットワークハブを構築した。

 Equinix Fabricは、ネットワーク接続をソフトウェアで設定、管理できるインターコネクションプラットフォームだ。ANAはこれを利用することで、新たな物理回線をその都度敷設することなく、「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」「Google Cloud」などの主要なクラウドサービスへオンデマンドで接続できる環境を整えた。

 個別のシステムごとに回線や設備を用意する構成から、接続をクラウドネットワークハブに集約する構成へ切り替えた格好だ。

 この仕組みでは、プライベート接続に加え、ネットワークポリシーを集中管理できる。エクイニクスによると、最新のセキュリティフレームワークとの整合性も確保し、セキュリティやコンプライアンスへの対応を図っているという。

ネットワーク準備を「数カ月」から「数週間」に

 ネットワークの構築方法を変えた効果の1つが、アプリケーション開発やテストに必要な環境を用意するまでの時間の短縮だ。

 従来は必要なネットワーク環境を構築するのに数カ月かかっていたが、新基盤では数週間まで短縮した。エクイニクスは、ネットワーク構築期間として約80%の短縮につながったとしている。

 接続先を追加するたびに物理回線を構築する必要がなくなれば、アプリケーションのテスト開始までの待ち時間を減らしやすくなる。ANAはこうした機動性を、新しいアプリケーションやサービスを早期に展開するための基盤として活用する考えだ。

 クラウド環境同士を接続しやすくすることで、旅客向けサービスの統合やリアルタイムの運航連携にも役立てる。

 さらにANAは、このネットワーク基盤を高度なデータ分析や業務自動化、次世代AIのワークロード処理にも利用する方針だ。

 クラウドの利用範囲が広がるほど、システムごとに専用回線を追加するネットワークは管理が難しくなりやすい。ANAの事例は、ネットワークを個別に「構築する」方式から、必要に応じてサービスとして「利用する」方式へ移すことが、マルチクラウド時代のインフラ刷新の選択肢になることを示している。

(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「ANA、次世代基盤にEquinix Fabric採用 ネットワーク構築期間を8割短縮」(2026年8月10日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

瞬時にM365が乗っ取られる――全社員に周知すべき“新フィッシング”の教訓

瞬時にM365が乗っ取られる――全社員に周知すべき“新フィッシング”の教訓
MFA(多要素認証)を入れたから安心という常識が崩れ去っている。フィッシング集団「Tycoon2FA」が摘発されたが、脅威が完全になくなったというわけではない。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...