教えて経理部長【第7回】
M&Aで他社と統合、会計システムで考えることは?
企業買収や事業統合で問題になる会計システムの統一。どのような形態で事業を統一するかによって経理部門とITシステムの対応は変わる。IT部門はどのように会計システムの統一を進めるべきか。
質問
当社では近年、積極的なM&A戦略を展開していますが、他社からの事業買収の際に、買収した事業にかかわる会計システムの整備を経理部から急に依頼され、対応に苦慮しています。情報システム部として事業買収における会計システムの整備には、どのような点に留意して臨んだらよいでしょうか?
回答 他社から事業を買収して自社の経営に取り込む際、情報システム部では、インフラの整備や販売・購買といった業務系システムの整備などで手いっぱいになる。同様に経理部門では、M&Aにかかわる会計、税務の処理に追われる。結果として、ERPなどの会計システムの整備までなかなか手が回らず、対応が後手になることが多い。事業買収によって決算や開示に支障を来たさないよう情報システム部門として留意すべき事項を挙げてみる。
事業買収の形態と単体会計システム
他社事業を買収する場合、大きく分けて他社を会社ごと買収する場合(下表のA)と、事業譲渡や会社分割により他社の事業の一部を譲り受けるケース(下表のB)の2通りがある。
さらに、それぞれのケースごとに買収した事業を自社の経営に取り込む方法が2つある。買収した事業が自社で営んでいる事業と違うのであれば子会社として存続させ(下表の1)、自社と同じ事業を営んでいるなら合併や事業譲渡で自社に吸収する(下表の2)というのが一般的である。
| 事業買収の形態 | 事業の取り込み方 | |
|---|---|---|
| 1.子会社として存続 | 2.自社へ吸収する | |
| A.会社買収 (単体会計システムあり) |
買収した会社の会計システムを使用 | 自社の会計システムを使用 |
| B.事業譲渡・会社分割 (単体会計システムなし) |
早急に会計システムの整備が必要 | |
買収した事業を子会社として存続させる場合(1のケース)
会社ごと買収するケース(A)であれば、通常はその会社で使用していた単体会計システムがあるので、買収後もそれを継続して使用する。
対して、他社の事業の一部を譲り受けて子会社化する場合(B)、通常その子会社は単体会計システムを持たない。従って事業の譲渡後は、単体会計システムの整備が早急に必要となる。一般的には自社で使用している単体会計システムに会社コードを追加して統合した子会社に使用させることが多い。
いずれの場合も、その会社が連結子会社に該当するなら、連結決算の早期化の観点から相手先マスター、勘定科目などの共通化の実現を視野に入れて、将来的には単体会計システムを整備するとよいだろう。
さらにAのケースで買収当初は既存の会計システムをそのまま使用するにしても、長期的にはBのように自社の会計システムを子会社に使用させて会計システムの共通化を実現することも、連結決算の早期化の観点からは検討すべきであろう。
自社に吸収する場合(2のケース)
Aに該当する場合も、Bに該当する場合も、買収した事業を自社に吸収する(2のケース)ということは、単体会計システムは原則として自社システムを使う。従って買収した事業にかかわる会計伝票を自社の単体会計システムに登録できる仕組みを早急に整備する必要がある。これは販売、購買といった業務系システムの整備や、それらと会計システムとのインタフェースの整備も含めた総合的な対応が必要となる。
そのためAのケースでは、通常はその会社で使用していた単体会計システムがあるので、周辺システムの整備が完了するまでは、買収した会社の既存の会計システムを使用し、そこから出力される試算表と自社の会計システムから出力される試算表を合算して単体財務諸表を作成するといった対応も考えられる。
買収事業の会計システムの整備は時間との勝負
買収が完了するまで、買収先の情報システムに関してはインフラはもちろん、アプリケーションシステムにも手を触れられないのが通例である。そのため買収が完了する前から相手先企業とよく連絡を取り合って、買収後、すぐにシステム整備に入れる体制を構築することが重要である。買収後は時間との勝負となる。これは情報システム部門だけで対応することは難しい。M&Aを統括する部署や経理部とよく協力して、難しい局面を乗り切らなくてはならない。
五島伸二(ごしましんじ)
アドバ・コンサルティング株式会社 代表取締役 公認会計士・ITストラテジスト
監査法人トーマツにて会計監査、IPO支援、マネジメントコンサルティングに従事。トーマツ退所後は多数のシステム開発プロジェクトやERP導入プロジェクトに参画し基幹システム構築を行う。その後、上場会社の経理部長をへて、2010年3月にアドバ・コンサルティング株式会社を設立。それまでの経験を生かし、会計とITの専門家としてシステム開発や業務改善コンサルティングに取り組んでいる。
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