破られにくいパスフレーズ入門【前編】
“複雑なパスワード”より「パスフレーズ」を専門家が勧める理由
サービスを安全に使うために長くて複雑なパスワードは欠かせない。だが、パスワードに長さや複雑さを求めるとさまざまな問題が生じる。そうした中で注目されているパスフレーズとは。
攻撃者は企業ネットワークに侵入するために、「パスワード」を標的にすることがある。パスワードの解読や窃取方法としては、ブルートフォース(総当たり)攻撃やソーシャルエンジニアリング(人をターゲットにパスワードや個人情報を盗み出すだましの手法)、その他ハッキングツールの活用などがある。
パスワードを守るため、セキュリティの専門家は「パスフレーズ」形式のパスワードを使うことを推奨している。パスフレーズとは何か。どのようなメリットがあるのか。従来型のパスワードの問題点も解説する。
なぜ“複雑なパスワード”では駄目なのか
不正アクセスを狙う攻撃者は、パスワードを突破するために複数の手段を用いる。よく使われるのがブルートフォース攻撃だ。ツールが文字の組み合わせを自動生成し、それを使ってログインを試行し、間違っていたら組み合わせを変更して何度も試す攻撃だ。
ブルートフォース攻撃に対抗するため、多くの企業は従業員により複雑なパスワードを作成するよう指示している。要するに、文字数や文字の種類を増やしてパスワードを設定するということだ。
銀行のATMで使う4桁の暗証番号について考えてみよう。0から9までの数字を使用できるとすれば、不正ログインに成功するには最大で1万通りの組み合わせを試す必要がある。だが、同じ4桁の暗証番号でも数字にアルファベットの小文字26種類を組み合わせれば、組み合わせのパターンは36の4乗となり、攻撃者は最大で167万9616通りの暗証番号を試す必要がある。
しかし、パスワードが複雑になるほどユーザーが覚えにくくなるというデメリットもある。もし特殊文字、数字、大文字と小文字を含むパスワードを無作為に組み合わせた場合、覚えることはほぼ不可能だ。
そのため、ユーザーは覚えられないような複雑なパスワードを避け、覚えやすいパスワードを設定する傾向にある。例えば、パスワードに特殊文字と大文字が必要な場合、大半のユーザーは最初の文字を大文字にし、最後の文字を感嘆符「!」にする傾向にある。攻撃者はこういった知識を利用して、試行回数を大幅に削減できる。
パスフレーズとは
パスフレーズは、複数のランダムな単語やフレーズ(言い回し)を組み合わせて作成する。これにより、ユーザーは長くて破られにくいセキュアな認証情報を作成できる。
例えば「PurpleElephantSingsAtDawn」(紫色のゾウは夜明けに歌う)といったパスフレーズなら、一般的なパスワードより長くしやすく、関連性のないランダムな複数の単語で構成されているので解読が非常に困難だ。それでいて、作成者にとって記憶しやすい。
パスフレーズを作るこつは、できるだけ長くすることだ。アルファベットの小文字だけを利用しても、16文字であれば攻撃者は430垓(がい)通り以上の組み合わせを試行する必要があり、ブルートフォース攻撃で突破することは現実的でなくなる。
パスフレーズのメリットとデメリット
あらゆる方法と同様、パスフレーズにもメリットとデメリットがある。主なメリットは次の通り。
- セキュリティが強固
- 長さと複雑さを兼ね備え、ブルートフォース攻撃に対する耐性が高い。
- 記憶しやすい
- 単語やフレーズで構成されているため、特殊文字を含む複雑なパスワードよりも覚えやすい。
- 汎用(はんよう)性が高い
- メールや銀行の暗証番号、ソーシャルメディアのアカウントなど、複数のデバイスやサービスで設定できる。
主なデメリットは次の通り。
- 利用できないシステムがある
- 一部のシステムには文字数の制限があり、パスフレーズが作成できない場合がある。
- 互換性が低い
- 例えば、単語間にスペース(空白文字)を挟むことが自然だと考えるユーザーがいるが、スペースを利用できるシステムと利用できないシステムがある。
- 面倒に感じる
- ユーザーは覚えやすい短いフレーズにする傾向がある。
次回は強力なパスフレーズを作成する方法を紹介する。
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略 -
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「サプライチェーン最適化」実践ガイド:効果的な意思決定を実現する秘訣とは? -
製品資料
[株式会社リンプレス] 非デジタル/IT人材を「自走するDX推進者」に変えるための育成ロードマップ -
市場調査・トレンド
[ワンアイルコンサルティング株式会社] AI時代の組織設計:「判断と責任」を人に残すための2つの原則とは? -
技術文書・技術解説
[ワンアイルコンサルティング株式会社] システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
2
ソフトウェア開発生産性向上に取り組む企業は4割 調査で学ぶ「停滞」の正体
-
3
「完璧な設計」なのに3000万円溶けた AWSの失敗事例から学ぶ3つの教訓
-
4
クラウド資格コレクターは評価されない? 年収1000万を分ける“OSの理解度”
-
5
無料の「Apple Business」で十分? 情シスが陥りがちなポイント
-
6
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
7
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
8
なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
-
9
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
10
脱クラウドの受け皿か NVIDIA×国内連合にみる「AIコスト削減」の現実味
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
4
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
5
「人員を増やす」という選択肢はない 情シスが負の連鎖から抜け出すには?
-
6
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
7
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
8
「問題が深刻化しやすいプロジェクト管理」から脱却する方法とは?
-
9
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
10
NTTドコモが実践したクラウド統合監視 業務量2倍でも残業削減を実現できた理由
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー