診療所の電子カルテ導入事例:ラボテック「SuperClinic」
電子カルテ導入で診療の質が向上した「まつばらクリニック」
内科・小児科一般を中心に、身近な“かかりつけ医”として患者への丁寧な診察を心掛けている「まつばらクリニック」。開院5年後から導入している電子カルテのメリットを聞いた。
紙カルテの収納スペースに限界、レセコンの運用にも課題
2000年7月7日に開業した「まつばらクリニック」(東京都品川区)は、内科・小児科一般、ぜんそくやアレルギー、膠原病などを専門とするクリニックだ。来院者の半分は小児が占め、大人の患者では一般内科の他にぜんそくやアレルギー性鼻炎などの症状が多く見られるという。「何でも相談できる身近な“かかりつけ医”を理想とし、病気の診断、治療の内容について丁寧な説明を心掛けている」と松原豊子院長は話す。
同クリニックが電子カルテを導入したのは、開業から5年後の2005年7月。それまでは、診療報酬明細書を作成するレセプトコンピュータ(以下、レセコン)を活用しながら、紙カルテによる診療を行っていた。松原院長は「開業当時、電子カルテを導入している診療所はほとんどなく、まずはレセコンさえあればよいと考えていた。しかし、その後、新規開業する医師のほとんどが電子カルテを導入するようになり、電子カルテの導入を検討した」と振り返る。
紙カルテによる診療を5年間続ける中で、実務面におけるさまざまな問題点が浮き彫りになっていた。まず、「紙カルテを収納するスペースがなくなってきた」ことだ。5年間保管することが義務付けられているカルテに対して、「この先、さらに増え続ける紙カルテを保管していくことに限界を感じつつあった」という。
また、レセコンの操作にはある程度知識のあるスタッフが必要となるが、「当時スタッフの急な欠勤でレセコン入力が遅れ、診察が終わった患者で待合室が混み合うことも多かった」という。「来院患者のためにもこのままではいけない」と感じた松原院長は「極端に言えば、自分1人で全ての診療ができるようなシステムが必要だ」と考え、レセコン機能を搭載した電子カルテの導入に踏み切ったと経緯を説明する。
ラボテックの電子カルテ「SuperClinic」を採用、その評価は「全体的に満足」
まつばらクリニックが導入したのは、ラボテックの無床診療所向け電子カルテシステム「SuperClinic」。受付カウンターに患者の受付用と会計用で2台、診察室に1台、処置室に1台の計4台を設置している。製品選びの際にはラボテックの他、従来使用していたレセコンメーカー、電子カルテシステムでのシェアが高いメーカーの3社を検討したという。
松原院長は、実際に導入しているクリニックを見学したり、医療機器の見本市に行ったりして各社の製品を比較した。その結果、「SuperClinicが一番使いやすく、コストパフォーマンスが良かった。また、小児科ドクターにラボテックの人気が高かったことも、小児患者が多い当院にとって採用の一因になった」と説明する。
SuperClinicを使用した評価としては「全体的に満足している」とのこと。導入当初はシステムが突然フリーズしてしまい、手書きで対応しようとしたが患者情報はシステムの中なので処方せんも出せず、保険証の情報も分からないという事態になったこともあった。さらにサポートの電話もつながらなくて困ったこともあったという。現在は安定稼働しているが、「万が一に備えて保険証のコピーを控えるようにしている」という。
導入時の最大の課題は“病名の入力”、夏休み返上で作業
電子カルテの導入検討から本稼働までに要した期間は約半年。導入における最大の課題は、紙カルテから電子カルテへの病名の入力であったという。患者の氏名や生年月日、保険の種類などを記載する頭書きの移行はラボテックが実施した。松原院長は「全ての患者が初診であれば、診察の際に病名を入力していけばよいが、慢性疾患の患者の場合は、通院履歴をさかのぼる必要があった」と説明した。診察しながら、病名の入力作業を行うと時間がかかってしまう。そこで実際にカルテを稼働させる前に、既存の患者の病名や処方薬などの情報を夏休み期間に入力。また、移行された頭書きの情報についても、正しく移行されているかを確認した。
また、開業から5年という早い段階で電子カルテに移行したことも、スムーズな導入につながったようだ。「歴史のある病院に比べれば、新規開業から間もない当クリニックは、電子カルテへの移行は比較的やりやすい。代々続いているような病院は、『電子カルテの仕組みはよく分からないので、導入するなら病院を閉める』など、年輩の事務スタッフから協力が得られずに電子カルテへの移行が進まないケースもある」とのこと。
まつばらクリニックでは、事務スタッフへの事前トレーニングを3、4回実施。本稼働の当日と翌日はラボテックのスタッフが常駐して不測のトラブルに備えるなど、電子カルテシステムのスムーズな立ち上げをサポートした。
カルテセットや約束処方を活用、迅速な処方せんオーダーを実現
電子カルテを導入したメリットについて、松原院長は「患者に対する診療の質を高めることができた」ことを強調する。まず、紙カルテの場合、検査結果は翌日の夕方に配達されてくるが、電子カルテでは検査の翌日午前8時に結果データをダウンロードできる。これによって、「診療を開始する前に、前日の検査結果を全てチェックすることができ、異常値が出た患者への連絡が迅速に行えるようになった。また、検査結果がデータで蓄積されていくので、時系列で結果を表示させて、患者に画面を見せながら指導を行うことも可能になった」という。
さらに、電子カルテでは病気の症状ごとにカルテセットを作成したり、約束処方を組んでおくこともできるため、同じ症状の患者に対する同様の検査や処方を実施する場合に便利だ。松原院長は「例えば、インフルエンザなど季節的な疾病のカルテセットを作り、想定される処方せんをあらかじめ設定しておけば、それをベースに患者の症状に合わせて処方せんを微調整するだけで、素早くオーダーできる。特に当クリニックでは、子どもの患者が多いので、体重別に風邪薬の約束処方を組んでおくなど、きめ細かな処方せんの調整に役立てている」と、電子カルテ活用法を教えてくれた。
会計での待ち時間を削減、診療の流れがスムーズに
また、同クリニックでは電子カルテの導入に伴い、院内処方から院外処方に切り替えている。電子カルテが導入される前は、松原院長が作成した紙カルテを基に、事務スタッフがレセコンに入力して会計処理を行い、薬の処方も院内で実施していた。そのため、患者の待ち時間が長くなりがちだった。「電子カルテでは、検査や処置、処方を入力すればすぐに会計処理ができるので、診察が終わってからの待ち時間を短縮できる。また、受付時に患者の状態を入力してもらうことで、診察室にいながら、待っている患者の具合をリアルタイムで確認できる。場合によっては、診察の待ち時間に検査を済ませてもらうなど、効率的な診療が可能になった」という。
こうしてまつばらクリニックでは、患者の無駄な待ち時間を減らすことに成功している。さらに「受付から診察、会計までの流れがとてもスムーズになり、風通しがよくなった」ことも、システムを導入したメリットだという。
一方、電子カルテにしたことで不便に感じる点もあると松原院長。「皮膚科の患者を診察する際、紙カルテの時は色鉛筆を使って患部の色の再現できていたが、電子カルテのシェーマでは使える色が限られており、微妙な色のニュアンスを表現するのが難しくなった」としている。
CRシステムの導入を計画、電子カルテと心電図のネットワーク連携も
今後の展開としては、CRシステムの導入、電子カルテと心電図とのネットワーク連携などを近日中に行う予定だ。松原院長は「X線についてもフィルムを保管するスペースが限界になってきたことに加え、フィルムの管理に手間が掛かることからCRシステムの導入が急務。また、心電図のデータを電子カルテに取り込むことで、前回の検査結果との比較を容易に行うことが可能になる」と、さらなる診療精度の向上に期待を寄せる。そして「これから電子カルテを導入しようという診療所は、X線CRシステムや心電図とのネットワークも合わせて導入を検討した方がよいだろう」とアドバイスしてくれた。
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