医療のIT化が遅れている原因は何か?アクセンチュアに聞く「医療IT化の現状と未来」

「ほかの分野と比べてIT化が10年遅れている」ともいわれる医療分野。その原因と今後求められるシステムの理想像について、コンサルティングを行っているアクセンチュアの井形繁雄氏に聞いた。

2010年02月15日 08時00分 公開
[翁長 潤TechTargetジャパン]

公共インフラの中核となる医療健康サービス

 「医療健康サービスは、人間が健康で幸福に必要不可欠な社会インフラだ」とアクセンチュアのテクノロジー コンサルティング本部 公共サービス・医療健康 SIグループ パートナー、井形繁雄氏は語る。井形氏はアクセンチュアに約20年在籍し、1998年からヘルスケア分野のコンサルティングに従事してきた。中央省庁や独立行政法人、大規模な公立病院などにおける医療情報システムの導入支援に携わっているエキスパートだ。

photo アクセンチュアの井形氏

 井形氏は「民間病院であっても自治体の病院であっても、その医療行為は各地域における重要なインフラとなる公共的なサービスだ」とも説明する。アクセンチュアでは、ヘルスケア分野を「公共サービス・医療健康」部門の中核として位置付けており、経営・事業戦略の立案からIT化戦略、システムインテグレーション、保守・アウトソーシングまでを含めた包括的なサービスを提供している。

 井形氏によると、ヘルスケア分野は4つのセグメントに分かれている。中央省庁や関連独立行政法人の「Government/Regulator」、医療サービスを提供する医療機関「Provider」、健康保険組合や社会保険診療報酬基金などの「Payer」、製薬会社「Pharma」がその4つである。それぞれ立場や利害関係は異なるものの、密接に関連しているという。公共サービスとしての側面を持つ同分野は「4つのセグメントが複雑に関連しつつ、発展している」(井形氏)ため、関連する組織は多岐にわたる。

医療サービスを支えている力とは?

 日本政府が2009年12月に閣議決定した「新成長戦略(基本方針)」では、「医療・介護・健康関連産業」を重要分野として位置付け、同分野の産業育成と雇用創出の施策に取り組むことで「2020年までに新規市場約45兆円、新規雇用者数約280万人を達成する」という目標を掲げている。

 井形氏は「ヘルスケア分野は、単に費用対効果(ROI)のみで測れるようなビジネスではない」とし、「その成果をコスト効率や生産性など、経営面の指標のみで評価するのは難しい」と説明する。また、「医療現場を知れば知るほど、医師を中心とした医療従事者の“業務の尊さと厳しさ”を感じてきた。医療サービスは、現場の献身的な活動によって支えられている」とも語る。医療機関のシステム開発やコンサルティングに携わりつつ、その上で「患者を助け、その命を支える医療現場の日々の努力を見える化するなど、さまざまな側面から支援していきたい」と心掛けているという。

医療のIT化が遅れている原因

 井形氏は以前、「医療分野におけるIT化は、システム実装のレベルや開発手法、その方法論が他分野と比べて10年遅れている」と指摘していた。その理由について、井形氏は「ベンダー側が本来持っている、ITに関する専門性が発揮できていない」とし、「従来型のシステム構築では、医療従事者の業務を十分に支援できていなかった可能性がある」と説明する。

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