地域医療連携ソリューション紹介:NEC
地域医療連携の先を見据えた情報連携を目指すNEC
多くの医療関連システムを提供しているNEC。同社が見据えるのは地域医療連携の先にある、より広範囲な情報連携ネットワークだ。
18道県699施設で利用される地域医療連携ソリューション
電子カルテシステムの「MegaOakHR」を中核に、医療事務システムの「MegaOakIBARS II」やデータウェアハウス「MegaOakDWH」などの医療関連システムを提供しているNEC。同社は医療現場における着実なニーズの高まりを敏感に捉え、医療情報の連携にも先進的に取り組んでいる企業の1つだ。
NECは2009年7月、電子カルテベンダーのシーエスアイ(以下、CSI)と共同開発した「電子カルテ/地域医療連携ソリューション」の販売を開始した。このソリューションはエスイーシーが提供する地域医療ネットワークサービス「ID-Link」を利用し、NECのMegaOakHRやCSIの電子カルテ「MI・RA・Is」などの診療情報を同社のサービスセンター経由で複数の医療機関で閲覧する仕組みだ。北海道の道南地区における地域医療連携システムへの採用実績を基にして製品化された(関連記事:地域医療の問題解決を支援する情報ネットワーク)。
ID-Linkを基盤とする地域医療連携システムは、2011年9月末時点で18道県699施設において利用されている。NECの医療ソリューション事業部事業推進部の齋藤直和氏は「従来の紙による医療機関同士でのやりとりでは、取り扱える情報の種類や量が限られ、人的作業を伴う情報伝達が少なくなかった。こうした問題を解消したいという現場のニーズは予想以上に大きかった」と語る。
現場の声を受けて継続的な機能改善を
NECによると、地域医療連携ソリューションの採用は過去に同社と全く付き合いのない医療機関が主体だという。地域医療連携では地域の医療機関が一体となり、環境を整えることが必要である。そのため、NECは自治体が立ち上げた地域医療連携の協議会など地域医療連携の旗振り役にアプローチ。そこでの議論をいち早く地域医療連携ソリューションの機能改善に反映させてきたという。
同社が実施した機能改善とは、システム利用における「持続可能性」がキーワードだ。医療機関がシステムを導入する際に当たり、真っ先に負担として挙がるのが「運用コストと運用作業の負荷」だ。そこで、NECは大規模な公開用データサーバに代わり小規模なキャッシュサーバを採用。使用頻度が少ない情報を自動削除する新たな仕組みによって、初期導入コストやバックアップなどの保守運用業務の軽減を図った。また、NECが保守を一括して請け負うことで、データ管理における各医療施設の責任軽減にも配慮している。
「診療情報の管理責任は各医療機関にある。そのため、中核病院が情報を一元管理する従来型の手法では、その病院だけに負荷が集中して業務に支障をきたしかねない。各医療機関で情報、さらに負荷を分散する仕組みによって、そうした事態を回避することは重要」(齋藤氏)
また、電子カルテの画面インタフェースはシステムによって異なる場合が多い。そのため、単に情報を公開・共有するだけでは、外部の医療機関が必要な情報の格納場所を突き止めるのは難しい。そこで同社のソリューションでは、フローシートやドキュメント、画像などの情報を一目で確認できるよう、なるべく分りやすい画面設計にこだわったという。また、複数の医療機関の参加が求められる経過把握や訪問看護などにおいて、あるスタッフが患者に関する情報を更新した場合、それを関係者にメールで通知する機能を搭載している。この機能は現場の声を受けて実現した改善だという。
電子カルテ関連コンテンツ
セキュリティに対する啓発活動も実施
地域医療連携の普及については、行政による地域医療助成金などの支援はあるが課題も残る(関連記事:地域医療再生に向けた国家戦略とは?)。地域医療連携の実現に当たり、まず何から着手すべきかに戸惑う医療機関がまだ多く、協議会や医師会などの地域医療連携に対する意識も地域によって明確な温度差があるのが現状だという。
「外部の医療機関と診療情報を共有するためには、セキュリティ対策などへの配慮が必須。また、外部から情報を閲覧されること自体が医者の負担になると考えて導入しないという医療機関もある」(齋藤氏)
そうした中、NECは導入コンサルティングを通じて、地域医療連携の採用を支援する活動にも注力してきた。具体的には、参加意思を示した診療所などに説明会を実施。各医療機関の情報の扱い方を把握し、運用規則を取りまとめるなど、運用ルールを順守してもらうための情報発信に取り組んできた。
「中核病院の情報を診療所が紙に印刷すれば、そこからの情報漏えいの危険性が高まる。そこで、データの印刷を禁止するなど、セキュリティ対策の重要性を説明会などで訴えてきた。こうした認識が広まらなければ、せっかくソリューションを導入しても利用が活性化しない場合も多い」と齋藤氏(関連記事:今後の医療ITで求められるセキュリティレベルとは?)。
また、医療機関に継続して使い続けてもらえるか否かは、運用コストにも大きく左右される。NECは月額利用料を利用規模に応じて2~8万円に設定。電子カルテの場合では月額300万円程度のコストが必要になることを踏まえると、対象業務こそ異なるが、診療所のIT化コストの負荷が軽減されることが理解できるだろう。
地域医療連携は次なる市場開拓の“始まり”
内閣官房の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)が2010年に発表した「新たな情報通信技術戦略 工程表」にのっとり、「どこでもMY病院」構想の実現に向けた取り組みが現在進められている。
どこでもMY病院は、医療機関が提供する検査データなどの診療情報を取得し、健康情報や疾病管理と併せて医療関連施設に患者自身が情報を提供する仕組みである。これにより医療の効率、質を高めるというものだ。その実現においては、患者の疾病管理のための入力ツールとして各種システムの位置付けが明確化されている。これは、地域医療連携での診療情報の共有に加え、日常的な疾病情報などを一元的に管理する情報連携基盤が新たに求められていることを意味する。
そうした基盤には多くの医療機関からのアクセスが見込まれる。そのため、より高度な認証の仕組みを構築する必要がある。現在、日本医師会は公開鍵認証基盤(PKI:Public Key Infrastructure)の枠組みを使った「日本医師会認証局」の実証実験に取り組んでいる。NECは経済産業省が予定している医療分野の認証基盤整備プロジェクトにおいて、日本医師会が発行する「HPKI(Health Public Key Infrastructure)」カードを用いる地域医療連携ネットワークの実証実験に参画する計画だ。そこで得たノウハウを今後提供する製品に反映させる予定だという。
また調剤薬局と医療機関の間には、処方した薬剤データが電子カルテに取り込まれないといった情報連携の“溝”が存在する。その解消のために調剤薬局のシステムとの情報連携機能も必要となる。「つながる先は、地域医療連携ネットワークに収まらない。日本医療そのもののネットワーク化が着実に進展しつつある」(齋藤氏)
NECはより広範なシステム間でのデータ連携を促進させるために必要な標準化活動にも注力していく。まずは地域医療連携ソリューションを市場開拓の足掛かりとし、2012年度中に1000施設でのID-Link利用を目指している。
著者紹介
岡崎勝己(オカザキ カツミ)
広島県生まれ。成蹊大学経済学部経営学科卒業。通信業界向け専門誌、IT情報誌の編集者を経て独立。利用者の立場から見た“技術”の価値と限界をテーマに、ジャーナリストとして活動を展開。得意とするテーマはITと業務改革/イノベーション、ビジネスモデル/人材論など。最近では電子書籍の主要企業の動向を追う記事も連載。著書に『図解ICタグビジネスのすべて(日本能率協会マネジメントセンター)』など。
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