ベンダーが仕掛けた“わな”か“自業自得”か
「誰の役にも立たないプライベートクラウド」はなぜ生まれるのか
プライベートクラウドを早急に導入しようとした場合、解決される問題よりもさらに多くの問題が生じかねない。プライベートクラウドを設計する際に陥りがちなよくある3つの間違いについて述べる。
クラウドコンピューティングは仮想データセンターの次なる必然的進化といえるかもしれないが、プライベートクラウド型デザインを性急に導入すると、解決される問題よりもさらに多くの問題が発生することになりかねない。
残念ながら、多くの企業(少なくとも、CEOやCIOといった「C」の付くエグゼクティブ)は、ソフトウェアベンダーが仕掛けた“わな”にはまり、「今すぐにでもクラウドが必要であり、クラウドを構築するのは製品を選ぶのと同じくらい簡単だ」と信じ込んでしまうようだ。
「大抵の企業の場合、いったんその方向に舵を切ってしまうと、『プライベートクラウドを構築するのは、ライセンスと管理ソフトウェアの費用を支払うだけではなく、非常に複雑なことだ』とすぐに気付く」――スロベニアに本社を置くNIL Data Communicationsで最高技術顧問を務めるアイバン・ペペルンジャック氏は「Interop」の分科会でこう語った。
「このアプローチは大間違いだ」とペペルンジャック氏は言う。「だが私が会う顧客の約80%がその間違いを犯している。最も重要な質問は『OpenStackかVMware vCloud Directorか?』ではなく、『何をしたいのか?』なのだ」
「実際のところ、ほとんどの企業は決してプライベートクラウドを求めているわけではない。彼らが本当に欲しいのは、VM(仮想マシン)のプロビジョニング作業の一部を自動化する機能だ」とペペルンジャック氏は語る。真のプライベートクラウドを実現するためには、IT部門がさらに努力する必要があるという。
「ユーザーが社内のファイアウォールにコードを追加するのにサポートチケットを使わなければならないとしたら、それはクラウドではない。社内アピールのために『クラウド』と呼ぶのは勝手だが、本当のクラウドではない。サーバの仮想化にすぎない」と同氏は語る。
プライベートクラウドを設計する上での正しいアプローチとは、まず一歩後ろに下がって何が必要なのかを見渡すことだ。そしてプライベートクラウドが本当に必要なのであれば、どのプラットフォームが自社に最適なのかを検討することだ。これを念頭に置いた上で、プライベートクラウドを設計する際に避けるべき、よくある3つの間違いについて述べる。
間違い1:ユーザーが不明確
プライベートクラウドの導入に向けた最初のステップは、対象となるユーザーとそのユーザーのニーズを明確に把握することだ。「IT部門がアプリケーションのオーナーと相談せずにクラウドインフラを設計したために、開発したクラウドがユーザーのニーズに合わないというのは、よくあることだ」とペペルンジャック氏は話す。
ユーザーを明確にすることは、開発したクラウドをユーザーが使いこなせるようにする上でも重要なポイントだ。
「米Amazonは自社のサービスの機能の説明に大きな労力を費やしている。プライベートクラウドの場合も、そのくらいのことをしなければ、ユーザーに使ってもらえない」とペペルンジャック氏は語る。
「ユーザーを明確にするという考え方をさらに一歩進め、クラウドに関心を持っているユーザーもしくはクラウドを推しているユーザーを1人選び、その人物のニーズに合わせてβ版クラウドを作るのもいい」と同氏は話す。そのユーザーはバグの洗い出しや製品の改良で協力してくれるかもしれない。満足のゆくクラウドに仕上がったら、その人物が最大のセールスマンになるだろう。
「そのユーザーは他のアプリケーションチームにも『クラウドを使わないと損だ』と言ってくれるだろう」(同氏)
間違い2:ユーザーを信頼しない
プライベートクラウドの設計における最大の誤りの1つは、十分なセルフサービス機能を用意しないことだ。アプリケーションのオーナーがファイアウォールやロードバランサーを設定できるようにするのは心配かもしれないが、意思決定プロセスをできる限りユーザーに任せることがプライベートクラウドの成功の条件だ。
要するに、クラウドではサービスのプロビジョニングと設定の機能をユーザーが使えるようにする必要があるということだ。その内容は企業によっても、また社内の部署によっても異なる。個々のVMをプロビジョニングする機能しか必要としないユーザーもいれば、仮想ネットワークとロードバランシングを利用する複雑なアプリケーションスタックを設計・サポートする機能を必要とするユーザーもいる。
「ファイアウォールを修正するたびにユーザーにサポートチケットを使わせていたら、Amazonは決して成功しなかっただろう」とペペルンジャック氏は指摘する。「Amazonが成功したのは、同社のクラウドの中で好きなことができるからだ。このモデルをまねなくてはならない」
間違い3:オープンソース型クラウドを自社で構築する
OpenStackは大きな話題を呼んでいるが、だからといって、あなたの会社に適しているとは限らない。ペペルンジャック氏によると、一般に、初めてプライベートクラウドを導入する企業の場合、OpenStackベースのクラウドを自社で構築するよりも、米VMwareなどの大手ベンダーのクラウドソフトウェアを購入する方が無難だという。
「自社で構築すればライセンス料を払わなくて済むので、安くつくように思えるかもしれない。だが無償にはそれなりの理由があり、結局はお金が掛かることになる。OpenStackをダウンロードして試すのは自由だが、使い物になるクラウドが出来上がるのは2年ほど先のことになるだろう」とペペルンジャック氏は語る。
だが例外も存在する。効率を徹底的に追求する必要があるサービスプロバイダーや、OpenStackベースのクラウドを構築した経験のあるスタッフがいる企業などだ。
また、オープンソースという選択肢を完全に排除すべきだというわけでもない。ペペルンジャック氏も、OpenStackクラウドには多くのメリットがあると考えており、大手ベンダーが提供する本番用クラウドと並行して、ノウハウを学ぶ目的で試験的にクラウドを作成するよう企業にアドバイスしている。
「そうすれば2、3年後に『自社用プライベートクラウドVersion 2.0』を投入することになってもすぐに対応できるだろう。経験もなしに、いきなりクラウドを構築するのは無理だ」(同氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
AI時代の自律的なパートナー 「データエージェント」構築&活用ガイド -
製品資料
使用中のデータを保護して安全な共同開発へ、クラウド時代のデータセキュリティ -
製品資料
“AIによる高速な脆弱性検出”対策を行う、RHELの統合セキュリティ機能とは? -
製品資料
企業ITを支える定番Linuxの運用管理、手動の限界を乗り越える手法とは? -
製品資料
AIとクラウドネイティブの課題を解決する、シンプルで費用対効果に優れた方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
2
なぜ人はいるのにDXが進まない? ライオンも直面した“老害”レガシーシステム
-
3
ただなのに「12時間以内の復旧」も要求 無償OSSに商用レベルを求める企業の末路
-
4
IT人材の42%が転職予備軍 辞めさせない組織の4つの共通
-
5
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
6
「HDD終了」は本当か 巨大クラウド2社が下した大容量フラッシュへの決断
-
7
なぜ10億円払って“高額な塩漬け”を作るのか? SAPクラウド移行の闇
-
8
イーロン・マスク氏が生成AI「Grok」をオープン化する“語られない狙い”
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
業務引き継ぎで困ったこと 大企業200人調査で判明した課題の第1位は
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
属人化や仕様バグはなぜ起きる? AI時代に必須のドキュメント文化の作り方
-
2
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
5分で分かる「AI駆動開発エージェント」 要件定義から設計・実装・テストまで
-
5
中小企業必見、Microsoft 365でゼロトラストセキュリティを実現する方法
-
6
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
7
コスト分析で見る「デバイス復旧」の代償 損失額から導きだされた投資戦略とは
-
8
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
オープンウェイトLLMの推論最適化事例:ローカル環境で応答速度を約15分の1へ
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー