慎重な計画が最良の結果を生む
プライベートクラウド導入前に自問自答すべき“5つの質問”
プライベートクラウドに急いで飛び付く前に、パフォーマンスやセキュリティなどに関する一般的な5つの項目について自問自答することが重要である。
クラウドコンピューティングには、主に「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」「ハイブリッドクラウド」という3つの選択肢がある。これらの違いを上手に説明できるだろうか? パブリッククラウドは、共有インフラを使用し、スケーラビリティ、弾力性、従量課金モデルが備わっている。ハイブリッドクラウドは、プライベートクラウドサービスとパブリッククラウドサービスを組み合わせたもので、2つのサービスの間で調整が行われる。本稿では、プライベートクラウドについて詳しく見ていきたい。
プライベートクラウドの優位性とは?
プライベートクラウドとパブリッククラウドには同じようなメリットがある。だが、オンプレミスという性質と管理の面から、企業はプライベートクラウドを選択することが多い。プライベートクラウド環境では、ファイアウォールによってユーザーのアクセスが制限されるので、企業がデータのセキュリティとコンプライアンスに関して持っている多くの懸念事項が取り除かれる。ただし、企業はプライベートクラウドプロジェクトを慎重に計画する必要がある。
プライベートクラウドの計画を立てるには、さまざまな要素について理解しなければならない。例えば、プライベートクラウドそのものの定義、セキュリティ、パフォーマンスなどだ。プライベートクラウドという選択肢を選ぶ前に、必要な作業を理解することが重要になる。まず、以下の5つの事項について自問自答することをお勧めする。
1. プライベートクラウドとは一体何なのか
多くの企業は、自社のデータとアプリケーションのためにプライベートクラウドを選択している。だが、その定義とメリットに関しては、正しく理解されていないのが実情だ。このような誤解は、誤った認識から生まれることが多い。
実際には仮想化技術を使用しているのに、プライベートクラウドを使用していると考えている企業も存在する。プライベートクラウドは、単一の企業に使用を制限するファイアウォールによって保護されたクラウドインフラである。排他性という特徴に加えて、オンプレミスとオフプレミスの両方で管理できる。多くの場合、プライベートクラウドでは、オンプレミス環境で仮想化技術を使用する。
プライベートクラウドについて理解すると、企業は自動化、アジリティ、制御、コスト効率などのメリットを最大限に活用できるようになる。また、プライベートクラウドを使用すると、リソースを制御して、コストを管理できるようにもなる。
2. プライベートクラウドではセキュリティが保証されるのか
どのようなITサービスでも、企業にとってセキュリティは最大の懸念事項である。プライベートという性質から、プライベートクラウドは安全な環境であるように思われている。だが、プライベートクラウドは本質的に安全ではない。そのため、企業は、プライベートクラウドのセキュリティを確保するために何らかの予防策を講じる必要がある。このような予防策には「クラウドへのアクセスにプロトコルを設定すること」「クラウドのセキュリティを継続的にテストすること」などが含まれる。企業は、プライベートクラウドへのアクセスが必要な従業員を判断し、適宜アクセス許可を付与する必要がある。パブリッククラウドではプロバイダーがセキュリティを管理する。だが、プライベートクラウドのユーザーは、自分のデータを自分で保護しなければならない。そのため、セキュリティ侵害が発生した場合には、然るべき人材が代わりに対応する必要がある。
セキュリティ侵害とハッカーは、ITサービスの脅威となる可能性があり、プライベートクラウドも例外ではない。多くの場合、未検出のプライベートクラウドの脆弱性は、ハッカーの侵入口となる。このような攻撃を防ぐため、企業はプライベートクラウドのネットワークを継続的にテストして、弱点を補強しなければならない。また、プライベートクラウドへのアクセスを記録して、異常なアクティビティを監視することもお勧めする。
3. プライベートクラウドのパフォーマンスはどのように最適化するのか
プライベートクラウドのメリットを享受するには、パフォーマンスが重要になる。プライベートクラウドで高いパフォーマンスを実現するには、まず強固な設計が必要だ。だが、それだけではない。IT部門は、サービスの品質を測るためのパフォーマンスレベルの基準を設定する必要がある。それから、クラウドのパフォーマンスを監視してテストし、プライベートクラウド専用のスケーラブルなアプリケーションを設計することも重要だ。クラウド用に設計されていないアプリケーションでは、遅延やパフォーマンスの問題が発生する可能性がある。また、多くのクラウドサービスには需要のピークが存在する。そのため、帯域幅の問題や共同利用者のリソース占有に伴う問題が生じる。このような問題を防ぐには、プライベートクラウドのアーキテクチャを自社のアプリケーション用に最適化することが肝要だ。
企業は、パフォーマンスが低下した場合やクラウドプロジェクトが失敗した場合に備えてフェイルオーバー計画を用意する必要がある。多くの場合、プライベートクラウドのユーザーは、サービス停止時の影響に自分で対処しなければならない。そのため、必要なフェイルオーバー対策または障害復旧対策を用意しておくことは不可欠だ。
4. アプリケーションがプライベートクラウドの容量を使用しすぎている場合はどうしたらよいか
各クラウドアプリケーションには独自の要件があり、他のアプリケーションより要件が厳しいアプリケーションもある。特定のアプリケーションで、大量のプライベートクラウドの容量が必要な場合は「クラウドバースティング」(※)を検討されたい。プライベートクラウドのアプリケーションをパブリッククラウドに移行することで、企業はアプリケーションの高いパフォーマンス要件を満たし、他のアプリケーション用にプライベートクラウドのストレージ容量を解放できる。パブリッククラウドサービスは従量課金制で、コスト効率が良いものが多い。そのため、企業はクラウドバースティングを利用することで抑えることができる。
※リソースの需要が極端に高まったピーク時(バースト)に、処理を別のクラウドサービスのリソースに切り替えること
ただし、クラウドバースティングは全てのアプリケーションに最適な選択肢になるとは限らない。ミッションクリティカルなアプリケーションや機密情報を含むアプリは、パブリッククラウドに移行すると脆弱になる。また、クラウドバースティングの使用を検討している企業は、自社のアプリケーションがセキュリティ規制に準拠していることを確認する必要もある。このようなセキュリティ規制には米「HIPAA法(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)」やクレジットカードに関わるセキュリティ標準「PCI DSS」などが含まれる。
5. プライベートクラウドの予算はどのように管理できるのか
プライベートクラウドの予算管理は必須作業だが、困難な作業でもある。大企業では、複数の事業部で多くの経費が発生している。そのため、各プライベートクラウドのコストだけでなく、プライベートクラウドのリソースを使用しているチームを追跡する必要もある。企業はチャージバックを使用して、各チームの使用料を追跡することができる。チャージバックを利用すると、企業は特定のチームまたは部門にプライベートクラウドの料金を請求できる。ただし、チャージバックを利用するには、プライベートクラウドのサービス、アプリケーション、ソフトウェア、ハードウェアのインベントリを収集する必要がある。インベントリの収集は大変な作業だが、リソース管理やパフォーマンス向上などの多くのメリットが得られる。
本格的なチャージバックモデルを採用する準備ができていない企業には、ショーバックという別の選択肢もある。ショーバックを利用すると、誰がどのクラウドリソースを使用しているかを確認できるが、特定のチームや部門に料金が請求されることはない。
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