「協働学習」を支えるIT基盤に
桐蔭学園が「iPad」「MDM」「フィルタリング」を導入、選定の決め手は?(3/3 ページ)
Webフィルタリング選定理由:実績やMDMとの連係を評価
一方、Webフィルタリングにi-FILTERブラウザー&クラウドを選定した理由について山口教諭は、「フィルタリング効果が非常に高いことと、多くの採用実績があること」を挙げる(写真4)。CLOMO MDMとの連係機能を標準で備える点も導入を後押しする要因になったという。
その導入効果は、すぐに数字で確認できた。iPadを配布した2015年4月9日から同年5月4日までの約1カ月に、i-FILTERブラウザー&クラウドがブロックしたWebページは3640件。Webアクセス全体のうち、約10%をブロックしていたことを確認できたという。
ブロックしたWebサイトの内訳を確認したところ、大半は芸能ニュースやブログだったという。山口教諭は、「ブログや芸能ニュースを見ることがまずいわけではなく、見ている端末がまずい。こうしたWebサイトは個人のスマートフォンを使えば閲覧できる」と、ここでも「学校が貸与した学習用端末」というiPadの位置付けを強調する。
こうした閲覧傾向は、「許可されたWebサイトのみにアクセスが可能なホワイトリスト方式では、把握するのが難しい」と山口教諭は指摘する。また、ホワイトリストでWebの閲覧対象を絞り込み過ぎると、「生徒や教員から“使えない”と判断されてしまう」と同教諭は語る。
なお、学校関係者の中には動画共有サイト「YouTube」の閲覧制限について気になる人も多いだろう。講義映像をはじめ教育活動で活用できる動画が充実していることから、YouTubeを授業や講義で活用する教育機関は少なくない。桐蔭学園は現時点では、学習者に対してはYouTubeを閲覧不可にしている。ただし、教員のiPadではこの制限を緩和している。授業で必要な場合、教員はApple TVを介してプロジェクターに映像を投影することで対処しているという。
桐蔭学園ではICT検討委員会で議論をしながら、適宜Webフィルタリングの要件を緩和する方針だ。
授業から見えた、桐蔭学園IT活用の実態
実際にiPadを活用している授業の様子も取材した。当日は、男子部と女子部全5クラスのうち4クラスで、LoiLoの「ロイロノートスクール」を活用していた。iPadを手にして1カ月あまりにもかかわらず、生徒も教員も慣れた様子でロイロノートスクールを使い、教材を送受信していたのが印象的だった。
インフラと化した「ロイロノートスクール」
数学の授業では、コンパスを使う作図課題で、生徒から教員への解答提出にロイロノートスクールを活用していた。ある生徒は、iPadの手書きツールでは正確な作図ができないと考え、紙のノートに作図したものをカメラで撮影して教員に送る方法に気付き、他の生徒にそのやり方を教えるというシーンが見られた(写真5、6)。一方、iPadの画面で親指と人差し指をコンパスのように動かそうとして、マルチタッチを認識して画面が拡大してしまい、戸惑う生徒もいた。
他の授業では、調べ学習にロイロノートスクールを活用していたり、自己紹介用のプレゼンテーション資料を作るといったシーンや、i-FILTERブラウザー&クラウドを使ってWebページから必要な情報を集めているシーンが見られた。
iPad導入で教員の考え方に変化が
iPadを導入して1カ月と短い期間ではあるが、早くも効果が見え始めたと山口教諭は指摘する。その1つが、「教員が良い意味でプレッシャーを感じるようになったこと」(山口教諭)だという。先に述べた構成プロファイルの削除など、生徒は教員の想定外のことや想定以上のことをすることが表面化したことにより、教員の間にも「頑張らなければ」という意識が広がりつつあるのだという。また、iPadを「協働学習を実現するツール」と位置付けて導入したことにより、教員の教える視点や考え方に変化をもたらす手応えも感じている様子だった。
桐蔭学園の取り組みで興味深いのは、同校のICT検討委員会が非常に多くの先行事例を研究しており、教育指針やポリシーを明確に定めた上でIT製品の利用を始めていることだ。MDMやWebフィルタリングの導入、コンシューマー機器をうまく組み合わせたインフラ構築、リテラシー教育の要素を含むポリシー設定など、中学校1年生という生徒の年齢を勘案した上で、自由度の確保とリスク回避のバランスをうまく取っていると感じた。これからタブレットを導入しようとしている学校や教育委員会にとっては、重要なモデルケースになるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
SNS認証や多要素認証も数分で実装、IDaaS基盤でデジタルビジネスはどう変わる? -
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
Synologyがエンタープライズ向けユニファイドストレージを投入 その実力は
-
5
「Windows派」「Linux派」を分ける決定的な違い
-
6
脱VMwareの最適解 NTTデータと日立製作所が示す国産仮想化基盤
-
7
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
8
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
9
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー