「協働学習」を支えるIT基盤に
桐蔭学園が「iPad」「MDM」「フィルタリング」を導入、選定の決め手は?(2/3 ページ)
iPadを選んだ理由:「協働学習」の要として使いやすさを重視
冒頭にも記した通り、桐蔭学園はOSやベンダーを問わずタブレットを選定した結果、最終的にiPadを選んだ。IT機器の導入準備に当たって組織した7、8人の選定委員は、導入する端末を「生徒同士が教え合い、学び合う『協働学習』をこれまで以上に推進するための端末」と位置付け、検討を重ねた。
選定委員のメンバーの1人である山口教諭は、
- 8時から15時までバッテリー駆動できること
- 使い勝手や操作性が良く、学校側から指導する必要性が小さいこと
といった2つの側面からメンバー内で検討した結果、iOS端末を選んだと説明する。特に操作性や使い方の分かりやすさを評価したことが、iOS端末選定の大きな要因となったようだ。
選定対象をiOS端末に絞った後は、具体的な端末のモデルや導入方法などの詳細を詰めていった。選定当時に調達可能だった「iPad Air」「iPad Air 2」「iPad mini 3」からどのモデルを選択するか。無線LAN通信のみ可能な「Wi-Fiモデル」と、無線LAN通信に加えて携帯電話回線での通信が可能な「Wi-Fi + Cellularモデル(以下、セルラーモデル)」のどちらにするか。容量はどの程度必要か。導入はBYODか学校からの貸与か。必要なソフトウェアは――。こうしたさまざまな部分について討議を重ね、上述したIT製品の導入を決めた。
iPadについてはセルラーモデルも検討したものの、今回は採用を見送ったという。「(通信費用といった)コスト面の問題、100Mバイト以上などの大容量アプリがLTE経由ではダウンロードできないこと、携帯電話事業者が設ける月間の通信料制限に引っ掛かってしまう可能性を考慮した」(山口教諭)ことが理由だ。
学校支給で「学習用端末」の位置付けを明確に
端末を学校が貸与することを選択した理由としては、「教育機関向けの一括購入プログラム『Volume Purchase Program(VPP)』の契約に加え、MDMで端末やアプリの管理、監視ができることを要件にしていた」と山口教諭は説明する。「アプリや端末の所有権が個人にあると、これらのコントロールが難しくなったり、平等性の担保が困難になったりする可能性があると判断した」(同教諭)
BYODを採用した場合、家庭で構成プロファイルや機能制限を適用していると、学校側で統一のポリシーが適用できなくなる可能性も憂慮したという。さらに「『学校が提供している端末=学習用の端末』という位置付けをはっきりさせることができる」ことも、学校支給に決めた理由の1つだと山口教諭は説明する。
Google AppsやClassiにはコミュニケーション機能が備わっており、Google Appsの利用に必要な生徒用のGoogleアカウントも取得済みだ。だが同校は現時点では、こうしたコミュニケーション機能の利用を「生徒と教員」「教員同士」の交流に限定しており、Gmailについても生徒間での利用は許可していない。これはリテラシー教育を段階的に進めるためだ。学校側で定めたカリキュラムに沿って、関連するリテラシーを学んでもらった後に、生徒同士のやりとりを解放する計画だという。
MDM選定理由:大規模利用の実績を評価
桐蔭学園が導入したIT製品の中で、タブレット以外で特に注目に価するのは、MDMとWebフィルタリングの選定基準だろう。教育分野では私立学校や教育委員会を中心に、タブレットとセットでMDMを導入するケースが相次いでいる。またWebフィルタリングについては、端末の持ち帰り学習や反転授業(授業と家庭学習の役割を一部逆転させる授業方法)に備え、学校外でも制御可能なWebフィルタリングの重要性が高まっている。
MDM選定に当たり、桐蔭学園のIT活用施策を検討する教職員組織であるICT検討委員会は、Webページやホワイトペーパー、ユーザーのブログなどから情報を収集。最終的に3学年全体に導入した際の規模を勘案し、「大規模企業での運用を支えている実績を高く評価した」(山口教諭)結果、CLOMO MDMを採用したという。
ICT検討委員会が端末管理の手段として検討していたのは、MDM製品だけではない。他にもAppleが無償提供するiOS端末管理ツール「Apple Configurator」を利用したり、サーバOS「OS X Server」の搭載端末を学内に配置し、同OSに備わるiOS端末管理機能を利用するといった手段も検討したという。だが「VPPで購入したアプリケーションを遠隔操作でサイレントインストールすることが、MDM以外では実現できなかった」(同教諭)ことが、MDM採用に踏み切る大きな理由となった。
桐蔭学園では、Appleが新たに開始した端末配布効率化サービス「Device Enrollment Program(DEP)」の導入も検討している。DEPを利用するには、現状ではiPadをAppleから法人名義で直接購入するか、Appleが認定する一部の販売代理店を通して購入する必要がある。
“あえて制御しない”ことが教育効果につながる
CLOMO MDMではiPadを遠隔制御するために、用途によって以下の3要素を組み合わせて導入する必要がある。
- MDM構成プロファイル: MDM製品が端末を制御するための情報をまとめたファイル
- 機能制限構成プロファイル:ゲーム関連アプリ「Game Center」、標準Webブラウザ「Safari」など、iPadに標準でインストールされているアプリや機能の利用を制限するための情報をまとめたファイル
- エージェント:位置情報の取得やJailbreakの検知などを可能にするクライアントソフト
このうちMDM構成プロファイルは、エンドユーザー側で一定の操作をすると削除できてしまう。仮に削除されてしまうと、端末の紛失時にロックを掛けたり不適切な利用を監視するといったMDMの遠隔管理機能が事実上、無効化されてしまうのだ。
現状のiOSでは先に述べたDEPを適用するか、Apple公式管理方式とは別の方式を追加採用しているMDM(代表例はインヴェンティットの「MobiConnect」シリーズ)を利用することで、エンドユーザーによるMDM構成プロファイルの削除を制限できる。だが桐蔭学園では、MDM構成プロファイルの削除制限をあえて掛けず、削除時に管理者へ警告メールを通知するCLOMO MDMの機能を活用して対処しているという。
桐蔭学園がMDM構成プロファイルの削除制限を掛けないのは、禁止行為を学校側が一方的に規制するのではなく、生徒自身で禁止行為かどうかを判断してもらうという教育効果を狙ったものだ。同学園では、MDM構成プロファイルの削除と同時に学校が配布したクライアントアプリも削除するように設定。こうした工夫により、MDM構成プロファイルの削除という禁止行為が起きたことを学校側が瞬時に把握でき、生徒も予想外の挙動に直面することから、再発を防ぐことが可能になると山口教諭は指摘する。「『やってはいけない』と決めていることをあえてやったら、きちんと教育するというスタンスも重要だ」(同教諭)
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