主要ベンダーがこぞって参入
SDSで得する企業と損する企業、ストレージ最大の注目技術はなぜ革新的か
Software-Defined Storage(SDS)製品はそのコスト効果と柔軟性の高さが称賛されている。だが、この革新的な技術は全ての企業にメリットをもたらすというわけではないようだ。
一般的な企業のストレージアレイの価値は、どこにあるのだろうか。ソフトウェアとハードウェアのどちらだろうか。それともその両方だろうか。
最近「Software-Defined Storage」(SDS)は注目を集め取り沙汰されている。こうした状況により、業界はソフトウェア寄りにシフトしつつあるようだ。この騒ぎを巻き起こしているのはストレージを扱う小規模な新興企業だけではない。米EMC、米Hewlett-Packard(HP)、米IBMを筆頭に、大手企業もSDS製品を提供している。
SDSテクノロジーを取り巻く状況が混沌としているにも関わらず、多くの企業は、SDSの将来性に期待を寄せて、今後のストレージイニシアチブにSDS製品を加える可能性が高い。SDS製品は次の点が魅力的であるようだ。
SDS製品の魅力
- ハードウェアの柔軟性:ストレージのソフトウェアとハードウェアを分離することで、企業は導入するハードウェアとその導入時期について選択肢を広げることができる。
- 新しいハードウェアテクノロジーの利用可能性:SDSの柔軟性により、高速で容量の多いストレージを入手でき次第統合できる。3~4年後に新しいストレージアレイがリリースされるまで待つ必要がない。
- 簡略化されたライセンス管理:次世代のハードウェアを調達した場合に、ストレージソフトウェア機能のライセンスを新しく購入したり更新したりする必要がない。
- 複数世代のサポート:システムが寿命を全うするまで複数の改訂されたハードウェアを統合できる。そのため、企業はデータを配置したままハードウェアを徐々にアップグレードすることが可能だ。つまり、フォークリフトアップグレードの必要がなくなる。
業界で話題になることはほとんどないが、SDSには潜在的なコストが存在する。SDSによってハードウェアを組み合わせて適合させることは可能になるが、その結果ソフトウェアとハードウェアを統合するコスト(つまり、リスク)が、エンドユーザーのもとに移る可能性がある。
「コモディティハードウェア」という言葉を好む人は多いが、実際そのようなものは存在しない。筆者はストレージエンジニアとして働いていた時期がある。U160 SCSIからU320 SCSIに移行したときの悪夢にはいまだにうなされるほどだ。恐らくコモディティSCSI HDDと呼ばれるHDD群をラボで長時間扱っていたときのことだったと記憶している。各HDDはSCSIバスで独自の接続を作成していた。ベンダーAのHDDは問題なく動作した。ベンダーBのHDDの動作も問題ない。だがベンダーAとBのHDDを組み合わせるとシステム全体が停止した。コントローラーのファームウェア、HDDメーカー、HDDファームウェアのリビジョンによって、この結果は変化した。数カ月に及ぶ詳細な作業とテスト分析を経て、条件を満たした実証済みの機能するシステムをリリースできた。
時代とテクノロジーは一定の変化を遂げており、HDDの規格が改善していると主張する人がいるかもしれない。だが、SSDのような新しいハードウェアテクノロジーは日々進化していると筆者は考える。結局のところ、ストレージソフトウェアの抽象化という概念を最大限に拡張したならSDSはどのハードウェアでも機能するはずだ。そのようなことがSDSの導入で本当に望まれているのであれば、ソフトウェアが寿命を全うするまでにシステム内で組み合わされるテクノロジーの数は際限がなくなる可能性がある。この場合、新しいテクノロジーを検証して統合する責任とコストは主にIT部門にふり掛かる。
現在SDSを値踏みしている多くの企業は、この課題を認識しており、このリスクを軽減する手段として適切なハードウェアオプションを求めている。多くのSDS製品にも、統合に関わる懸念を緩和する機器のオプションがある。ただし、ハードウェアが限定されるなら本当の意味のSDSではないと主張する人がいるかもしれない。また、オブジェクトストレージのように大規模なコンテンツのリポジトリストレージのワークロードを対象にしたSDS製品は、データのコピーを複数作成したり、イレージャーコーディングを使用することで回復力を強化している。この方法によって、実証されていないハードウェアコンポーネントが導入されている場合でもデータ損失のリスクが軽減される。
筆者の予想では、一部の企業はSDSテクノロジーを導入する機会を喜んで受け入れるだろう。また、SDSを歓迎する企業は、企業独自の必要条件の検証に対応でき、ハードウェアを十分に調達できる規模があるだろう。それだけの規模があれば、ベンダーの要件を満たしていないコンポーネントを実装することを正当化できる。このような条件下での導入なら、ソフトウェアだけで導入するSDSテクノロジーが大きな意味を成す可能性はある。
企業は自社のビジネスにとって何が最適かを基準に選択する必要がある。上述の通り、SDSベンダーはこの課題を認識しており、機器を配置したり、保証済みコンポーネントのリストを提供することで対応している。SDS製品を選択するときには、ソフトウェアとハードウェアのどちらとして提供されるものでも、ベンダーが本当にSDSのメリットを提供できるのかどうかを検証することが重要だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
7
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー