なぜ日本の学校にITが必要なのか【前編】
「学校IT活用・IT教育」が日本の“救世主”になり得る理由(1/2 ページ)
教育機関がIT活用やIT教育を進めることは、個別の教育機関が掲げる教育目標の達成だけでなく、日本が世界で生き抜く原動力となり得る力を秘めている。
教育機関における授業や校務でのIT活用や、ITに関する学習者向けの教育(IT教育)といえば、これまでは社会の入口となる大学や専門学校までの高等教育での取り組みが中心だった。現在は、その裾野が高等学校や中学校、そして小学校といった初等・中等教育にも広がり、地域を問わず既に幾つもの先駆的なIT活用・IT教育事例が生まれている。こうした動きの背景には、ITによって子どもや日本の将来が変わる、いや変えなくてはいけないという思いが込められていると考える。
「大げさだ」と捉える向きもあるかもしれない。ただし、この考えには現実的な根拠がある。本稿では前後編に分けて、大きく動き始めた日本のIT活用・IT教育の流れを説明する。前編である今回は、教育機関のIT活用・IT教育が始まったきっかけとは何か、そもそもなぜ教育現場にITが必要なのかを整理する。
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学校IT活用・IT教育に日本の将来が掛かっている
教育機関のIT活用・IT教育の流れは、2012年6月14日に政府が産業競争力会議で発表した成長戦略「日本再興戦略」と、同日に文部科学省が発表した教育の重点施策「教育振興基本計画」の2つが発端となっている。
一連の方針では、「2020年まで(2010年台中)に1人1台の情報端末を整備」「プログラミング教育などのIT教育を推進」などをうたう。さらに2003年に高校の必修教科として教科「情報」を新設した状況から一歩進み、初等・中等教育の義務教育の段階からIT教育を実施する考えも示す。1980~1990年代に小・中・高校を経験した私からすると、教育におけるITの扱いの重要性があまりに急速に増してきており、隔世の感がある。
国が教育機関のIT活用やIT教育を推進する背景には、今後の日本の成長を支えるのは人材育成だということが色濃く反映されている。特に日本再興戦略には、IT人材について「産業競争力の源泉となるハイレベルなIT人材の育成と確保」「ITやデータを活用した新たなイノベーションを生み出すことのできるハイレベルなIT人材の育成・確保を推進」といった趣旨の記載がある。これらは、今後の人材育成のターゲットの目玉の1つとして、IT分野がクローズアップされていることを示す(図)。
当然のことながら、個別の教育機関がIT活用やIT教育を進める理由はさまざまであり、必ずしもIT人材の育成が唯一の目的ではない。実際、論理的思考力やコミュニケーション能力といった汎用(はんよう)的なスキルの育成にITを生かす教育機関は少なくない。それでも、教育機関のIT活用やIT教育の早期化が、IT人材の育成につながる要素として国や産業界から期待されていることは紛れもない事実だ。その背景には、世界的なIT関連市場の拡大と、IT人材の不足がある。
世界でも不足しているIT人材
現在世界一の人口を抱える中国は、もはや「世界の工場」という枠組みを超え、Alibaba Group Holdings(阿里巴巴集団控股)やBaidu(百度)などの巨大なIT系サービス企業が世界的に存在感を示すようになった。インドも国内IT市場の成長で「IT先進国」として見られることも珍しくなくなってきた。
ヨーロッパのアルメニアやエストニア、アイルランドなど比較的小さな国や東欧諸国も、IT人材の育成とIT立国的な施策を実施している。IT人材の育成は、資源や大きな資本がない小国にとって非常に効果的な戦略だといえる。IT技術の習得が、裕福になるための“特急券”になり、国家と国民の双方で利益が一致する構造だ。
日本は人口が1億人を超える数少ない国である。領土はそれほど大きくないものの、海洋国家として多くの領海を持ち、人口面でも国土面でも大国といっていい。ただし、資源の乏しさは小国と同様だ。日本のIT人材育成の根拠も、資源や広い国土に恵まれていないこれらの国と源泉は一緒だろう。
数学と英語に堪能なインド人エンジニアが世界を席巻?
数学教育に熱心な国としても有名なインド。日本では1桁の掛け算九九がインドでは2桁であり、しかもこれを小学校1年生が覚えるという。こうした基礎教育が育む数学力と、英国の植民地時代から続く英語の堪能さを考えると、世界で戦えるIT人材をどんどん育成し続けるはずだ。
私は仕事で海外(主に米国シリコンバレー)の製品ベンダーと話をした際、担当のエンジニアがインド人であることはごく普通のことだった。国際連合の予測によると、インドが2022年までに中国を抜き、世界最大の人口を抱える国になる。今後はインド国籍のITエンジニアが世界中で活躍することになるだろう。
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なぜ日本の学校にITが必要なのか
日本の教育機関が今、IT活用やIT教育への注力を迫られているのはなぜなのか。海外の動向にも触れながら、その背景を探る。
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