失敗しない「学校IT製品」の選び方:マネージド無線LANサービス編【前編】
便利なはずの「無線LAN」が学校を苦しめるこれだけの理由(1/2 ページ)
教育機関のIT活用を下支えする無線LANは、利便性が高い半面、課題も少なくない。無線LANの導入や運用で、教育機関が見落としがちな課題を整理する。
2015年の現在、企業をはじめとする組織のIT活用は、本格的な「クラウドコンピューティングの時代」に突入したといっても過言ではない。教育機関であっても、その状況は変わらない。ただし、教育機関がクラウドのメリットを享受するために、絶対的に必要なものがある。それはネットワークの整備だ。
クラウドサービスを利用する端末に目を向けると、教育機関で導入が検討されている端末のほとんどはクライアントPCではなくタブレットである。タブレットのほとんどは有線LANの接続端子を装備しておらず、無線ネットワークの利用が前提となっている。こうした状況を考慮すると、教育機関のネットワーク化には必然的に無線LANが必須となることが分かる。
家庭や個人で無線LANを利用する際は、それほど考慮することはない。だが教育機関のように、特定の場所で多くの人が無線LANを利用する場合、無線LAN特有のさまざまな問題が発生する。
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避けられない無線LAN導入のリスク
教育機関が無線LANを導入する際は、電波状況の事前調査やその結果に基づいた電波設計は必須となる。ただし、無線LANの電波設計は複雑だ。無線LANを利用する建物の階数や面積はもちろん、建物の形状によっても設計を変えなくてはならない。しかも、導入後も電波環境が常に変わる可能性が高く、外部からの不正アクセスに気付きにくいことなど、無線特有の課題は多い。
いつでもどこでもネットワーク接続ができる無線LANは、非常にお手軽で便利なツールだ。だがいったんトラブルが発生すると、様相は一変する。無線LANは目に見えないが故に、その解決はネットワークエンジニアでも苦労するほどだ。
目に見えない電波環境の調査などには、「スペクトラムアナライザ」といった高額な機器を駆使した調査なども必要になる。いざというときには、それらの装備を持つ豊富な無線LAN構築経験を持つベンダーの対応も必要となる。無線LANはその手軽さとは裏腹に、構築や運用の観点から見ると、非常に奥が深いのだ。
安定した無線LAN環境を作る3つのフェーズ
安定した無線LAN環境を構築・運用するには、「事前調査」「構築」「運用」という3つのフェーズそれぞれについて、さまざまな対処が必要になる。フェーズごとに必要な対処内容を見ていこう。
フェーズ1:事前調査(サイトサーベイ)
無線LAN環境の構築に先立ち、まず「サイトサーベイ」という事前調査を実施する。これは無線LANアクセスポイント(以下、AP)の設置場所の電波を専用の機器で測定する調査だ。サイトサーベイを怠ると、AP設置場所で発生する電波干渉などで、ネットワーク接続が不安定になる可能性を排除できない。
電波干渉の原因としては、近所の建物に設置されたAPはもちろん、非接触カードによる入退館システムやエレベーター、電子レンジなどから発生する電波が挙げられる。せっかく無線LANを導入したにもかかわらず、電波干渉でつながらないといった状況を招くことは避けたい。事前にその場所が無線LANの利用に適しているかどうかを調査し、対策をしておく必要がある。
フェーズ2:構築(電波設計、AP設置工事含む)
サイトサーベイで電波干渉の影響を可能な限り排除した後は、想定される通信性能を賄えるネットワークを構築する。まず各教室までの有線LANを構築し、その上で無線LANが安定的に接続できるように、ネットワークスイッチやルーター、サーバがAPと接続できるルートを確保する。以前も説明したように、無線LANは有線LANから各機器に接続する“コネクタ”であり、しっかりとした有線LANの構築が求められる。
有線LANの構築後、各APの電波が相互に干渉しないようAPの設置場所を決め、APから発信する電波の強度なども調整する。ここで考慮しなければならないのは、各APの端末接続数の上限だ。企業向けの比較的高価なAPでも、1台のAPが安定して接続可能な上限は20台程度である。この上限を考慮せず、限られたAPのみで運用しようとすると、特定のAPがボトルネックになって接続できなくなる場合もある。
接続台数だけでなく用途によっても、APの設置間隔などの設計は大きく変わる。例えば、一般的なWebブラウザの検索や各種アプリケーションの利用であれば、一定までの接続台数であればネットワークの負荷などはそれ程気にしなくてもよい。だが、数Gバイトの大容量データのダウンロードや動画配信を多く利用するときなどは考慮が必要になる。こうした利用をする人が1人か2人であればよいが、数十~数百人が一斉かつ頻繁に大量データをやりとりするのであれば、1つの教室から接続できるAPの数を増やすなど、相当の工夫が求められる。
なお動画配信については、学習者が個別に見るのではなく教員がスクリーンなどに投影して皆で見ることなどで対処できる場合も多い。だが学習者の一斉ダウンロードについては、より対処が難しい。佐賀県が2014年に開始した県立高等学校でのWindowsタブレット活用でも、授業開始時に教材を一斉ダウンロードすることによって混乱が発生した。このように無線LANは、一般の有線LANによるネットワークとは異なり、考慮すべき特有の要件がたくさんあるのだ。
フェーズ3:運用
有線LANの場合、一度ネットワークが安定的に動作してしまえば、障害が発生しても比較的容易に対処できる。障害の原因が、機器の故障や設定の状況、ケーブルの断線などにある程度限定されるからである。
しかし無線LANは、安定運用にこぎ着けた後も油断ならない。最も厄介なのは、やはり電波干渉だ。構築前にサイトサーベイは実施したが、先ほど述べたように電波を発する物は多く、電波環境は刻一刻と変わる。急に電波環境が変化してネットワークに接続できなくなる可能性は否定できない。これに各APの故障がからむと、障害時の原因究明や対応が非常に複雑になる。こうしたことから、無線LANの障害対応の負荷は、非常に高いといわざるを得ないのだ(図1)。
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失敗しない「学校IT製品」の選び方
教育機関がIT製品を導入する際、どのような点に気を付けて製品選定を進めればよいのか。製品分野の基礎知識をおさらいしつつ、製品選びのポイントを伝授する。
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