0.5歩先の未来を作る医療IT
病院だけでなくクリニックの受付も完全自動化する日は近い?
近年、受付に自動再来受付機や自動精算機を導入している大病院は珍しくなくなりました。レセプト業務も自動化が進み、医療機関の受け付け業務はコンピュータに置き換わりつつあります。
前回「2018年度診療報酬改定における医療現場の『働き方変革』、医師の勤務体制が柔軟に」において、今後はPMS(Practice Management System:病院向け経営支援システム)など経営支援システムの普及により、効率的な人員配置を実践する診療所が出てくるのでは、と予想しました。今回はその具体例として「受け付け業務の自動化」について解説します。
受け付け業務は省力化の一途
日常生活の中で、ここ10年の間に著しく人員が減ったと感じる部門があります。それは「受付」です。例えば駅の自動券売機や銀行のATM(現金自動預け払い機)、飲食店の食券販売機などが普及して、受け付け業務は人からコンピュータへ置き変わりつつあります。
キャッシュレジスターの進化も目覚ましいものがあります。自動釣り銭機やセルフレジを導入する店舗が次々と登場し、レジ打ちという仕事はここ10年で大幅な省力化を実現しました。レジ係の店員が顧客から商品の代金を預かり、それをレジの自動釣り銭機に投入すると、釣り銭が自動で出てきます。レジの釣り銭を人間が数えて渡すという仕事そのものが消えつつあります。
医療の世界でも受付人員はどんどん少なくなる
医療の世界でも、電子カルテの導入に合わせて自動再来受付機や自動精算機を導入する病院は珍しくありません。当初、これらの機器は高額だったので、大規模病院を中心に設置が進みました。今では、機器の普及に伴って安価な製品も登場したことで、大病院だけではなく診療所でも自動再来受付機や自動精算機を見掛けるようになりました。
かつて「電子カルテを導入すると受付のスタッフは減りますか」という質問をよく受けました。それに対しては「業務は減りますが、人数自体は減りません」と答えていたのですが、今では「電子カルテと自動精算機を導入すれば、確実に人数は減ります」と答えています。
人手不足と、電子カルテによる標準化が、システム導入の追い風に
前回、わが国は少子高齢化の影響で働き方改革が必要になると述べました。この働き方改革と対で考えなくてはならないテーマが、電子カルテなど医療のIT化がもたらす「業務の標準化、自動化」です。
将来的に直面するであろう、深刻な人手不足を乗り切るためには、当たり前ですが少人数でも業務を遂行できるようにする必要があります。しかし、これは簡単に実現できる話ではありませんでした。例えばかつては、受付のスタッフを減らすと、受け付け業務も、会計業務も、レセプト請求もストップしてしまうと考えられていました。受け付け業務があまりにも複雑で、医師(経営者)にとってブラックボックスだったためです。医師や看護師が受け付け業務を代行するのは難しく、高いハードルがあると考えられていたのです。
特にレセプトコンピュータ(レセコン)を使う業務は、紙カルテの記載内容を診療報酬点数に置き換える作業であり、複雑な診療報酬の算定ルール、医師や病院ごとの独自ルールの理解が必要でした。そのため、「熟練の技が必要で、職人でないと扱えない業務」と考えられていました。
電子カルテを導入した後は、医師が電子カルテに入力した情報がそのままレセプトになるため、カルテに記載された内容をさまざまなルールに照らし合わせて理解し、診療報酬点数に置き換える作業がなくなったのです。電子カルテの導入が一般的になってくると、診療所での勤務が初めてのスタッフでも受け付け業務ができるほどになっています。
レセプトチェック基準の公開で、受け付け業務も省力化
日本政府もレセプト業務の単純化、効率化を考えています。将来的には社会保険診療報酬支払基金が使用しているレセプト審査システムのチェックルールを公開し、「レセプトチェックシステム」(請求前の段階で、医療機関でレセプトのエラーを修正する仕組み)に搭載されて、誰でも利用できるようにする計画があります(注1)。そのため、ますます受付スタッフには熟練の技を必要としない時代が到来しようとしています。患者からの問い合わせをデータベースにQ&Aとして蓄積し、そのデータベースと人工知能(AI)技術を組み合わせることで、問い合わせ対応そのものをシステムが代行する構想についても検討が進んでいます。
※注1:2017年7月4日、社会保険診療報酬支払基金プレスリリース「支払基金業務効率化・高度化計画 工程の概要」から。
ブラックボックスを透明化し、標準化するほど自動化は進む
標準化が進んだ業務は、コンピュータに置き換えられるようになります。コンピュータに置き換えることが難しい業務のほとんどは、業務自体が複雑だったり、意思決定をする経営者にも分からないほどブラックボックス化していたりする業務です。制度の単純化と業務の標準化が進めば、人からコンピュータへの業務置き換えが進めやすくなります。中でも医療機関の受付は、今後ますます自動化が進み、コンピュータに置き換わるものと予想します。
次回は、最近注目が集まっている「(自動)問診システム」の活用について解説します。
著者紹介
大西大輔(おおにし・だいすけ)MICTコンサルティング
一橋大学大学院MBAコース修了。医療コンサルティング大手に入社。2002年に医療IT機器の常設展示場「MEDiPlaza」を立ち上げ、企画運営、スタッフ指導、拠点管理などを担当。2016年10月に医療ICT専門コンサルタントとして独立し、MICTコンサルティングを設立。医療機関向けシステムの開発アドバイス、導入アドバイス、医療IT人材の育成などを行う。過去2000件を超える医療機関へのシステム導入の実績から、公的団体を中心に講演を多数実施している。現在、医療事務・クラーク専門学校の非常勤講師も務めている。
このコラムについて
医療機関のIT化は他の業界に比べて5~10年は遅れているといわれます。また、医療現場でIT製品を導入する際、スタッフから不安の声が上がるなど、多かれ少なかれ障害が発生します。なぜ、医療現場にITが浸透しないのか。その理由を探るとともに、解決策を考えていきます。
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