「意思決定は全て48時間以内にする」をルール化など
デジタル変革を進める“カルチャーハック”10のポイント
「文化はデジタルトランスフォーメーションの障害になることがある。その場合、文化を変える“カルチャーハック”を実践するのはCIOの仕事だ」。Gartnerのアナリストはそう語る。
「最高情報責任者(CIO)が人事担当役員のように、企業文化の変革において大きな役割を担う」。そんな状況を想像してみよう。遠からぬ将来、それは現実のものとなるだろう。Gartnerの最上級バイスプレジデント兼アナリスト、クリスティン・モイヤー氏は語る。
Gartnerによると、CIOは2021年までに最高人事責任者のように、文化の変革に責任を持つようになる。では、CIOはその責任をどのように果たすのだろうか。
100ページのスライドを使ってプレゼンテーションをしたり、大演説をしたりしても変革はできないと、モイヤー氏は語る。CIOのすることは長時間の会議を何度も開き、企業文化の変革に向けた壮大な計画を作ることでもない。
CIOの切り札は、“カルチャーハック”だ。それはシンプルで小さなことだが、企業文化の変革に大きな効果を発揮し、その過程でデジタル戦略を実現する。
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CIOによるデジタルトランスフォーメーションの推進
「カルチャーハックは、“ハッキング”のようにシステムの脆弱(ぜいじゃく)なポイントを見つけて、そこからシステムに不正に侵入することではない。だがそれに近いところがある。文化の脆弱なポイントを発見し、そこを改善して、その変化を定着させることがカルチャーハックだ」モイヤー氏は、2018年10月に開催されたGartner Symposium/ITxpo 2018で行った開幕基調講演の中でそう語った。
文化を変えるのは難しい。GartnerがインタビューしたCIOは、文化がデジタルビジネスの可能性を引き出す妨げになる最大の障害の1つだとの見方を示したという。
カルチャーハックは、簡単に文化を変えられるように考案されていると、モイヤー氏は説明する。CIOが慣れている、大規模で困難な長期プロジェクトとは異なり、カルチャーハックは、48時間以内に実行できるよう設計されている。また感情に働き掛け、即効性があり、目に付きやすい。モイヤー氏はこれらの特徴のおかげで、カルチャーハックは成功しやすいとしている。
10のカルチャーハック:組織変革を目指すCIOの強い味方
モイヤー氏は、Gartner Symposium/ITxpo 2018に集まったIT担当者に、10のカルチャーハックを紹介した。
1.全てのミーティングが新しいデジタル戦略をサポートするようにする
モイヤー氏はまず、あるCIOの実話を例に出して説明した。そのCIOはデジタル戦略を導入した後、スタッフがミーティングをしている会議室にランダムに足を運び、こう尋ねた。「このミーティングはわれわれの新しいデジタル戦略をどのように前進させる?」。誰も答えないと、このCIOはその場でミーティングを中止させ、会社の新しいデジタル戦略を推進するためのミーティングができるようになってから、ミーティングをするよう指示した。
「こうしたシンプルな行動が、『われわれは変わるのだ』という明確なメッセージを伝える」とモイヤー氏は説明する。そしてカルチャーハックは少ない労力でできるかもしれないが、「勇気がないと実践できない」と付け加えた。
2.失敗を歓迎する
2つ目のカルチャーハックは、ほとんどのIT担当者が聞いたことがある「失敗はチャンスだ」という考え方だ。CIOは「失敗を歓迎する」必要がある。
DirectTVのCIOを務めるマイク・ベンソン氏は、自分の個人的な失敗をチームとシェアすることで、失敗を歓迎する姿勢を示した。失敗を歓迎することは、IT部門がリスク耐性を高めるのに役立つ。どのようなデジタル戦略においても、失敗の歓迎は重要な文化変革の1つだと、モイヤー氏は説明した。
3.意思決定を速める
モイヤー氏は、意思決定の条件を変えることによるカルチャーハックとして「意思決定は全て48時間以内にする」ルールの設定を提唱した。
4.意思決定に報いる
North Carolina Department of Health and Human ServicesのCIOを務めるスティーブ・テダー氏はポイント制度を取り入れて、同氏が率いるチームのマネジャーとスタッフによる、意思決定に関する評価ルールを変更した。
このポイント制度では、チームメンバーは意思決定すると2ポイントを獲得し、それが悪い意思決定であると1ポイントを失う。それでも意思決定を行うだけで、ポイントは増えることになる。これはポイントのスコアを付けることが目的ではない。重要なのは、マネジャーに新しい考え方を持たせることだ。
このカルチャーハックの結果、テダー氏のチームのメンバーは、仕事により力を入れ、仕事をより楽しむようになっていると、モイヤー氏は語った。しかもテダー氏は、仕事時間のうち社内の問題に費やす割合が、70%から40%にまで低下したという。
5.“Let it go”ワークショップ
モイヤー氏は、小売企業のLowe'sが採用している“Let it go”(※)というワークショップを紹介した。このワークショップは従業員が、会社の目標を妨げる古い考え方や古いやり方を捨てられるようにサポートする。
※見切りをつける、忘れる、放っておく、どうでもいい、などの意。
6.難しい質問を促す
チームに対し「次回は本当に難しい質問を3つしてほしい」と促してからミーティングを終えるという手法もあると、モイヤー氏は述べた。「ご想像のように、これはミーティングが終わってから、メンバー同士で議論してもらうことに主眼がある」(モイヤー氏)
7.全てを分かっている必要はない
CIOは「自分が何でも分かっていなければならない」という考え方を捨てなければならない。それは現実的に無理なことであり、今後も無理だろう。このカルチャーハックは、CIOが成長を目指す考え方や、学習を重視した環境を醸成するのに役立つ。
8.ステータスミーティングをやめる
モイヤー氏が述べたように、一部のCIOは仕事時間の70%を、ミーティングや電子メールのチェック、返信に費やしている。ステータスミーティング(進捗《しんちょく》確認ミーティング)を全てなくし、代わりに最新の簡潔な進捗情報を共有するようにすれば、時間を浮かせることができる。
9.“イノベーターCEO”の役割を設ける
CIOは、他の担当者が行動を起こしやすいように、意思決定権限の移譲を進める必要があると、モイヤー氏は述べた。「優れたアイデアを持っている人に、そのアイデアのCEOになってもらい、その実現のプロセスを取り仕切れるようにするとよい」(モイヤー氏)
10.カルチャーハッカソンを実施する
CIOはカルチャーハッカソンを行うことで、文化変革の取り組みにより多くの人を巻き込むことができると、モイヤー氏は語った。
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