Column
ステガノグラフィ悪用対策のポイント
データを安全に保存、送信するのに役立つ「ステガノグラフィ」は、悪用する者にとっても便利なツールだ。ステガノグラフィ悪用を防ぐベストプラクティスを紹介する。
暗号化されたデータを解読するのは困難だが、検出するのは比較的簡単だ。暗号化はメッセージの意味を隠すだけであり、その存在を隠すわけではないからだ。このため、メッセージの存在を隠す技術であるステガノグラフィが、暗号化を補完するためによく使われる。ステガノグラフィは、コンピュータファイルや通信チャネル(電話回線や無線放送など)の使われていないデータを秘密情報に置き換えるという仕組みで、簡単に使える。
ステガノグラフィを使う利点と欠点
ステガノグラフィは、機密データを安全に保存できるという利点があり、システムのパスワードや鍵などを別のファイルに埋め込んで隠すことが可能だ。しかし、こうしたデータが検出されにくいことから、深刻な問題を招く恐れもある。ネットワーク監視/モニタリングシステムでは、ステガノグラフィを使ってデータが隠されたメッセージやファイルをはっきりと特定できない。したがって、誰かが機密データを盗み出すために、ステガノグラフィを用いて機密データを別のファイルに隠し、一見普通の電子メールで送信する可能性が考えられる。
では、企業はこうしたステガノグラフィの悪用を防ぐために何ができるのか。隠されたメッセージの検出に役立つツールや手法を紹介しよう。
ステガノグラフィの悪用を検出する
ステガノグラフィを使ってファイルに埋め込まれたデータを検出する方法は2つある。ハッシュを使う方法と統計的な方法だ。ハッシュを使う方法では、ソースファイルと疑わしいファイルの比較を行う。具体的には、ソースファイルに対してハッシュ関数を適用し、得られたハッシュ値が疑わしいファイルのハッシュ値と一致するかどうかをチェックする。一方、統計的な方法では、メッセージ内容のデータの理論的に予想される度数分布と、疑わしいファイルのデータの度数分布を比較する。カバーデータ(秘密データを埋め込む対象となるデータ)は、秘密データを埋め込むことで改変されるため、通常、カバーデータの一般的な特性を調べると、改変の形跡が検出でき、それによって秘密メッセージの存在を見抜くことができる。例えば、画像のヒストグラムを作成すると、分布の山がランダムにあるのが通例だ。ヒストグラムが平坦な場合や、1つの大きな山がある場合には、画像に秘密情報が含まれている可能性がある。
秘密情報の内容分析には、「Stegdetect」などのツールが利用できる。Stegdetectは、JPEG画像に秘密情報を埋め込むのに使われる幾つかのステガノグラフィ手法を検出できる。
悪用を防ぐためのベストプラクティス
秘密情報を検出するには、企業はネットワークトラフィックの監視に積極的に取り組まなければならない。それには時間がかかる上、大量のプロセッサリソースも必要だ。だが、担当者がネットワークの正常なトラフィックパターンを熟知していれば、「ネットワークを介した大きな画像のやり取りが増えている」といったような変化を簡単に見つけられる。こうした変化は、さらに踏み込んだ詳細な調査に値するかもしれない。また、ネットワークの好ましい使い方や、ネットワークで送信してよい、あるいは送信してはならないデータの種類、およびデータの保護方法を明確に規定するセキュリティポリシーを作成し、徹底するのが賢明だ。さらに、不正なプログラムを制限し、暗号技術やステガノグラフィの不正使用を禁止するとともに、メールボックスの容量制限を検討すべきだ。
そして、機密情報を扱う社員が大きなメディアファイル、特に会社のWebサイトにポストされる画像、ビデオ、オーディオファイルにアクセスすることを、認めるかどうかを判断しなければならない。問題のある社員がステガノグラフィを使ってそうしたファイルに情報を埋め込み、会社のサイトにアクセスする第三者に渡す恐れがあるからだ。ただ、その一方で、ステガノグラフィを有効に活用することを考えない手はない。例えば、ステガノグラフィの一種である電子透かしを利用して、Webで公開する自社のメディアファイルの著作権を守ることができる。また、ステガノグラフィを使えば、システムのパスワードや鍵を別のファイルに隠し、安全に保存することもできる。
本稿筆者のマイケル・コッブ氏は、データセキュリティおよび解析に関するトレーニングやサポートを提供するITコンサルティング会社、コッブウェブアプリケーションズの創業者兼マネージングディレクター。CISSP-ISSAP(公認情報システムセキュリティプロフェッショナル―情報システムセキュリティアーキテクチャプロフェッショナル)の資格を持つ。共著書として「IIS Security」があり、主要なIT出版物に多くの技術記事を寄稿している。
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