「パリティ」の見極めが要
ERPプロジェクトのコストと時間を半分に減らす方法
ERPプロジェクトを簡素化し、どこをカスタマイズすべきか判断するためのモデルを紹介する。
わたしたちCIOは、ERPプロジェクトについて多くを学んできた。そうした教訓の多くは困難な道のりの末に得たものだ。会社挙げてのプロジェクトに多大な時間を費やした後、CIOはその代償に見合うだけのメリットを見つけ出そうと躍起になる。ほぼどのようなERP(またはCRM、SFA、BPMなど)についても、後になってプロジェクト管理者に、もし違ったやり方でやるとしたらどうしていたかと尋ねた場合、答えは大抵同じだ。
「ソフトウェアをカスタマイズしない!」
この結論にもかかわらず、組織がERP(またはCRM、SFA、BPMなど)選定と導入のプロジェクトに着手するたびに、ERPソフトウェアで自社の事業特有の局面を処理できなければならないという前提が浮上する。
大規模なシステム導入を幾つか手掛け(そして膨大な数のプロジェクトのコンサルティングを担当し)た経験を基に、わたしはビジネス/ITプロジェクト簡素化のためのモデルを編み出した。このモデルは、どこまで標準の機能を受け入れ、どこをカスタマイズするのが理にかなっているかについて、合理的な判断を下す確率を高めるのが狙いだ。ERP導入の場合、このアプローチを使えばプロジェクトにかかる時間は最大で50%、予算は最大40%削減できることが分かっている。
前置きはこれくらいにして、このモデル(ニコライゼン・モデルと命名)を紹介しよう。表の縦軸は市場差別化への貢献度を、横軸は業務のミッションクリティカル度を示している。
これで業務は4種類に分類される。
ミッションクリティカル度、差別化貢献度とも「高」
これは「差別化貢献」活動といえる。市場シェアと顧客を獲得し、競争で勝つための業務だからだ。
ミッションクリティカル度「高」、差別化貢献度「低」
わたしはこれを「パリティ」と呼んでいる。業務の大部分はこのカテゴリに分類される。事業が成り立っているのは注文処理、請求書発行といったこれらプロセスのおかげだ。市場で他社と並び、それを維持するためにこうした業務は必須だが、やり方は簡素化・合理化を図る必要がある。この業務を必要以上に強化する(または強化しようとする)のは過剰投資になる。ERPプロジェクトはここでトラブルになるのが典型だ。
ミッションクリティカル度「低」、差別化貢献度「高」
ミッションクリティカルではないが、市場での差別化につながり得る活動で、わたしは「パートナー」と呼んでいる。この業務を提供してくれるパートナーと組むことが最も合理的だからだ。
ミッションクリティカル度、差別化貢献度とも「低」
これは「どうでもいい」業務。わたしも気に留めない。
ほとんどの時間は差別化貢献業務またはパリティ業務に費やしており、圧倒的に多いのはパリティだ。わたしたちは抜きん出ようとするあまり、パリティプロセスを必要以上に複雑にしてしまう傾向がある。しかしむしろ、この業務は標準的なやり方でこなし、差別化貢献業務に力を注いだ方がいい。
例を挙げよう。
ある専門小売業者がレガシーシステムの入れ替えを決めた。25年にわたるカスタマイズによって、このシステムはありとあらゆる例外を処理できるようになっていたが、製品、顧客、市場に関する疑問に答えるためのトランザクション情報は得られなかった。その結果、この業者の市場シェア(と収益)は低下していた。CEOはレガシーシステムでは再起は見込めないと判断し、システム入れ替えプロジェクトを命じた。
プロジェクトは従来通りのやり方でスタートし、提案依頼の作成に必要な新しいシステム要件を集めた。プロジェクトチームがまとめた機能条件(レガシーシステムをそのまま説明したものだった)は300ページを超えた。わたしがかかわったのはここからだ。
マネジメントチームと会ってわたしのモデルについて説明した。新システムの機能の多くはパリティのカテゴリに分類できることがはっきりした。つまり、パリティ業務遂行のための標準的なやり方より上を行く必要も、違いを出す必要もなかった。そこで300ページは破棄して最初からやり直した。
まず、現行のプロセスと、それをこなすための標準的なやり方との違いについて検討した。検討対象となっていたERPシステムはすべて、パリティプロセス処理の一般的なやり方をサポートしていたため、ソフトウェア選定の基準を、機能から総所有コスト、導入しやすさ、インテグレーションの容易さといった要素に切り替えた。実装に当たっては、業界のベストプラクティスを参考にソフトウェアを設定し、それに従ってビジネスルールを変更した上で、購買、在庫管理、一般的な台帳管理といった業務の新しいやり方について従業員の研修を行った。
一方で会社の頭脳を結集し、商品の選定といった差別化貢献業務遂行のための新しい、より良い方法を考えた。結果として、顧客、市場区分、製品分析への真に興味深い(そして大成功を収めた)アプローチが生まれた。
結果的にこの会社は市場で成長し、プロジェクトは最初予定していた時間の半分、当初予算の半分で完了した。実にシンプルでうまくいった。
現在、わたしたちはプロジェクトについて相談を持ち掛けられると、まずどれが差別化貢献業務なのかを見極めるための基準を定義する。それ以外の業務の大半はデフォルトでパリティになる。こうした意思決定のための基準を設け、全社を通じてこれに照らし合わせることの効果は絶大だ。ビジネスルールとシステムの決定にどうアプローチすればいいかがこれで分かる。「これは差別化貢献かパリティか」と問い掛け、差別化貢献と判断すれば、ライバルよりも上を行きたいと考える。パリティであれば、ベストプラクティスに従うだけだ。
ではこのモデルを使えば問題はすべて解決するのか。断じてそんなことはない。しかし、ITを業務に沿わせ、大規模・小規模のプロジェクトに関する決定の枠組みを構築することはできる。興味をお持ちの方には、このモデルの使い方、変更管理計画に与える影響、ERP以外のプロジェクトへの使用例について、さらに詳しい資料がある(これはわたしのモデルなので)。興味をお持ちの方は連絡してほしい。
本稿筆者のニール・ニコライゼン氏は米HeadwatersのCIO兼戦略計画担当副社長。
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