キーワードでひもとくバックアップ最新事情【第2回】
“D2D2Tバックアップ”はテープとディスクのいいとこ取り
テープとディスクは、バックアップの要件によってそれぞれ向き・不向きがある。そこで、それぞれの長所をうまく組み合わせて構成したバックアップ方式が「D2D2T」(Disk to Disk to Tape)だ。
バックアップシステム導入検討時のキーポイント
前回「“テープバックアップ”はもう時代遅れなのか?」では、データのバックアップを行う際に使用する代表的なメディアとしてテープとディスクの2つを取り上げ、それぞれの長所と短所を説明した。テープは低コストであること、そして古くから利用され「こなれた」技術であることから、これまでバックアップとアーカイブの分野で広く一般的に利用されてきた。一方、ディスクはテープよりパフォーマンスも信頼性も高いが、その分導入コストも高くなる。
今回は、具体的にバックアップシステムの導入を検討する際にキーとなる判断基準を幾つか取り上げ、今回のキーワードである「D2D2T」(Disk to Disk to Tape)バックアップがどのように適用できるかを整理してみたい。
データの特性
バックアップ対象のデータが大量の連続データなのか、それとも通常のファイルサーバに保管されるような非連続データなのかによって、テープとディスクの使い分けを行う。大量の連続データだけをバックアップするのであれば、テープでも問題ない。しかし、一般的に企業の社内システムではファイルデータを中心にさまざまなタイプのデータが存在するため、ディスクバックアップの方が適しているといえよう。
例えば、ファイルサーバ上にあった個人のファイルを誤って消去してしまい、そのファイルだけをリストアしたいというケースを考えてみよう。テープバックアップの場合は、そのファイルをバックアップしたテープをドライブにマウントする必要があり、またそのファイルが記録されたポジションまでテープを巻き取るなどの手間が発生してしまう。一方、ディスクの場合はそのような手間は発生せず、すぐに欲しいファイルをリストアすることができる。差分・増分・重複除外などのバックアップを頻繁に行う場合もディスクの方が手間が少なく、リストアも容易である。
データの重要度
バックアップ対象のデータが、どれだけ重要なものなのかを見直してみよう。もちろん、データごとに重要度は異なり、それぞれに適したバックアップ要件がある。
重要度が高い場合は、単にデータをバックアップするだけではなく、別途コピーを保管するなどして、障害から起こるデータの消失を防がなくてはならない。この場合、システムから一度メディアにバックアップするだけでは事足りない。また、別途バックアップ環境の信頼性を上げることも重要である。ディスクであればRAID構成、冗長コンポーネント、ミラーリングなどのテクノロジーを使用して、テープでは実現できない信頼性を確保することが可能である。
一方テープの利点は、メディアに可搬性があるため比較的容易に遠隔地にデータを保存できる点にある。ディスクのみでバックアップを行った後に、遠隔地へデータをコピーするには、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、システム構築/運用などのコストが掛かるが、その点テープなら、メディアの運搬と保管設備のコストで済む。ひとまず安価に災害対策に備えたい場合には、テープは有力な選択肢となるだろう。
そのほか、万が一問題が発生した際のデータ消失の影響度合いを考慮し、バックアップを取る頻度も検討が必要だ。ディスクを使うとバックアップ時間の短縮が期待できるので、頻度を上げるのに有効である。もちろん、バックアップの頻度を上げれば、万が一の際に失われるデータの量を少なくすることができる。
データ復旧の緊急度
重要度とは別に、障害やデータ消失の際にどれぐらい早くデータを元に戻さなければならないかを考えよう。
個人が作成した文書ファイルの中には、確かに大変重要なものもあるだろうが、もしそれらのデータが消失したとしても、バックアップさえ取ってあれば元に戻すタイミングはそれほど急を要しないことがほとんどだ。そのようなたぐいのデータであれば、テープに保存して倉庫などに保管することでも対応できる。
一方、オンラインシステムのデータは即時性が求められるので、障害発生時には緊急に復旧させる必要がある。そのような場合、ディスクバックアップはある程度高い要求に応えることができる。しかしテープバックアップの場合、データを復旧する際に複数のテープにまたがったデータをまとめなければならなかったり、場合によっては遠隔地の保管倉庫にあるテープが必要になる可能性もあるなど、ディスクと比較して復旧時間を多く必要とする。
データの保存期間
2008年4月から適用が始まった金融商品取引法(日本版SOX法)などの各種法規制や、各企業で定めた社内基準などによって、内部統制上の証跡となり得るデータを従来よりも長い期間にわたって保管する必要が出てきた。こうしたデータの保管は、障害や災害の際のリストアを前提とするバックアップとは用途が異なり、区別する意味でアーカイブと呼ばれる(アーカイブについては、次回詳しく解説する予定だ)。
ディスクはその性質上、常に稼働(ディスク装置が回転)し続けている(省電力機能を備えた一部のディスク装置を除く)。長期保存が必要になるアーカイブデータは、常に稼働し続けているディスクに保管するより、静的なメディアであるテープに保存するのに向いている。ディスクにはリストア要求の高いバックアップデータのみを保存しておくのが、運用上からも効率的である。よって、ディスクは長くとも数カ月程度のあまり長期間に及ばないデータ保管に適している(ただし中には、長期保存に最適化されたディスクシステムも存在する)。
稼働システムへの影響度
バックアップやリストアの要件が変化した場合(例えば、データが増加し続けた結果、バックアップウィンドウを短縮する必要が出てきた場合など)、現在のテープが実現できるパフォーマンスでは対応できなくなることが考えられる。テープは処理速度に限界があり、データのランダムアクセスに弱いからである。この点、ディスクであれば柔軟に対応できる
ただし、複数のテープドライブ装置を搭載した「テープライブラリ」や「テープオートメーション」であれば、ある程度テープの欠点を補うことができる。複数のテープドライブを同時に稼働させることにより、バックアップ時間を短縮することができる。また、テープの交換も自動的に行われるため、複数のテープドライブを個別に運用する場合に比べ、人的コストも削減することができる。
バックアップシステムに掛けることができる予算
バックアップシステムの構築と運用に割くことができる予算額も課題となる。
ここで重要なのは、データを消失した場合に予想される損害額を入念にシミュレーションして、それに見合う予算をバックアップシステムに割り当てることである。損害額はシステム停止時間を仮定し、それを基に算出することになるが、損害賠償請求などが発生する可能性があれば、それも考慮に入れなければならないだろう。
また、バックアップのシステムに掛ける予算はTCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)を念頭に置き、単に導入コストだけではなく、運用開始後に掛かるサポート費用、電気代、人件費、テープなど消耗品の購入費、メディア保管のための設備費用などを考慮して算出する必要がある。
いいとこ取りのバックアップ方式「D2D2T」
以上、幾つかの判断基準ごとにテープかディスクかの選択を検討してきたが、それぞれの要件をほぼ満遍なく満たすことができるのが、データをいったんディスクにバックアップし、その後テープに保存する「D2D2T」のシステムである(図1)。
まずはディスクにバックアップすることで、業務サーバにあるデータの定常的なバックアップを効率良く行い、緊急のリストア要求にも迅速に対応できるようにする。その上で、長期保存が必要なデータは、ディスクにバックアップした中から必要なものをテープに複製することで対応する。その際には、一度ディスクにバックアップしたデータからテープに複製するため、業務サーバへ直接負荷を掛けることなく、バックグラウンドで処理できる。
このような構成を取ることで、短期~中期のバックアップ要件に加えて、長期のデータ保管のニーズも適切なコストで満たすことができる。
以下に、D2D2Tによって満たすことのできるシステム要件を簡単にまとめてみた。
| D2T(Disk to Tape:テープバックアップ) | D2D(Disk to Disk:ディスクバックアップ) | D2D2T(Disk to Disk to Tape) | |
|---|---|---|---|
| データの特性 | 非連続データのバックアップ・リストアには向かない | 非連続データも効率良くバックアップ・リストアが可能 | D2Dと同様の効果がある |
| データの重要度 | データのコピーを保存することが可能 | バックアップシステムの信頼性を高めることが可能 | バックアップシステムの信頼性を高めるとともに、低コストでデータのコピーを保存することが可能 |
| 復旧の緊急度 | 復旧の効率が低い | 復旧の効率と速度が高い | D2Dと同様の効果がある |
| 保存期間 | 長期の保存に適している | 長期の保存に適さない | D2Tと同様の効果がある |
| 稼働システムへの影響度 | 稼働システムへ影響を及ぼす可能性あり | 少ない影響でバックアップ可能 | D2Dと同様の効果がある |
| システムに掛けられる予算金額 | コストを抑えて導入可能 | D2Tと比較しコストが高い | D2Dと比較し、コストを抑えてデータの二重化、災害対策が可能 |
テープからディスクへの典型的な移行形態
このように、D2D2Tバックアップはテープとディスクのお互いの長所を取り入れ、短所を補うことができるバランスの取れたバックアップシステム構成である。テープバックアップからディスクバックアップへ移行する際の、1つの模範解答ともいえよう。現在テープしか使っていない方は、次のステップとしてまずはD2D2Tの導入を検討してみてはいかがだろうか。
さらに、バックアップとアーカイブを組み合わせることで、さらに効果的なデータ保管を行うこともできる。次回は「アーカイブ」をキーワードに、バックアップとの相乗効果について解説する。
<筆者紹介>
羽鳥正明
EMCジャパン株式会社 マーケティング本部 プロダクト・マーケティング・マネジャー
同社にてバックアップ・リカバリ関連製品のプロダクト・マーケティングを担当。
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