狙われるミニノート
盗まれたノートPCを取り戻すには
最近はネットブックなどのミニノートPCを出先で使う機会も増えてきた。ここではノートPCの盗難を防ぎ、万が一盗まれた場合に備えて取っておくべき対策を紹介する。
2007年の暮れ、米ボストン郊外にあるワーチェスター工芸研究所で研究員の車から1台のノートPCが盗まれた。幸い、その研究員はノートPCとともにトラッキングソフトも購入しており、研究所と警察がこれを使ってPCを探し、所在を突き止めることができた。研究員は数週間後にPCを取り戻し、盗んだ人物は(盗んだほかのPC数台とともに)警察に捕まった。IT部門が警察と協力してノートPCを取り戻した経緯は、ノートPCを取り戻すためにソフトウェアをいかに効果的に活用できるか、そして小型電子端末の盗難を防ぐために何ができるかを示す、貴重な一例といえる。
米連邦捜査局(FBI)によると、毎年200万台のノートPCが盗難に遭っている。さらに悪いことに、戻ってきたのはそのうち2%のみ。ノートPCに保存されていた情報によっては、IT部門にとって極めて複雑な事態になりかねない。財布をなくすのとは訳が違う。その財布がトラックほどの大きさのものでない限りは。そしてそのトラックには、顧客の氏名から決済情報、CEOのクレジットカード番号に至るまであらゆる情報が積んであるのだ。
ノートPCは、そもそも最初から盗まれないのが最善だ。従って、端末がなくなるのを防ぐ措置を取っておくのが賢明だ。ノートPCの盗難を防ぐためのベストプラクティスを以下に挙げる。
1.端末がどこにあるかを常に把握しておく。パラノイア的になってもいい。盗難対策の第一歩は盗みを阻止することだ。この責任は会社とユーザーの間で共有される。もし机の上にPCが常時置いてあるのなら、鍵を掛けてつないでおくためのワイヤを会社が確保すべきだ。しかし従業員も、自分のPCを常に監視する責任を負わなければならない。
2.ノートPCの持ち主を明示する。ノートPCを見つけて返却したいと思う人物を手助けする外部装着型デバイス(通常はコンピュータの外面に張り付ける小さなプレート)も市販されている。こうしたデバイスにはID番号とフリーダイヤルの番号が表示され、見つけた人がここに電話すると、ID番号で持ち主を照会できるようになっている。
3.保存されている情報がノートPCよりも貴重な場合、Absolute Softwareの「Computrace LoJack for Laptops」のような組み込み型トラッキングデバイスを検討する。組み込みデバイスはどんなものでも構わないが、マザーボードに組み込まれ、盗んだ人間がHDDの内容を消去しても削除されないものならなおよい。リムーバブルストレージデバイスに頻繁に(毎日など)バックアップを取ることも望ましい。組み込みデバイスを使うか、外部装着型デバイスを使うかは、盗まれるのを防ぐことと、盗まれた後に取り戻すことのどちらを重視するかで決めるといい。なくしたPCとそこに保存された情報の価値が同じくらいなら、盗難を防ぐデバイスと取り戻すためのデバイスの両方を導入するのが賢明かもしれない。
4.社員が個人情報(PII)を持ち歩く場合、バイオメトリクス認証付きのリムーバブルストレージにPIIを保存する。さらに、フォルダやファイル単位よりもHDD全体を暗号化する。ダウンロードしたPIIを削除し忘れたまま持ち歩くような社員にはこれが解決策になる。
ノートPCの盗難や紛失が発生した場合、定められた手順あるいは標準的な手順に従うことが極めて重要になる。つまり、盗難に遭う前にこうした手順を定めておくということだ。盛り込んでおくべき手順は以下の通り。
(1)詳しい技術情報で捜査の手助けをする。ITのプロにとっては当然と思われることでも、捜査員にとってはそうでないかもしれない。例えば、簡単に理解できるはずの技術情報に捜索令状が出されたりする。IPアドレスといった事柄は、警察、検察、裁判所が理解できるよう詳しく説明しなければならない。
(2)盗まれるPCのほとんどは転売が目的だ。中には正規のWebサイトで販売されるものもある(これは取り消すのが非常に難しい)が、多くの場合、盗んだ側は早く手放そうとして質店に持ち込む。従って、会社の盗難防止制度について地元の質店に知らせておくとよい。盗まれた物品を突き止め、取り戻すための対策について知ってもらうのだ。これは質店の仲介業者も一番知りたがる点だ。もし自分の手元にある商品が盗品だと分かれば、それは直ちに持ち主の手に戻され、仲介業者に代金は払われない。泥棒には転売する場が必要であり、最も信頼できる転売業者が特定の商品を受け入れたがらないのであれば、その商品を盗もうとは思わないだろう。
(3)研修、ビデオ、ポスターで従業員を教育する。怪しい人物がいたら報告するよう促す。研修は、それなりの権限があって尊敬を集められる人物が担当する。研修内容だけでなく、その内容をどう伝えるかも重要だ。
(4)ノートPCが戻って来たら、何が起きて誰がやったか公表することを検討する。盗みには厳正に対処すると知らしめれば、再発防止の取り組みを後押しすることになり、その取り組みが認識されればモチベーションが保たれる。
ワーチェスター工芸研究所の場合、捜査当局が盗難の発生を直ちに知ったことが大きかった。持ち主の研究員は盗難の数日後でなく数時間後に通報した。さらに、自分のノートPCにトラッキングソフトをインストールしておくという配慮があったため、ComputraceがノートPCを追跡し、取り戻す手助けができたのだ。
本稿筆者のニール・スペルマン氏はワーチェスター工芸研究所(WPI)のネットワークセキュリティアナリストで、元WPIの警察官。理学士の学位を持ち、マサチューセッツ州警察学校を卒業、マサチューセッツ州特別捜査局の上級捜査員を20年務めた。Infragardボストン支部の理事も務める。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
7
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー