ITガバナンスとPPMの教訓
失敗から学ぶPPMの現実的なアプローチ
わたしが失敗から学んだ教訓は、IT族というのは物事を何でも複雑にし過ぎてしまいがちだが、それは良くないということだ。
わたしはもちろん、世界で最も頭のいい人間ではない。ITガバナンスモデルとプロジェクトポートフォリオ管理(PPM)に関するこれまでの教訓は、すべて失敗を通じて学んだ。
例えば初めてCIOになったとき、IT関連の意思決定についてIT部門の領域を超えたプロセスが必要だと判断した。そこでCEOを説得して、経営陣の一部で構成するIT運営委員会を招集してもらうよう頼んだ。CEOはわたしの頼みを聞いてくれ、それから半年間、それまで協力して1つのことを決定した経験のない8人を集めてITプライオリティについて意見をまとめるために、苦悩の日々を送ることになる。これでわたしが世界一頭のいい人間でないことはお分かりいただけただろう。このITガバナンスモデルが機能しておらず、今後も決して機能することはないと分かるまでに半年かかったのだ。
この件をはじめとする手ひどい失敗があるからこそ、わたしには効率的なITガバナンスとPPMについての教訓を語る資格があると思う。
まずガバナンスから始めよう。わたしが失敗から学んだ教訓として、ITガバナンスモデルは2つの側面から組み立てる必要がある。組織のガバナンスモデルと、その組織におけるITの役割だ。
出発点として、ITに関する意思決定方法と、その組織の意思決定方法とを照らし合わせる。もしその会社が中央集権的な意思決定を行っているのなら、中央集権的なITガバナンスモデルの採用を真剣に考えた方がいい。一方、意思決定が分散化されている会社の場合、分散型あるいは連携型のITガバナンスモデルを検討すべきだろう。
次に組織におけるITの役割に応じてそれを調整する。ITが戦略を実現するためのものであれば(たとえ個々のプロジェクトであっても)、ITガバナンスモデルは中央集権寄りに調整する。一方、ITが戦術を実現するためのものなら、ガバナンスを分散あるいは連衡寄りに調整する。
わたしがガバナンスで犯した最初の大失敗に話を戻そう。その会社は持ち株会社のような形で経営され、各部門が独自に決定を下していた。わたしは中央集権的なITの意志決定プロセスを押し付けようとして、その文化に反することをやっていたのだ。しかも一部の重要な戦略的プロジェクトを除けば、ITは戦術を実現するためのものだった。自分の失敗に気付いた後、わたしはITガバナンスのプロセスを修正し、組織の分散的な性質に合わせるようにした。個々の戦略的プロジェクトについては、そのプロジェクトの中で個別の役割を担う担当者で構成するプロジェクト運営委員会を組織した。
別の会社に転職したときには、ITガバナンスのこの2つの側面のことを覚えていた。その組織の意思決定プロセスは高度に中央集権化されていたため、わたしは中央集権的なITガバナンスプロセスを遂行し、非常にうまくいった。
では次に、PPMに話を移そう。長年の間、わたしはこの世で最も複雑かつエレガントなPPMプロセスを試みては、失敗していた。今だから恥をしのんで打ち明けるが、プロジェクトポートフォリオの評価と調整のために、季節要因およびボストン・レッドソックスの勝率、ニューヨーク商品取引所の原油価格に左右される6次元の組み合わせを使ったことさえある。もちろん、今言った通りの評価システムを使ったわけではないが、このシステムはあまりに複雑で、説明しようと思えば意思決定よりも時間がかかった。
このようなPPMモデルで失敗した後、わたしは違うアプローチを取り、今度はうまくいった。前述したモデルを使い、わたしは目的の次元(このプロジェクトは差別化につながるのか、それともパリティーなのか)、事業価値、リスク(不確定要素と複雑さの影響を受けるリスク)にのっとってポートフォリオを組み立て、管理している。
PPMでわたしが得た最も重要な教訓は、計算に基づいてプロジェクトをランク付けすることなどほとんど不可能だということだ。「柔軟性の向上」「商品化にかかる時間」といった要素を計算式に当てはめて数値化するのは、単純に難し過ぎる。結局のところ、戦略実現のためのプロジェクトに数字など何の価値があるだろうか。わたしは世界一頭がいい人間ではないので、その答えを見いだせずにいる。
わたしが数々の失敗から学んだ最も重要な教訓は恐らく、われわれIT族というのは物事を何でも複雑にし過ぎてしまいがちだが、それは良くないということだ。ガバナンスとPPMへの現実的なアプローチは、真のビジネスパートナーと向き合うことであり、記録やイデオロギーと向き合うことではないのだ。
本稿筆者のニール・ニコライゼン氏は米HeadwatersのCIO兼戦略プランニング担当副社長。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー